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タンチョウソウ [草花(春)]

タンチョウソウ
丹頂草 Mukdenia rossii
ユキノシタ科 タンチョウソウ属 の多年草(1属1種)
別名:イワヤツデ ・ イワヒメヤツデ
自生地:朝鮮半島から中国東北部
 
タンチョウソウ060319wb.jpg

3月中旬、紅い花芽が頭をもたげているのを発見。
タンチョウソウです! 今年も出てきてくれました。
(以下の画像は画面をクリックすると大きくなります。)
タンチョウソウ2012芽生えwb.jpg

葉が開く前にまず花径がすっくと伸びて蕾が白っぽくなります。
タンチョウソウ2012-1wb.jpg

白くなった蕾を覗くと中には紅い雄しべの葯がぎっしり。
雌しべの柱頭らしい黄色の点々も見えます。
タンチョウソウ20110327-3wb.jpg

左はヒマラヤユキノシタ。同じくユキノシタ科ながら対照的に見えます。
ヒマラヤユキノシタと1wb.jpg

先ず白い小花が咲き、次いでヤツデのような大きな葉が開きます。
このような姿が白いツル(タンチョウ)に見立てられたのでしょうか。

ヒマラヤユキノシタと3wb.jpg

上から見ると径数ミリの白い花が数十個、集散状に咲いています。
ヒマラヤユキノシタと2wb.jpg

花は純白ではなく中心が多彩に見えます。
タンチョウソウ100404wb.jpg

拡大すると花弁に大小が認められました。
外側の大きい花弁に見えたのは萼で6枚くらいあります。
内側の小さい方がほんとうの花弁で萼より多いようです。
雌しべの柱頭は2〜3個に分かれ、その周りを8本前後の雄しべが囲んでいます。
タンチョウソウ蕊wb3.jpg

紅い雄しべは未開の葯でした。
葯は開くと白い花粉が出て紫色に変わります。
この紅い葯から、ツルの中でも頭部が紅いタンチョウを連想し、タンチョウソウと命名されたのでしょうか。タンチョウの頭部の紅い部分は露出した皮膚の色だそうですから、4枚目の写真のように蕾が開いて紅い葯がみえている状態がぴったりです。
しかし、後で日本で見られるツルを調べましたところ、留鳥はタンチョウのみ、冬鳥はナベヅルとマナヅルで、白いのはタンチョウのみでした。頭の色のことは考え過ぎかもしれません。(この項一部訂正追加しました。)
タンチョウソウ蕊2wb.jpg

展開中の若い葉。
タンチョウソウ若葉wb.jpg

葉は次第に緑色になり、びっしりと繁ります。
タンチョウソウ花葉wb.jpg

5月初めには花は萼を残して褐色になり、大きな葉が重なり合って地を覆います。
タンチョウソウ葉wb.jpg

タンチョウソウは和風の趣がある花で、山野草として販売されています。
そのため最近までタンチョウソウは日本に自生する植物と思い込んでいました。
この庭ではやや日陰の所に地植えしていますが、暑さ寒さにも強く丈夫です。

和名については混乱しているようです。
一般にはタンチョウソウ、もしくはイワヤツデと呼ばれていますが、かってはイワヒメヤツデ属だったらしく、「朝日百科植物の世界」ではイワヒメヤツデとして掲載されています。
しかしDNAによる新しい植物分類表ではタンチョウソウ属タンチョウソウになっていますので、ここではタンチョウソウとしました。

古い写真を見直したところ、花の趣が異なる1枚がありました(2009.3.15.写)
タンチョウソウ090315wb.jpg
萼がより長く純白で花弁の枚数も6枚くらいで蕊の色合も静かです。
ひょっとしたら、こちらの方が原種に近く、上記の花々は園芸品種かしらとも思えます。
朝日百科植物の世界では「がく片、花弁、雄しべともに5〜6個」と記載され符合します。しかし、うちの花は花弁、雄しべが8個くらいあるのです。
撮影日が3月15日と早いので、購入したばかりの株かもしれません。
すでに花期は終わりましたが、来春、今年は葉しか出なかった株に注目してみます。
また来年はトップの全体像も撮り直しです(接写ばかりに夢中になってピンぼけしかありませんでした)。
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ヒトリシズカ [草花(春)]

ヒトリシズカ
 一人静
 センリョウ科 チャラン属の多年草。 草丈15〜30cm。
 学名: Chloranthus japonicus

3月22日、南庭にツクシの坊やのような頭が並んでいるのを見つけました。
葉のショールの間から白い糸のようなものが見えています。
あ、ヒトリシズカ!
ヒトリシズカ2012-1wb.jpg

4月5日、ヒトリシズカの11兄弟が勢揃いしました。
4枚の葉の間から白い繊細な花穂が1本づつ伸び出しています。
ヒトリシズカ2012-5wb.jpg

4月16日、満開の花を上から撮りました。
「一人静」とはまことに美しい命名ですね。
ヒトリシズカ葉4枚1wb.jpg

さて、この穂状の花序、花の構造はどうなっているのでしょう。
ヒトリシズカ2012-6wb.jpg

上の右の若い花を拡大してみました。
ヒトリシズカ2012-6wb2.jpg
もしゃもしゃしたもやしのようなものが交錯していますが、何が何やらさっぱりわかりません。
これはもう文献検索するしかありません。

調べるとヒトリシズカには花弁も萼もなく、白く長いものは雄しべの花糸でした。
成熟した花穂をやや下方から接写しました。
ヒトリシズカ雄しべ1-1wb.jpg

上半分を拡大します。
緑色の壷のようなものが雌しべ、先端の白っぽい部分が柱頭です。
雌しべの下に雄しべがあります。雄しべの3本の花糸は基部で合着しています。
葯は花糸の下部にあり、黄色い花粉が出ています。
ヒトリシズカ雄しべ4wb.jpg

葯(半葯)は3本の花糸のうち両側にだけ付き、中央の花糸には付かないのが特徴です。
下段の2つの葯はまだ花粉を出していません。
ヒトリシズカ雄しべ3@wb.jpg

4月16日、枝垂れ八重桜が散り始めた頃、北庭のヒトリシズカが満開になりました。
その脚元に桜の花びらが3片。
ヒトリシズカ裏1wb.jpg

同じ日の南庭のヒトリシズカはすでに花糸は散り、緑一色。
十字対生する2組の葉が重なって4輪生のように見えます。
ヒトリシズカ葉4枚2wb.jpg

ヒトリシズカはセンリョウ科。
センリョウ科の植物は少ないのですが、フタリシズカ(チャラン属)とセンリョウ(センリョウ属)があり、また比較できたら楽しいだろうと思います。


追加 2013.3.20.
赤紫色の若葉に包まれながら、もうめしべが見えています。
雄しべはまだ開いていません。
ヒトリシズカ芽生えwb.jpg

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春たけなわ [草花(春)]

いつもより遅かったものの今年も春の花々が咲き進んでいます。
とりあえず今年も咲いた常連の顔見せです。

初めに春を告げるのはミニ水仙テータテートとローマン・ヒアシンスのコンビ。
ローマン・ヒアシンスも小柄でミニ水仙と同じ頃咲き、黄色と青紫が引き立て合います。
共に放っておいてもどんどん殖える世話いらずの球根植物です。
ミニラッパとローマンヒアシ.jpg

テータテートとは古いフランス語で tête‐à‐tête(英語で head to head)、頭を寄せてひそひそ話をする意だとか。
ミニ水仙-080323wb.jpg

ハナニラは植えた覚えがないのにいつの間にか咲き出して常連になりました。
白い花の所々に薄紫のラインが出ることがあります。
ブルーの花を追加して植えましたが、新しい園芸種はきれい過ぎる感じで、今日の取り合わせには素朴な白花の方が向いてるようです。
ハナニラ09wb.jpg

今年は葉の育ちが悪く花も期待しなかったスハマソウ(雪割草)、気がつくとこんなに輝いて咲いていました!
スハマソウのように文字色が変わっている場合はクリックすると前の記事が出ます。)

スハマソウ2012wb.jpg

ヒトリシズカは名のごとく静か。
ヒトリシズカ2012-5wb.jpg

今年も何とかシラネアオイが咲きました!
シラネアオイ2012wb1.jpg

去年に比べて花も小さく花弁が不全。でも2年続けて咲いただけでうれしい!
シラネアオイ2012正面wb.jpg

今年のショウジョウバカマは初めから葉が紅く猩猩(ショウジョウ)色です。
陽に当たり過ぎたのでしょうね。
ショウジョウバカマ2012wb.jpg


長かった今年の冬、やっと春が来たのに雑用多くブログの更新が遅れ気味です。
その上、クリスマスローズにこだわっているうちに花達は咲き進んでしまいました。
もうクリスマスローズは後回しにして旬の花を追っかけます。

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クリスマスローズの蜜腺 [草花(春)]

蜜腺(ネクタリー)nectary
  クリスマスローズ:キンポウゲ科クリスマスローズ属Helleborus

クリスマスローズの花弁のように見えるのは萼片です。
本来の花弁は退化して蜜腺になり雄しべの周りに並んでいます。
クリスマスローズ入門の頃は蜜腺より萼片の色や形を追ったものです。
今年は「蜜腺」を見つめてみます。

初めは純白の萼片と緑色の蜜腺。
正面から見ると蜜腺の存在に気付きにくい組み合わせです。
雄しべの外側に1列10個ほどの萼片が並んでいます。
外側の雄しべが花粉を出し、次の一回りの雄しべの葯が大きい。
(画像は全て画面をクリックすると大きくなります。)
CR白1wb.jpg

この花はクリスマスローズ スノーホワイト。
雄しべはあと3本を残して脱落し、黄色い蜜腺と雌しべが残りました。
こうなると蜜腺がよくわかります。
CR萼7wb.jpg

次いで蜜腺(花弁)が散っていきます。
だんだん色が濃くなる萼片の上に、散った雄しべと蜜腺が乗っていました。
CR蜜管散るwb2.jpg

蜜腺(ネクタリー)は漏斗状、長さ5mm前後で、短い柄があります。
数は10〜20枚前後。1列に並ぶものも、二重・三重になるものもあります。
その色も様々で黄緑、緑、褐色、紫などの濃淡があり、濃いものはダークネクタリーと呼ばれます。

黄色の萼片に茶色の蜜腺が美しい(ダークネクタリー)。
CR22Y暗蜜腺wb.jpg

赤紫網状の萼片に濃紫色の蜜腺はシック。ダークネクタリーの一重です。
CRダーク蜜管wb.jpg

萼片は同じような色ですが細かいドットがあり、蜜腺は緑色で二重。
CR明蜜管wb.jpg

この丸弁ピンクの花の蜜腺は三重のようです。
CRP20703wb.jpg

マーブル模様の萼片の花には蜜腺にも筋模様が入りました。
黄色の柄がある大きな蜜腺が放射状に並んでいるのが見えます。
CR萼付根1wb2.jpg

古典的なクリスマスローズ ニゲルの白い萼片も時間と共に緑色を帯びます。
萼片は5枚。蜜腺は先端が黄色の筒状で10個前後あります。
CR管状蜜腺1wb2.jpg

蜜腺は蜜を分泌する組織です。
しかしこうして近くで見ても蜜腺から蜜が溢れ出ているようには見えません。
クリスマスローズの蜜腺でも蜜は作られているのでしょうか。
やはり確かめてみたくなります。
但しクリスマスローズは毒性のある植物ですから要注意です。

庭のクリスマスローズ数株からピンセットを用いて10個ほどの蜜腺を採取しました。
まづそのまま味見しましたが甘くはありません。
ピンセットで縦に裂いて舌に載せました。
あ! かすかに甘い! 次々試食。やはりどの花にも蜜は分泌されています。
蜜の量は少なく底の方に少し貯まっているようです。
すぐ口を漱ぎましたが、気のせいか、しばらくして口の中に少々ぴりぴりした感じがあり、さらに念入りにうがいをしました。以後異常はありません。
でも決して追試なさいませんようにご忠告します。

クリスマスローズは毒性の強い植物です。
有毒成分はヘレボリン・アコニチン・プロトアネモニンといわれます。
学名の Helleborus はギリシャ語で死に至らしめる食べ物という意味だそうです。
プロトアネモニンは皮膚や粘膜の炎症をおこします。
子どもやペットが誤って口にしないよう、くれぐれもご注意ください。
(但し 私は素手でクリスマスローズの切り花もしますがかぶれたことはありません。)

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クリスマスローズの自然交配 [草花(春)]

クリスマスローズを初めに植えてからもう10年余になります。
その頃から植えっぱなしの株に自然に子や孫ができるようになりました。
今日は、この庭のクリスマスローズ1世・2世の流れをまとめてみます。

初めの頃のクリスマスローズはガーデンハイブリッド(オリエンタリス)が殆どでしたが、花弁は先の尖った剣弁でした。
CR16Pwb.jpg

クリスマスローズの花は殆どうつむいて咲いています。
顔を見るときはそっと上向きにします。
初めに来た花達はドットがあるものが多く素朴な印象でした。
CR7-2wb.jpg

その後、ドットのない丸弁の花が園芸店に並ぶようになりました。
純白といってもクリスマスローズの白は暖かみがあります。
CRW2012wb.jpg

うちの庭の土はクリスマスローズに適しているらしく、地植えするとどんどん大きくなります。日陰でも日向でも大丈夫、今のところ病虫害もありません。誠に手間要らずです。
これ幸いと少しずつ苗を買い足していきました。
CRW10wb.jpg

淡い色合いに惹かれます。
CR32wb.jpg

時にはアクセントに濃い色の花も。これはカップ咲きです。
CR真紅丸弁1wb.jpg

黄色や緑色のかかった色も美しい。
CRYGwb.jpg

花からこぼれ落ちた種が芽生えて双葉が群生しています。
上の方の糸くず様のものは散った雄しべです。
CR発芽wb.jpg

鳥足状の葉が出ています。常緑のグランドカバーとしても重宝。
3〜4年で花が咲きます。
CR2世wb.jpg

数年経つと自然交配でいろんな花ができました。
ドットのある花は多いのですが、ドットの多少、地色の濃淡、花弁の形などによって少しずつ異なります。
CRWドットwb.jpg

花弁の辺縁に淡いシャドウが現れました。
CRピンク筋wb.jpg

これはまた霧吹き状のもようが面白い。
CR霧吹き2012@.jpg

珍しいマーブル模様。蜜腺はオレンジ色です。
CRぼかし2012wb.jpg

だんだんクリスマスローズの人気が高まり、八重咲きも登場しました。
初めは高嶺の花と思っていましたが、やはり気になって値下がりを待って購入。
今年はこんな大株になりました。
CRRW株wb.jpg

初めは淡いピンク、次第に濃くなっていきます。ドットはありません。
CRWP-1wb.jpg

一昨年、庭隅に変った花を発見しました!
買った記憶のない八重の赤です!
花弁の裏側にはドットがいっぱい。
CR46-紅八重wb.jpg

はたと思い当たりました。近くにドットの多い赤の大株があります。
これはピンクの八重とこの赤との子どもでしょう。
CR25-3.16wb.jpg

趣味が高じてクリスマスローズの人工交配で珍しい花を誕生させていらっしゃる方もあります。
開花前の雄しべを摘んで雌しべの成熟を待ち、他の花の花粉を付けるのです。
でも袋を被せたり、ラベルをつけたり、なかなかたいへんなようです。
私はこんなふうにいろいろ咲けばいいので、今のところそこまでする気はありません。
こぼれ種で咲いた子達の顔を見て回るのも結構楽しいものです。
CR白赤混2wb.jpg

3年前、庭のクリスマスローズについて5つの記事を書きました。
 1)クリスマスローズ バラーディアエ  
 2)クリスマスローズ ガーデンハイブリッド 
 3)クリスマスローズ ガーデンハイブリッド ダブル
 4)クリスマスローズ ニゲル 
 5)原種形クリスマスローズ

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キクザキリュウキンカ(大 型ヒメリュウキンカ) [草花(春)]

キクザキリュウキンカ(大型ヒメリュウキンカ)

2月10日、うちのヒメリュウキンカはやっと葉と蕾が1個見えてきたばかりです。
この日「ヒメリュウキンカ」を1株いただきまず仮植えしました。
新株はもう花が開きかけ、葉も大きく、太い茎が目立ちます。
大型0211wb.jpg

前庭に堆肥を施し植え直しましたところ、寒さにも負けずどんどん開花(3月8日)。
大型花上0308wb.jpg

気がつくともう球形の果実(痩果)が出来ていました。
これはヒメリュウキンカの特徴です。
大型0306-1wb.jpg

ヒメリュウキンカは小型のリュウキンカではありません。並べて表示します。

  リュウキンカ   キンポウゲ科 リュウキンカ属
           学名:Caltha palustris var. nipponica  
           アジア原産、水辺に自生する。
           萼はない。袋果。根は白色髭状。

  ヒメリュウキンカ キンポウゲ科 フィカリア属(旧キンポウゲ属)
           学名:Ranunculus ficaria   
           英名:Celandine(Lesser celandine)
           ヨーロッパ原産、山地に生育。変異種・園芸種が多い。
           萼がある(3枚)。痩果。 球根状根茎。
           

この新株は2年前記事にしたうちのヒメリュウキンカと比べ、花の直径は同じく約4cmですが、大柄でたくましく何か違った印象です。
別種があるのでしょうか?
大型茎3wb2.jpg

検索してみると「ヒメリュウキンカ」Ranunculus ficaria と呼ばれているものには自生種を含む大型のものと小型の園芸品種とがあることがわかりました。
大型のヒメリュウキンカには別名がいろいろあります。
  キクザキリュウキンカ、セランダイン、欧州キンポウゲ、バイカルキンポウゲ など

大型と小型というだけでは発育条件もあって分類しかねます。
他に形態的相違点はないのでしょうか。検索しても具体的な記載は見当たりません。
この1株について観察してみましょう。
葉をかきわけて見ると茎の違いに気付きました。
大型茎1wb.jpg
上の写真をよく見るとまず太い茎が出て、次の葉腋からまた葉と茎(地上茎)が伸びその先端に花を1つ咲かせています。草丈は約20cm。

株全体をみると葉腋から出る地上茎は一カ所に1〜数本。さらに次の葉腋からまた複数の地上茎が出来るものもありました。

追加
一番奥の太い茎には1節目に6〜7つの地上茎(一部枯死)が出ていました。
さらに2節目にも右側の茎には3茎、中央の茎には2つの蕾が見えています。
まことにたくましい生育ぶりです。
大型2節目wb.jpg

確認のため、茎を1本根元から切り取りました。
上・下の写真からわかるように、葉腋から4枚の葉と3本の茎が伸びています。
右の茎は途中に葉が2枚、左は1枚出ています。
大型1茎cutwb.jpg

今まで植えた園芸種のヒメリュウキンカ数株では地面から伸び出た茎に直接花が咲き、このように葉腋からまた地上茎が伸び出す株は初めてです。
スミレは無茎種と有茎種に分類されます。これに倣えば大型ヒメリュウキンカは有茎種ということになります。
大型1茎cut2wb.jpg

ついでに花の裏側に3枚の萼があることを確認しました。
これもヒメリュウキンカの特徴です。
大型花裏wb.jpg

こちらはうちの園芸種のヒメリュウキンカ
上から見ただけでは大型ヒメリュウキンカとの違いがわかりません。
ヒメリュウキンカ上wb.jpg

草丈低く、茎は全て直接地面から伸びています(一茎一花)。
ヒメリュウキンカ前wb.jpg

若い株の根元を見てみます。
太い茎はなく、地面から細い茎が出て、その多くには2枚の葉と1個の花が認められます。
ヒメリュウキンカ茎wb.jpg

白花の園芸種は花の直径3cm弱で清楚、細い茎に花が一輪づつ。
いかにも「ヒメリュウキンカ」という風情です。
園芸種はすでに100種もあるともいわれているようです。
草丈は5−20cmが多く、繁殖力が弱いのか、うちでは消えてしまったものもあります。
ヒメリュウキンカ白wb.jpg

リュウキンカと見比べてみます。
これは六甲高山植物園でミズバショウと隣接して咲いていたリュウキンカです。
花弁は5枚。花径はヒメリュウキンカより小さめで2〜3cmですが葉は大きく、草丈は30〜50cmになります。
リュウキンカwb.jpg

大型種にヒメリュウキンカの名はしっくりきませんが、当初は単にリュウキンカに似ているが草丈はそれより小さいものとして命名されたのでしょうか。

日本帰化植物写真図鑑第2巻では「キクザキリュウキンカ」として掲載され、「ヒメリュウキンカ」は小型タイプに用いることを提唱されています。

園芸種にも大型種があるようですし栄養状態による巨大化も考えられ、大型は野生種・小型は園芸種とも分けにくいと思います。
小型も花は菊咲きですからヒメリュウキンカは大小に関わらず、キクザキリュウキンカとし、小型の園芸種だけをヒメリュウキンカの愛称で呼ぶ方がわかり易いかもしれません。


追加: DNA検索
いつもコメントをいただくエフ・エム さんから貴重なコメントをいただきました。
ヒメリュウキンカのバリエーションに関してゲノムレベルでなにか違いはないかと調べていただいたのです。大変興味深いのでここに追加掲示させていただきます。
エフ・エム さんありがとうございました。

「キューガーデンのネット上のデータベース (Royal Botanical Gardens, Kew, Plant DNA C-values Database) を検索してみたところ、3系統のヒメリュウキンカのデータがありました。
 http://data.kew.org/cvalues/
仮に系統1、系統2、系統3としますと、
 系統1は染色体数16、2倍体、DNA量は1C当り9120Mbp、
 系統2 は染色体数24、3倍体、13863Mbp
 系統3 は染色体数32、4倍体、18680Mbp
とありました。
こんなことも、大きさなどのバリエーションに関係があるのではないかと思います。
また、染色体数に関しては、ミズーリ植物園のデータベースも参考になるかと思います。ちょっと検索してみましたところ、より多くの情報が得られるような気がしました。
http://www.tropicos.org/Project/IPCN

この項を書きながらDNA検索ができたら鑑別できるのではと思っていました。
いただいた資料から大型のヒメリュウキンカはやはり染色体数が異なる系統かと推察されます。
園芸種は花が大きく増殖し易い品種から、花が小さく育ちにくい品種まで、さらに花の形や色の変化もあって多種多様です。
いずれ、それぞれを染色体数で分類できるようになるのでしょうか。

追加 2012. 4. 20.
最近、近隣の数カ所のお庭にこの大型のヒメリュウキンカを見つけました。
ヒメリュウキンカ大型武田.jpg

木曽川の河川敷に自生地があるようです。
この写真からも多くの地上茎が認められます。

『追加』2023.3.8.
タイトルをキクザキリュウキンカ(大 型ヒメリュウキンカ)と改めました。
 旧タイトル  大 型ヒメリュウキンカ(キクザキリュウキンカ)
 
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5月の庭 [草花(春)]

4月から5月にかけて庭の花々が一斉に咲き競います。
毎春、花に追われて嬉しい悲鳴を上げるのですが、今年は特に忙しくてじっくり写真を撮ることができません。
「散り急がないでもう少し待って!」と叫びたくなる気持ちです。

大きく咲いたピンク色のシャクヤク
このあと雨で重くなって折れてしまい、花瓶に挿しました。

シャクヤク1wb.jpg

昨秋植えたビオラももう末期です。半年間庭を彩ってくれました。
右前のライトブルーの花はネモフィラ。
クリスマスローズの花もさすがに色褪せました。

5月の花壇1wb.jpg

代わって元気なクサソテツ。
コゴミの状態で採って食べるのもなかなか難しいものです。

クサソテツwb.jpg

木陰にひっそり咲くヒメヒオウギアヤメ。

ヒメヒオウギアヤメwb.jpg

陽光を受けて明るく大らかなジャーマンアイリス。
後は間もなく開花するニゲラ。

ジャーマンアイリスwb.jpg

庭隅に繁ったチョウジソウ。やさしくたおやかな花です。

チョウジソウ3wb.jpg

こぼれ種であっちにもこっちにも飛び入りするのはカモミール。
後の赤い花はヒューケラ。

カモミール1wb.jpg

勢揃いしたツルニチニチソウ。白い花はたくましきエリゲロン カルビンスキアヌ。

ツルニチニチソウとエリゲロwb.jpg

今年も元気なヒルザキツキミソウ
前景は2009年秋に種まきしたユウスゲ。こんなに大きくなりました。

夕菅の苗wb.jpg

ヒナゲシもこぼれ種でひょんな所に顔を出します。
これはハナミズキの樹の根元に生えたヒナゲシ。かくれんぼしているみたいです。

ヒナゲシwb.jpg

こうして並べてみるとまだ記事にしてなかった花がいろいろありますね。
またいつの日にかゆっくり見てみましょう。


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モンティア・シビリカ(←この花は何という名前でしょう?) [草花(春)]

5月8日「この花は何という名前でしょう?」という記事を書きました。
やっと花の名前がわかりましたので加筆して再掲します。

淡いピンク色の小花が日陰でどんどん咲いています。
緑色の光沢のある葉が花を引き立たせています。
昨年新たに花壇に植えた1年草がこぼれ種でふえたのです。

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でも悲しいかな、この花の名前がわからなくなりました。
それと思い込んでいた植物は似て非なるものだったのです。
検索・お尋ねなど出来ることは全てしましたがわかりません。
8日、思いきってこのままブログに掲載しました。
その翌日、全くの偶然から花の名前を記したメモが見つかりました。
それが正しく、この花でした! 思いもしなかったスベリヒユ科!
花の名前は モンティア・シビリカ。

モンティア・シビリカ
  スベリヒユ科 モンティア属 
  原産地:北米
  花期:4月〜6月くらい
  草丈:10〜40cm

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芽生えてすぐにはへら状のやや細長い葉が出てきます。
ついでロゼットの中心から葉柄の長い円っこい葉や紅い茎が放射状に伸びます。

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茎は次第に緑色になって対生の葉が開き、1〜3本の花茎が出てきます。
葉は昔の橋の擬宝珠(ギボシ)に似た形で光沢と厚みがあって花とよく調和しています。

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花の大きさは約1cm, 淡いピンク色の花弁5枚。
花弁にはピンク色の筋とサクラのような切れ込みがあります。
雄しべ5本、雌しべの柱頭は3裂します。
左右の花を見ると雄性先熟ですね。
初めに左の花のように雄しべが熟して花粉が出ます。
雄しべが退化すると右の花のように雌しべが3本に開いて他家の花粉を待つのです。

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時には花弁6枚の例外もあります。
この花は花弁が白っぽく花弁の筋模様がよく見えます。

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側面から見た咲いたばかりの花(左)と、雌しべが開き雄しべが伏した花(右)。

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雄しべは花弁に達して萎れます。

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総状花序はナズナに似ていますね。2枚の萼片が子房を包みます。

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この1枚には蕾から果実までが見られます。

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2枚の萼片の間から種子が1粒づつ覗いています。
種子に至るまでの期間が短く、旺盛な繁殖力をもつ植物です。
英名をインディアン・レタスともいい、原産地では耐寒性宿根草となり、野菜としても利用されるそうです。耐暑性がないため日本では一年草となります。
試しに葉と茎を茹でて味見しましたが、個人的にはおいしいとは思えませんでした。

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この花を植えたのは建物の北側で直射日光は当たらず、雨も届きにくい所です。
この辺りは夏の暑さ厳しく、冬の最低気温も−2~3℃になる環境ですが、この花はそれらに耐えて繁殖しています。
増え過ぎて、他の宿根草に悪影響が出るようになるかもしれません。
けれども日陰にも強く手間要らずのこの花はこれからの園芸に有望な品種と言えそうです。

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後 記
初めにお読みいただいた方には一緒に悩ませてしまったかもしれません。
どうぞお許し下さい。
やっとすっきりしてご報告できました。

今後は暑さや日照にどこまで耐えられるか、庭のあちこちで試してみようと思います。
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シラネアオイ [草花(春)]

4月6日。
ヤエザクラの下にこぼれ種で咲き始めたムラサキハナナ、その中に大きな淡紫色の花を見つけました。
えっ? まさか、あの花?
思わず近寄って見ると................まさしくシラネアオイです!!!

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昨年通販でニリンソウの苗を頼んだとき憧れのシラネアオイを見つけました。愛知県の酷暑には耐えられないのではと思いつつも一度はも試したくて2株注文してしまいました。
これを北側の日陰の庭と、南側の植え込みの陰とに植えました。
北側のは3月下旬芽が出て小さな不完全な花が咲きました。けれども南側には芽も見当たらず枯れてしまったと思い込んでいたのです。


シラネアオイ(白根葵)
 学名:Glaucidium palmatum)
 キンポウゲ科(一時はシラネアオイ科)シラネアオイ属の多年草。
 1属1種の日本固有種。
 日光の白根山に多く、タチアオイの花に似ていることから命名されたそうです。

直径7x8cmもある青みがかった淡桃色の花です。

シラネアオイ12wb.jpg

翌日、すぐ雨に濡れてしまいました。
でも花弁のように見えるのは4枚の萼片ですから雨にも耐えそうです。

2011雨wb1.jpg

真ん中に多数の雄しべと2個の雌しべがあります。

20110409wb.jpg

草高45cm(一般には20~60cm)。

20110407wb2.jpg

葉は3枚、一番下の葉は特に大きく20cmほど、2枚目はやや小型で共に掌状、長い柄があります。3枚目の葉は切れ込みがなく円みを帯びて小さく、柄がありません。
花はそれから6日間美しさを保ちました。

20110410-3wb.jpg

一方、日陰の庭では3月20日、芽が出ていたことに気付きました。

シラネアオイ芽1wb.jpg

3月24日幼い葉に包まれた蕾を発見。根元にあるボケボケは二つ目の芽。

シラネアオイ1wb.jpg

葉は一般には3枚ですが、二つ目の茎からは4枚の葉が出ました。
南側に比べて日陰の庭の株は全体に小さく、草高25cmほど。

20110410葉4wb.jpg

咲き始めはベル状。

シラネアオイ葉裏wb2.jpg

4月13日。2花目も開花。

20110413-裏wb.jpg

参考に2009.4.15 六甲高山植物園で撮ったシラネアオイを2枚添えておきます。

シラネアオイ六甲1wb.jpg

この日初めて見たシラネアオイに感激したものです。

シラネアオイ六甲2wb.jpg


東北大震災後の庭に咲いたシラネアオイは希望の灯のように見えました。

昨年、自宅北側に日陰のボーダー花壇を新設、ここに植える植物を選ぶとき、冷涼な高地の花と思っていたシラネアオイもここならばどうかという思いがよぎり衝動買いしてしまいました。
比較のため1株は南側の桜や椿の下に植えたのですが、これがこのように大きな花を咲かせてくれるとは思いもしませんでしたから、感激もひとしおだったのでしょう。

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ふきのとうの雄花 [草花(春)]

フキ(ふきのとう)
 キク科   Petasites japonicus

ふきのとうは早春の楽しみ、庭に出ると1つ見つけた、3つになってる、あっ、ここにもと毎日数えるうちに今年は11個にまでなりました。

初めの1つは木の株の間際から。しばらくするとその右側にももう1つ小さな頭。

フキノトウ芽wb.jpg

まわりの苞が開いて花蕾が現れました。

フキノトウ2wb.jpg

ふきのとうはキク科植物フキの花ですから、キク科の花の特徴が認められます。
1つのふきのとうは多数の頭花の集まりです。
それぞれの頭花はクリーム色の蕾の集合体、周辺から開花して小さな白い花が現れます。

フキノトウ110307wb.jpg

次々と小花が開き、白くふわふわした和菓子のよう。

フキノトウ10wb.jpg

一つ一つの小花は星形をしています。

フキノトウ10-3wb.jpg

中央の小さい頭花を拡大します。周りの緑色のところが総苞。
1:小花の真ん中から雌しべの柱頭が覗いています。
  周りにある褐色の部分は合着した雄しべの葯。
2:柱頭が伸びるにつれて葯から出た花粉が付着します。
3:花粉に覆われた柱頭が伸び出たところ。

フキノトウ10-2L.jpg

めしべの花柱が伸びて柱頭がふくらんだ棍棒状になります。
花弁が5枚あるように見えますが、正しくは花冠が5裂した筒状花です。
この花には他のキク科の花に見られる舌状花は見当たりません。
   
雄しべ3wbL.jpg

フキは雌雄異株、うちの庭のフキは雄株、ふきのとうは11個とも雄花ということになります。
ふつう、雌しべと花粉を出す雄しべが揃っている花は両性花といわれます。
しかし、これらの花は形態的には両性花なのですが種子が出来ないため、機能的には雄花とされます。
雌株の雌花は細い雌しべが糸のように突き出し、受精して冠毛のついた痩果をつくり風に飛ぶそうです。
うちのフキノトウの花粉は白色ですが、ネット検索では黄色の花粉を時々見ました。

雄しべ白2wb2.jpg

また昨年のなかなかさんのブログ で「白い花粉のフキ」の記事になったフキの真っ白い花粉は不稔性かもしれないと考えられました。
「植物の世界」*には花粉の色は乳黄色か黄色と書かれています。
うちの花粉の色は画像では真っ白に見えますが、肉眼では花冠の色とほぼ同じ乳白色というかんじです。こうなるとやはり顕微鏡で見たくなります。
鏡検すると金平糖のようなトゲのある球形の花粉が確認されました。多少の大小不同はありますが、不稔性というほどではなさそうです。

花粉10wb.jpg

水を1滴落としました。

花粉6wb.jpg

拡大画像。
花粉3wb.jpg

フキの 雄株・雌株についてはなかなかさんのHP“花*花・flora”のフキ(ふきのとう)に詳しく書かれています。
うちの庭のフキは雄株で花には乳白色の花粉が付いています。
雄株には黄色い花粉を出すものと白い花粉を出すものがあるようです。
さらに白い花粉を出す雄花にも普通の花粉を出すもの、不稔性らしい花粉を出すもの、さらに花粉を出さないものがあるように思いました。但し、これは素人の私の推測にすぎません。

   *藤下典之:朝日百科 植物の世界, 朝日新聞社 1:162~164,1997
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