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クリスマスローズの蜜腺 [草花(春)]

蜜腺(ネクタリー)nectary
  クリスマスローズ:キンポウゲ科クリスマスローズ属Helleborus

クリスマスローズの花弁のように見えるのは萼片です。
本来の花弁は退化して蜜腺になり雄しべの周りに並んでいます。
クリスマスローズ入門の頃は蜜腺より萼片の色や形を追ったものです。
今年は「蜜腺」を見つめてみます。

初めは純白の萼片と緑色の蜜腺。
正面から見ると蜜腺の存在に気付きにくい組み合わせです。
雄しべの外側に1列10個ほどの萼片が並んでいます。
外側の雄しべが花粉を出し、次の一回りの雄しべの葯が大きい。
(画像は全て画面をクリックすると大きくなります。)
CR白1wb.jpg

この花はクリスマスローズ スノーホワイト。
雄しべはあと3本を残して脱落し、黄色い蜜腺と雌しべが残りました。
こうなると蜜腺がよくわかります。
CR萼7wb.jpg

次いで蜜腺(花弁)が散っていきます。
だんだん色が濃くなる萼片の上に、散った雄しべと蜜腺が乗っていました。
CR蜜管散るwb2.jpg

蜜腺(ネクタリー)は漏斗状、長さ5mm前後で、短い柄があります。
数は10〜20枚前後。1列に並ぶものも、二重・三重になるものもあります。
その色も様々で黄緑、緑、褐色、紫などの濃淡があり、濃いものはダークネクタリーと呼ばれます。

黄色の萼片に茶色の蜜腺が美しい(ダークネクタリー)。
CR22Y暗蜜腺wb.jpg

赤紫網状の萼片に濃紫色の蜜腺はシック。ダークネクタリーの一重です。
CRダーク蜜管wb.jpg

萼片は同じような色ですが細かいドットがあり、蜜腺は緑色で二重。
CR明蜜管wb.jpg

この丸弁ピンクの花の蜜腺は三重のようです。
CRP20703wb.jpg

マーブル模様の萼片の花には蜜腺にも筋模様が入りました。
黄色の柄がある大きな蜜腺が放射状に並んでいるのが見えます。
CR萼付根1wb2.jpg

古典的なクリスマスローズ ニゲルの白い萼片も時間と共に緑色を帯びます。
萼片は5枚。蜜腺は先端が黄色の筒状で10個前後あります。
CR管状蜜腺1wb2.jpg

蜜腺は蜜を分泌する組織です。
しかしこうして近くで見ても蜜腺から蜜が溢れ出ているようには見えません。
クリスマスローズの蜜腺でも蜜は作られているのでしょうか。
やはり確かめてみたくなります。
但しクリスマスローズは毒性のある植物ですから要注意です。

庭のクリスマスローズ数株からピンセットを用いて10個ほどの蜜腺を採取しました。
まづそのまま味見しましたが甘くはありません。
ピンセットで縦に裂いて舌に載せました。
あ! かすかに甘い! 次々試食。やはりどの花にも蜜は分泌されています。
蜜の量は少なく底の方に少し貯まっているようです。
すぐ口を漱ぎましたが、気のせいか、しばらくして口の中に少々ぴりぴりした感じがあり、さらに念入りにうがいをしました。以後異常はありません。
でも決して追試なさいませんようにご忠告します。

クリスマスローズは毒性の強い植物です。
有毒成分はヘレボリン・アコニチン・プロトアネモニンといわれます。
学名の Helleborus はギリシャ語で死に至らしめる食べ物という意味だそうです。
プロトアネモニンは皮膚や粘膜の炎症をおこします。
子どもやペットが誤って口にしないよう、くれぐれもご注意ください。
(但し 私は素手でクリスマスローズの切り花もしますがかぶれたことはありません。)

コメント(10) 

コメント 10

703

クリスマスローズを子どもが口にしないよう、注意しなくてはいけませんね。
有毒だと、しっかり頭に入れておきます。

これまでクリスマスローズを見ても、ガクの色や模様だけしか見ていませんでした。その違いだけでなく、これからは蜜腺とガクとの組み合わせにも注目ですね。なるほどと思いながら読ませていただきました。
夕菅さんのブログはやっぱり上級編! 勉強になります!!

by 703 (2012-04-08 21:41) 

夕菅

703さん
ネクタリーの和約は蜜腺か蜜管か、素人のブログはそんなところから始まるので手間取ります(笑)。
トリカブトばかりではなくキンポウゲ科の植物は有毒種が多いですね。
でも私はクリスマスローズにかぶれる体質ではなくて幸いです。
もう少し続きがあるのですが、長くなるのでここで切りました。
ですからまた次もクリスマスローズです。
by 夕菅 (2012-04-08 23:49) 

多摩NTの住人

こんにちは。
クリスマスローズはキンポウゲ科でしたね。
花弁ではなく萼片だと言われてみて、「そうだった。」と改めて納得しました。
花の構造が詳しいご説明で良くわかりました。
by 多摩NTの住人 (2012-04-09 08:31) 

とんとん

花期の長い丈夫なクリスマスローズですから、切り花にすると良いかもしれませんね。
今までその発想が浮かびませんでした。(^^ゞ
毒性があるというのに舐めてみたり、体を張った観察ですね。

野草なら小さくて見えにくいところこの花は大きいので、キンポゲ科の萼や蕊、実の特徴が一番はっきり見られるので観察にはぴったりですね。
初めて見たときは一体どうなっているのか、ほんとに不思議でした。
筒状の蜜腺が「一体これなあに?」と、一番不思議でした。(゜.゜)

by とんとん (2012-04-09 12:40) 

夕菅

多摩NTの住人 さん コメントありがとうございました。
クリスマスローズの八重など見ると、とてもこれが萼片だなぞと思えません。
でも花弁だとすぐ散ってしまうのに萼片はずーっと長く保てるから、寒い時期に少ない虫を呼ぶために役立つでしょうね。
by 夕菅 (2012-04-09 12:50) 

夕菅

とんとん さん、クリスマスローズは根に強い毒性があるようですが、蜜にはないだろうと思って試してみました。
今までにもちょこちょこ味見しましたが、毒性ありはやはりちょっと緊張しますね。
クリスマスローズの切り花は雰囲気があって好きですが、蜜腺や雄しべがある間は水揚げが悪く、茎を切り直しては保たせています。
萼だけになってからですととても長持ちします。
by 夕菅 (2012-04-09 13:10) 

エフ・エム

クリスマスローズの花弁は貧弱な花弁にすぎないと思っていたのですが、蜜腺の役割を果たしていたのですね。萼片が通常の花の花弁の役割を持つなら、花弁の役割を変えるのはきわめて合理的ですね。進化は合理的で、その結果は美しいものが作られる。
写真、説明、感嘆しつつ拝読しました。
by エフ・エム (2012-04-09 17:47) 

夕菅

エフ・エム さん コメントありがとうございました。
クリスマスローズとのお付き合いもだいぶ長くなってきましたが、いざ書こうとすると次々と疑問が出てきました。
それに比べ、生物の進化はすばらしいですね。
「進化は合理的で、その結果は美しいものが作られる。」......感無量です!!!
by 夕菅 (2012-04-09 22:00) 

花咲かばあさん

クリスマスロ-ズはそうでしたキンポウゲ科でした。
食卓のコップに生けたりして楽しんでいました。気を付けないといけませんね。
蜜管の部分が花ですか。美しい色彩で昆虫を呼んだり、甘い味や香りで呼び寄せたり植物によっていろいろ効率を考えながらどんどん進化していくんですね。
花に見える部分が萼片のため、長い間鑑賞できるのはうれしいです。
もういちどゆっくり顔をのぞいてみます。

by 花咲かばあさん (2012-04-10 15:41) 

夕菅

花咲かおばさん こんばんは。
クリスマスロ-ズもずいぶん普及してきましたが、ネット検索ではヒトの被害は見当たらず、園芸上接触するくらいではかぶれたりしないのかもしれません。
庭のクリスマスロ-ズはもう雌しべがふくらんできています。
昆虫が少ない季節ですが、ミツバチやハナアブの姿を見ることがあります。きれいな萼の色に誘われて来るのでしょうね。
by 夕菅 (2012-04-11 00:10) 

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