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クチナシ [花木(夏)]

クチナシ 梔子
 アカネ科 クチナシ属の常緑低木
 学名:Gardenia jasminoides 
 自生地:静岡県以西、四国、九州、南西諸島。中国、台湾、インドシナ半島等
 花期:6〜7月

2014年12月18日、初雪を背景にクチナシの赤い実が浮かび上がりました。
サクラの木とカイズカイブキの間に自生していて普段は目立たなかったのです。
クチナシ果実2wb2.jpg

クチナシは昨年記事にしようと思ったものの未完でした。
冬の間に画像を整理してまとめてみます。
クチナシ雪-3wb.jpg

2013年12月19日、果実はまだ赤く輝き、葉はつややかな緑色でした。
果実は楕円体で6つの稜翼があり,先端部で萼片に連なっています。
クチナシ果実1wb.jpg

2014年2月13日、幾度か霜や雪に当たって実も葉もくすんだ色調に変わっています。
萼片も枯れ色ながらまだ残っていました。
クチナシ20140213wb.jpg

クチナシの果実は蒴果のように見えますが、開く口がないので「口無し」と呼ばれるようになったそうです。
完熟して柔らかくなっていた果実をひとつ採取しました。
クチナシ完熟果実wb.jpg

実を開こうとしましたが、確かに口はなくナイフを当てました。
液果ですが果汁はケチャップ状になり、種子に絡まっています。
クチナシ果実割面wb.jpg

この果実にはカロチノイドの一種・クロシンが含まれ、栗・さつまいも・たくあんなどを黄色に染める着色剤や、草木染めの染料として用いられます。
どんな色が出るか、このまま水に漬けました。
果肉はアカネ科らしく茜色に見えていましたが、液はたちまち、濃い黄色に染まりました。
クチナシ水溶液wb.jpg

種子は朱赤色で長さ約4mm。
この果実からは60個ほどの種子が出てきました。
クチナシ種子1wb.jpg

表面には細かい凹凸があり顆粒状に見えます。
乾燥させた果実は「山杷子(さんしし)」という生薬として漢方薬にも利用されます。
クチナシ種子2wb.jpg

さて冒頭の昨年度の果実、この画像だけでも9個は数えられますが、1月12日見に行くと小さい果実が2個しか残っていませんでした。
たぶんヒヨドリが食べてしまったのでしょう。
その一つを採りました。
小さな果実に入っていた種子は12個でした。
クチナシ果実2wb.jpg

遡ってクチナシの花を見てみます。
これは2014年6月11日の日当たりの良い場所の花です。
クチナシ一重2014全wb.jpg

8年前まだ小さかった時上から写した画像です。
花の直径は約6cm、花弁が6枚あるように見えますが、合弁花で筒状の花弁が6裂して開いています。
クチナシ1wb.jpg

花には強い香りがあります。
学名の種小名「 jasminoides 」は「ジャスミンのような」と言う意味です。
花弁は開花直後は純白ですが次第にクリーム色に変わります。
クチナシ20140611-1wb.jpg

中央に大きな棍棒状の雌しべが突出し、周りに6枚の雄しべが開いています。
しかし雄しべは力なく花弁の間に拡がってまるでヒトデのように見えます。
クチナシ花2014-2wb2.jpg

開花直後の花を探しました。
雌しべの周りに花粉がいくらか残っているものの、雄しべは既に花粉を放出した後です。
クチナシ2006-2wb2.jpg

この画像をよく見ると中央の雌しべに黄色の筋が見えます((画面をクリックすると大きくなります)。
蕾の時に棍棒状の雌しべを取り囲んでいた葯が熟し、花粉がそのままスタンプのように付着していたのです。
(追記:この棍棒状の部分を花柱とすべきか、柱頭とすべきか悩んでいます。花柱としたら柱頭はどこか不明です。)
スタンプ方式は昨年記事にしたダンドクやカンナの花と同じですね。
このことをもっと早く知っていたら蕾を開いた写真を撮ったのに残念です。
クチナシ20140611-2wb2.jpg

クチナシにはヤエクチナシもあり、最近園芸店で販売されているものはその園芸品種です。
花数も多く、花は大型ですが、矮小種もあります。
八重クチナシ2014-1wb2.jpg

光沢のある長楕円形の葉は対生で緑濃く花を引き立たせます。
ヤエクチナシ2012葉wb.jpg

香り高いバラのような花はハッとするような美しさです。
しかし一般の八重の品種と同じく雄しべが花弁に変化したため、ヤエクチナシには果実ができません。
クチナシ2012-2wb.jpg

クチナシはオオスカシバの食草です。
この庭に来るオオスカシバはこのヤエクチナシが好みらしく、気をつけていないとあっという間に蕾も葉も食べられてしまいます。
クチナシの花粉のつき方やオオスカシバの被害などまた夏季に追記したいと思います。
コメント(22) 

コメント 22

panda

夕菅さん、こんばんは
クチナシも二次的花粉表出なのですね、キキョウ科の花もそんなのが多くてツルニンジンで気がついたのですが、他にもそんな例があるようです。なぜ?とずいぶん考えました。おしべにやる気がないのか?^m^

クチナシの種子はきれいな色ですね。
by panda (2015-01-15 01:50) 

多摩NTの住人

こんにちは。
しっかり勉強させてもらいました。以前私も果実を割ってみて、手が赤く染まったことを覚えています。ヤエクチナシは果実のような形だけはできますね。
by 多摩NTの住人 (2015-01-15 07:31) 

とんちゃん

クチナシの実には随分お世話になっています~
いつでも使えるように在庫を切らさないように!!!
気を付けていてもつい手が赤くなります
使うときにはお茶袋に入れてその中でつぶすようにしていますが・・・
種も赤くてきれいなんですね
クチナシってつぼみのうちに雄しべは役目を終えているの?
雄しべがヒトデのように広がっているところ!それを見てみたくなりました。
by とんちゃん (2015-01-15 08:07) 

夕菅

pandaさん コメントありがとうございました。
本当に二次的花粉表出なんてややこしいことをどうしてするのでしょうね?
私は2010年にホタルブクロの受粉を記事にした時、元気な雄しべが見えなくて悩みました。
でもホタルブクロでは花柱に花粉がスタンプされてから柱頭が現れ納得できました。
このクチナシでは、花柱と柱頭とがまだ区別できません(追記しました)。
専門家の記載にも棍棒状の部分を花柱と書いてあるものと柱頭としてあるものがありますので、私にわからなくても当然ですね。

by 夕菅 (2015-01-15 10:08) 

夕菅

多摩NTの住人 さん コメントありがとうございました。
ほんとうに関東には一重のクチナシは自生しないのでしょうか?
今度ヤエクチナシの写真を整理したら、雌しべ雄しべがあるものが1枚ありました。
果実も作るのですね。種子は不稔なのでしょうか。
今年はその辺りももう一度見てみます。
by 夕菅 (2015-01-15 10:29) 

夕菅

とんちゃん コメントありがとうございました。
クチナシの果実をお料理に活用されてるのですね!
栗きんとんや栗の甘露煮、お正月に晴れ舞台だったことでしょう!
自生は静岡以南とありますが、小石川植物園でまた花を見てください。
12月の小石川植物園の果実、いただきたかったでしょうね!
うちではヒヨドリが狙っていますのですぐ消えてしまいます。

by 夕菅 (2015-01-15 10:34) 

花咲かばあば

夏は香りで呼び止められ、秋は艶めく紅色で。 うちの庭にも小鳥のプレゼントでしょううか二株が花を付け実もつけてくれます。
4ミリ大もの種子が60個も、、、びっくりしました。まだ一つ二つ木に残っています。早速見てみます。
葉も実も花も、どの季節もうれしい植物です。料理にもよく使います。
ヤエクチナシも一株あって、存在感のある真っ白な花は素晴らしく、咲いたら洗面所に飾ります。部屋にはちょっと香りがきつすぎます。紅くはなりませんが、緑色した果実のような形はできますね。
そうですね、毎年、オオスジアゲハの幼虫ですか、これに葉を
食べられてしまいます。大きなふんで気が付きますが、よくもマー、葉の裏に上手に隠れて、、、。ユニークな顔を見るとかわいそうですが、ごめんなさい。
by 花咲かばあば (2015-01-15 19:41) 

703

初雪バックでクチナシの朱が映えていますね。
たくさん実がなるのに、これも鳥が食べるんですか!
うちにも昔からのクチナシの木が、あるにはあるのですが、
花は見てもこんな綺麗な実は記憶がありません。
オオスカシバの幼虫も見たことがない・・・・関心を払ってなかっただけかもしれません。
クチナシについて知らないことばかりでした。


by 703 (2015-01-15 22:02) 

夕菅

花咲かばあば さん コメントありがとうございました。
やはり小鳥のプレゼントが育っているのですね。
クチナシはよその庭に生えても抜かれなくて幸せです。
種子は扁平ですから意外に多く入っていて驚きました。
私はまだヤエクチナシを活けたことがありませんが、室内ではこの香りはきつすぎるかもしれませんね。
やはり玄関や洗面所向きでしょうか。
ヤエクチナシの方が葉が柔らかく美味しいのか、うちでは毎年オオスカシバの繁殖所になってしまいます。
ほんと、「ごめんなさい」ですね!

by 夕菅 (2015-01-15 23:47) 

夕菅

703さん コメントありがとうございました。
お庭のクチナシは一重でしょうか? 八重でしょうか?
一重でしたら実ができるように思いますが、オオスカシバの成虫もいないでしょうか?
幼虫は蕾が大好きで食べてしまいますし、葉と同色なので見つかりにくいことがあります。
私もいつも記事にしようとすると知らないことが出てきて難航します。
by 夕菅 (2015-01-15 23:57) 

ヒカルゲンジ

二次的花粉表出、以前ホタルブクロで知りましたが(石川の植物など)
クチナシモそうなのですね。我が家のクチナシは最近剪定の間違いか
あまり花をつけなくなってしまいました。それにともないオオスカシバの
成虫も見なくなりました。(幼虫を徹底的に駆除してしまったせいも?)
いなくなるとなんだかさみしいです。

by ヒカルゲンジ (2015-01-17 19:42) 

夕菅

ヒカルゲンジさん お久しぶりです。コメントありがとうございました。
「二次的花粉表出」という言葉があまり専門的すぎるように思えて避けましたが、私も「ホタルブクロの受粉」の記事で福原先生の植物形態学や本多先生の石川の植物を引用させていただきました。
http://yuusugenoniwa.blog.so-net.ne.jp/2010-07-18
クチナシも二次的花粉表出ですが、ホタルブクロのように柱頭がはっきりせず、もやもやしています。
オオスカシバの成虫は好きですし、クチナシの花も咲かせたいし、幼虫の出現は悩ましいパニックです。
昨年はヤエクチナシについた幼虫を自生の一重のクチナシの所へ放ってきました。

by 夕菅 (2015-01-18 00:06) 

エフ・エム

クチナシの実は不思議なかたちですね。でも、木についているときは、美しく葉の緑と調和しています。やはり自然が造り出した芸術品です。
数年前、わが家の庭にもクチナシがあり、花時には甘い香りをただよわせていましたが、オオスカシバにやられて枯死してしまいました。やはり、虫の方を可愛がってはいけなかったのです。でも、オオオスカシバはよく見かけますが、憎む気にはなれません。
by エフ・エム (2015-01-18 19:43) 

夕菅

エフ・エムさん コメントありがとうございました。
植物の花や実と葉との色彩の調和の素晴らしさには感嘆しますね。
クチナシも然り、赤い果実は真冬の花のようです。
オオスカシバの幼虫は成虫に比べて大型で大食漢ですから被害甚大です。クチナシが枯死してしまったのですね。
私もオオスカシバは好きな昆虫ですからヤエクチナシについたたくさんの幼虫を捕えたものの悩み、庭隅のクチナシの古株の方に島流ししたことがあります。
by 夕菅 (2015-01-18 22:00) 

ヒカルゲンジ

ホタルブクロの記事読ませていただきました。すごい観察力ですね!
以前読んだ『植物の生き残り作戦』井上健編 平凡社 に以下のような面白い記述がありました。
「本州~伊豆諸島のホタルブクロ(シマホタルブクロ)の外交配率は、本州・伊豆大島が100%近く(弱い自家和合性のあるものも少数ある)、北伊豆諸島が60%程度、南伊豆諸島が20%程度。」
「利島以南のシマホタルブクロは他家受精に失敗すると柱頭が強く外側に湾曲し花柱の集粉毛にに残った花粉と接触し自家受粉を行い、種子形成に至る。」
本州のホタルブクロも自家受粉することもありそうですね。夕菅さんのお庭での観察を期待しています!
by ヒカルゲンジ (2015-01-20 18:39) 

リンちゃんママ

クチナシの実も花も今まで意識して見たことが無く初雪と赤い実も緑の葉っぱに真っ白な花もとても綺麗です。クチナシの名前の由来も面白いです。赤い果実は生薬なんですね。また一つ興味を持ちました。
by リンちゃんママ (2015-01-20 21:30) 

夕菅

ヒカルゲンジさん 再度のコメントありがとうございました。
ホタルブクロの外交配率についてこんなご本があるのですね。
私のホタルブクロも自家受粉についての観察はごく少数の観察ですが、まずは矛盾していないようでほっとしました。
またいろいろ教えてください。
by 夕菅 (2015-01-20 23:45) 

夕菅

リンちゃんママ さん コメントありがとうございました。
果実は山梔子(さんしし)と呼ばれ、日本薬局方にも収録された生薬の一つで、黄連解毒湯、竜胆瀉肝湯、温清飲、五淋散などの漢方方剤に使われるそうです。
私もブログに書くために調べてわかったことです。
by 夕菅 (2015-01-20 23:59) 

花咲かばあば

私も残っていた実の口を開けて、種を見てみました。
拡大鏡で見てもあの細かい凸凹までは見られません。数えてみました。
101個もの種が入っていました。びっくりです。これを蒔いてもだめでしょうか、、、?  冬のひと時、おかげで楽しみました。
by 花咲かばあば (2015-01-21 10:44) 

夕菅

花咲かばあばさん確認ありがとうございました。
101個も入っていたのですね。
種子の数は他の方のブログで206個というのもあって気になっていました。
梅の木の下のクチナシはまだヒヨドリに食べられてなくてたくさん残っていましたから、昼休みに私も再確認しました。
一番大きそうなのを採って開けたら104個。
10個くらいから200個以上まで様々のようですね。
これを撒いたら生えると思うんですが、試したことはありません。
by 夕菅 (2015-01-21 23:03) 

とんとん

そういうわけで、「口無し」だったのですね。
中の様子も初見。
種粒の表面には凹凸があるものが多いですね。
小さいのに綺麗に並んでいて、丁寧な扱いに感嘆します。
by とんとん (2015-01-23 22:17) 

夕菅

とんとんさん  コメントありがとうございました。
そうなんです。萼片の真ん中や稜翼のところから開けそうに見えるのですが、全く「口無し」でした。
クチナシは鳥のプレゼントで自生し易く、毎年見ていたのに今思うと何も見てなかったことになります。
こういうものは他にもいろいろありそうですね。
by 夕菅 (2015-01-24 16:41)
by 夕菅 (2020-07-07 03:06) 

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