SSブログ

シナノアキギリ? サクキバナアキギリ? [草花(秋)]

2年前、園芸店で「キバナアキギリ」のラベルがついた苗を購入し半日陰に植えました。
キバナアキギリ(黄花秋桐 Salvia nipponica )は シソ科アキギリ属の多年草です。

キバナアキギリ1wb.jpg

たちまち驚くほど勢い良く繁殖、タイワンホトトギスにも負けぬほどです。
草丈は40〜50cm。
ただし、倒れている茎を引き上げると80〜90cmになるものもありました。
倒れた茎から根が出て繁殖しています。
キバナアキギリ3wb.jpg

花は上下に裂けた唇形、上唇からは黄色い雌しべが飛び出しています。
ネット画像で見るキバナアキギリの雌しべの先端は薄紫色でしたがこれは2裂した柱頭まで黄色です。花の大きさは3cm弱。
キバナアキギリ5wb2.jpg

花冠は5枚の花弁が筒状にくっついた合弁花冠。
中央に二つづつ見えるのは仮雄しべ。
仮雄しべもキバナアキギリは紫色のはずですが、これはクリーム色です。
キバナアキギリではなさそうですね?
キバナアキギリ6wb.jpg

近縁種を調べると「シナノアキギリ」がありました。

シナノアキギリ (信濃秋桐)
  学名:Salvia koyamae
長野県で小山海太郎氏が発見、牧野富太郎博士が発表された日本固有種。
絶滅危惧Ⅱ類に指定されています。
その花は雌しべや仮雄しべもクリーム色でこの庭の花とよく似ています。
キバナアキギリとシナノアキギリの第1の鑑別点は葉で、前者は矛形(ほこがた)、後者は円心形で大きく20cmにもなるそうです。

この庭のは円心形に近いのですがやや長めのハート形が多いようです。
大きな葉は長径が15cmありました。
キバナアキギリ1葉wb.jpg

まれに矛形の名残のような出っ張りがある葉もあります。
キバナアキギリ葉2wb.jpg

花が咲く前の若葉。
円心形とは言いにくいところがあります。
キバナアキギリ若葉wb.jpg

次に花を拡大してみます。
腺毛に覆われた萼から筒状の花弁が伸び、上下に分かれて開いています。
花冠にも細い繊毛が見られます。
雌しべの先端は二つに分岐。
雄しべはどこでしょう?
キバナアキギリ花6wb.jpg

上唇は左右から中央まで伸び筒状になります。
その裂け目の上端から雌しべ、下端から仮雄しべが2個飛び出しています。
キバナアキギリ花3wb.jpg

たまたま裂け目から葯が飛び出している花がありました。
雄しべは上唇の中にあったのです。
キバナアキギリ2葯wb.jpg

1花採取して上唇を開いてみました。
2本の雄しべが並び、その上端にある葯から花粉がこぼれました。
キバナアキギリ雄しべ2wb.jpg

下端は花粉を出さない仮雄しべとなり、ここにハナバチが乗ると、てこの仕組みで葯が飛び出しハチに花粉を振り掛ける仕組みです。
キバナアキギリ仮雄しべwb.jpg

アキギリ属の同定には「毛環」が参考になるようですが、ネット画像が確認できません。
この花の花冠を開くと確かに環状に毛が密生している部分がありました。
シナノアキギリ毛僩wb.jpg

この節の4つの花は開花時期がバラバラです。
例外的ですが、右上の花はまだ花粉を出さない葯が露出しています。
キバナアキギリ葯5wb.jpg

上の画像の左下の萼はすでに花冠が脱落した後です。
軽く閉じた萼を開くと中に種子が4個見えました。
萼も腺毛に覆われています。
キバナアキギリ果実wb.jpg

熟した種子も見つかりました。
シナノアキギリ果実完熟wb.jpg

茎は四角形で腺毛が密集し、触れるとべとべとします。
キバナアキギリ茎1wb.jpg

葉の表には細かい軟毛。
キバナアキギリ葉表wb.jpg

葉の裏にはやや太い軟毛が密生。
キバナアキギリ葉裏wb.jpg

さてこの花は何でしょう?
キバナアキギリとは花も葉も異なります。
シナノアキギリとは花は同じ、葉の形も似ていますがやや小さく長いようです。

さらに検索すると「サクキバナアキギリ」というキバナアキギリとシナノアキギリの自然交配種があることがわかりました。

サクキバナアキギリ(佐久黄花秋桐)
1998年、小澤正幸・井上健氏が佐久地方で発見、翌年日原誠介氏らが新雑種として発表されました。
その詳細は分かりませんが、両者の中間形かと推定されます。

この庭に来た黄花の秋桐はシナノアキギリもしくはサクキバナアキギリかと思われます。
未だ文献不足で同定しきれませんが、記録として残しました。
コメント(10)