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トキワシノブ [草花(冬)]

トキワシノブ
  シダ類 ウラボシ綱 ウラボシ目 シノブ科 シノブ属の園芸品種(台湾原産)
  学名:Davallia tyermannii
  常緑多年草 
 
10年ほど前に植えた1株のトキワシノブが大株になりました(全高約40cm)。
寒さにも強く当地の雪にも負けず、常緑を保っています。
トキワシノブ雪wb.jpg

銀白色の毛に覆われた根茎はナツツバキの幹に着生しようと上に向かって伸びています。
トキワシノブ2016−1wb.jpg

根元にも繁茂。
トキワシノブ3wb.jpg

さらに地面にも太い根茎を貼り、所々から葉柄を伸ばしています。
トキワシノブ根茎2wb3.jpg

夏の葉はもっと色鮮やかです。これは2010年10月3日撮影。
トキワシノブ20101003wb.jpg

葉は針金状の葉柄(〜15cm)と三角形の葉身(〜20cm)から成ります。
トキワシノブ葉柄wb.jpg

1葉採取。
葉身は、先の鋭い三角形、無毛で硬い紙質様です。
トキワシノブ葉表wb1.jpg

各裂片に丸い膨らみがあります。
トキワシノブ表葉4wb.jpg

葉の裏面。
トキワシノブ葉裏1wb.jpg

黄色い斑点がびっしり。
トキワシノブ葉裏2wb.jpg

これがシダの胞子嚢群でソーラスとも呼ばれます。

ソーラス1wb.jpg

胞子嚢を保護するように被さっているのは包膜。
貝のような形で下から包んでいますが、ここでは既に胞子が成熟して溢れそうです。
ソーラス2wb.jpg

このとき観察した葉の一部を小皿に乗せたまま忘れていました。
数日後、小皿に薄黄色の粉のようなものを見つけてびっくり!
トキワシノブ胞子群2wb.jpg

暖房による乾燥で胞子が一斉に飛び散っていたのでしょうね。
大きいものは破れた嚢?
トキワシノブ胞子2wb.jpg

葉の裏にも飛び散った胞子がたくさん付いていました。
トキワシノブ胞子1wb2.jpg

FABREで覗いてみました。
濃黄色の胞子嚢が包膜からはみ出してあふれそう。
円く膨らんだ胞子嚢の上部にオレンジ色の縞模様が見えます。
これは「環帯」と呼ばれます。
FABREは20倍で見えますが、写真に撮りにくいのが難です。
トキワシノブFABRE1wb.jpg

淡い黄色に見える胞子嚢群。
辺縁部の胞子嚢は胞子が出た後のようで白っぽく見えます。
しかし包膜の下の胞子嚢の多くはまだ黄色が濃く、胞子が残っていそうです。
胞子嚢F4wb.jpg

室内で胞子を飛ばした胞子嚢は華やかでした。
多数の胞子や、役目を終えて伸びた環帯が飛び散っています。
トキワシノブ胞子2FABRE2wb.jpg

次に顕微鏡で確認しました。
胞子の入った胞子嚢、赤い部分が環帯です。
乾燥して嚢が破れると環帯の弾性により反り返って胞子を飛ばします。
胞子嚢1wb.jpg

胞子を飛ばし終えた胞子嚢。
この伸びきった環帯の下には胞子が10個ほど残っているようです。
胞子嚢殻1wb.jpg

(追加)胞子
胞子8wb.jpg

近縁に東アジアに自生する シノブ(Davallia mariesii )があります。
シノブは冬季葉が枯れますが、日本でも古来「忍ぶ玉」として吊り下げたり、盆栽風に仕立てられてきました。シノブの葉はトキワシノブに比べやや薄くて優しい感じのようです。

今までシダは難しいからと避けてきました。
これをきっかけに今年はもう少し庭のシダを見て見たいと思っています。
しかし何せ素人の個人観察、誤りがありましたらどうぞお教え下さいますようお願いします。
コメント(14) 

コメント 14

デスタントドラムス

シダ・・・上手に使えたらいいなと思いますが
我が家では雑草扱いで
抜いても抜いてもいつの間にか生えてきます。
このシダなのかどうかも見わけがつきませんが
よく生えてきます。

じっくり見ると3,4種類のシダが
庭に勝手に育っています。

胞子の様子、大変興味深く拝見いたしました。
ありがとうございます。

今日は朝のうちまたうっすら雪が積もりました。
by デスタントドラムス (2017-02-21 16:15) 

夕菅

デスタントドラムス さん コメントありがとうございました。
今日はまた寒くなりましたね。
こちらでは積もりはしませんが少し雪が舞っていました。
うちの庭にも植えたシダと自生して困り者のシダとが混在しています。
今年は身近なものだけでも同定したいと思いますが.........?

by 夕菅 (2017-02-21 17:40) 

エフ・エム

ついにシダが登場ですね。ソーラスは分類の目安ぐらいの意識しかありませんでしたが、その先の観察は夕菅さんらしく、素晴らしいです。
トキワシノブというシダは生き生きとしてたくましそうですね。種子植物ではないけれど、シダ植物であることに自負心を持っているように感じました。
by エフ・エム (2017-02-21 22:16) 

703

トキワシノブはうちにもあります。
初めの写真は、一緒だと思っていましたが、
後半の胞子の写真は、こちらでなければ拝見できません。
見ていて不思議に思ったのですが、
これだけの量の胞子はどうなっていくのでしょう? 
トキワシノブがあちこちから芽を出しているようにも思えないのですが? 観察不足でしょうか?
by 703 (2017-02-21 22:38) 

夕菅

エフ・エムさん コメントありがとうございました。
冬枯れの季節、いよいよ書くものがなくなりシダに至りました。
数年前エフ・エムさんのブログで「小石川植物園:春のシダたち」をご紹介いただきましたが、その前に「寒くても緑葉のシダたち」があったのですね。
トキワシノブもその仲間で冬も元気です。
でも真冬にこんなにたくさんの胞子を作っているとは知りませんでした。

by 夕菅 (2017-02-21 23:28) 

夕菅

703さんコメントありがとうございました。
トキワシノブ、やはりお庭にあったのですね。
どうも悪い癖で花粉だとか胞子だとかを確認しないと前に進めません。
うちではトキワシノブは根茎からふえているようです。
これらの胞子は前葉体になり有性生殖をするそうです。
ここには書ききれませんので「シダ植物の前葉体」で検索してみてください。
by 夕菅 (2017-02-22 00:25) 

とんちゃん

トキワシノブというのですね
よく目にしていると思います。
夕菅さんの手にかかるとトキワシノブがまるで別物のように生き生きとして生命力あふれる植物になってくるよう!!!
絵画的な世界にいざなわれるようです♪
太い根茎は土の中でなくいつも外にさらされているんですね
葉はいかにも硬そうに見えます
胞子嚢が面白くて引き込まれました。貝のようになっていたなんて!
顕微鏡で見ると一段と鮮やかできれいですね
難しいことは分からなくても肉眼やレンズを通して見る限りのことで素人には十分ではないかしら
お蔭で興味をすごくそそられました!
by とんちゃん (2017-02-22 08:54) 

花咲かばあば

トキワシノブは普段よく目にするシダかと思います。。美しく並ぶ葉の様子に羊歯の文字、、羊の歯はこんな風でしょうか?
地面にも木にも、根元にも旺盛に繁茂,木を枯らしてしまいませんか?
顕微鏡で見る胞子の様子に驚きました。胞子嚢のようすがまた面白い。
シダをゆっくりながめたことはありませんでしたが、こうして見せていただいて、また一つまた一つとじっくりとながめる植物が増えていきます。



by 花咲かばあば (2017-02-22 11:32) 

夕菅

とんちゃん コメントありがとうございました。
シダは気になりながらも ソーラス だの 前葉体 だのとややこしそうだったので遠巻きにしてきました。
冬枯れに恐る恐る覗いてみたら胞子がいっぱい!
顕微鏡レベルのむつかしい有性生殖はプロにお任せして、ソーラスまでを報告することにしました。
環帯が伸び縮みして胞子をばらまく仕組みに驚きました。
小石川植物園にもいろんなシダがあるようですね。

by 夕菅 (2017-02-22 11:45) 

夕菅

花咲かばあば さん コメントありがとうございました。
トキワシノブは日陰のグランドカバーには良い植物かともいますが、周りへの侵襲には要注意です。
うちではたまたま最寄りの樹がナツツバキでしたから、樹皮が剥がれ落ちます。そのため上に伸びた根茎は後ろの方でもさもさと垂れ下がっています。
羊の歯ですか! そこまでは気が回りませんでした!


by 夕菅 (2017-02-22 11:57) 

多摩NTの住人

こんにちは。お庭でシダが観察されるとは良いですね。シダやコケは勉強したいと思っているのですが、なかなか独学では難しくて進みません。でも少しずつでも数を増やしていきたいと思っています。とても参考になりました。
by 多摩NTの住人 (2017-02-23 08:34) 

夕菅

多摩NTの住人 さん コメントありがとうございました。
シダは難しいのでその中のほんの一部づつでも自分が見たことを記録しようかと思うに至りました。
でもこの頃は忘れることの方が多くなって困ります。
by 夕菅 (2017-02-23 09:45) 

panda

夕菅さん、こんばんは。
トキワシノブの胞子、きれいに撮れていますね。私も胞子を顕微鏡でのぞくことは多いのですが、見たいときに見ることができなくて、半年待ちなんていつもです。シダは難しいという人は多いけれど、幾何学的な葉の形など好きです。楽しみにしてますね。
by panda (2017-03-04 01:26) 

夕菅

pandaさん コメントありがとうございました。
恐る恐る書いた初めてのシダ、シダの大先生の pandaさんに見ていただいてドキドキします。
そういえば胞子の拡大画像がなかったことに気づいて今、追加しました。
やはりソーラスはいつもあるわけではなく、タイミングが難しいのですね。
先にヒトツバを取り上げようかと思ったのですが、葉裏はスベスベでした。胞子を作る季節もそれぞれのようですね。
これからもいろいろ教えていただけますようお願いします。
by 夕菅 (2017-03-04 17:55) 

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