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アカンサス・モリス [草花(夏)]

アカンサス・モリス
 キツネノマゴ科ハアザミ属の常緑多年草
 和名:ハアザミ(葉薊)
 学名:Acanthus mollis
 原産:地中海地域
 高さ:1〜2m

アカンサス・モリスは寒さに強く、冬の間も艶やかな緑色の大きな葉を拡げていました。
6月になると長い穂状花序が直立します。
右端の1本は今年170cmに達しました。
アカンサス2014全wb.jpg

蕾は淡いピンク色、花は下から咲き初め、咲き進むにつれて白色になります。
アカンサス1wb.jpg

葉は根性・羽状複葉。深い切れ込みがあります。
光沢ある濃緑色の厚い葉は冬を越しているのに傷みや虫食いもなく艶やかです。
アカンサス葉3wb.jpg

この庭では半日陰のせいか大きな葉は90cmほどになります。
特に葉柄が長く30〜50cm、葉身は長さ30〜40cm・巾20〜30cm。
ハアザミ属の葉には棘がある種類が多いのですが、アカンサス・モリスの葉には棘がありません。
アカンサス葉柄wb.jpg

この葉はコリント様式の建築で柱の頭部の文様として図案化され、ギリシャの神殿などを飾っていることで有名です。
(厳密にいえばこの葉は近縁で葉にも棘があるアカンサス・スピノサスの葉のようです。)
追記:19世紀のイギリスの詩人・デザイナー ウィリアム・モリス(William Morris)もアカンサスの葉をよく装飾に用い、今なお内装にも活かされています。
アカンサス葉wb.jpg

穂状花序上部。
上にいくほど小さい緑白色の蕾が整然と並んでいます。
アカンサス花段上wb.jpg

蕾の下部は棘のある苞に囲まれています。
この棘は鋭く、触れるととても痛い。
花弁は淡いピンク色に染まっています。
その上と下に紫紅色の部分があります。はて、これは何でしょう?
調べたところ、これは萼が変形したものだそうです。
アカンサス若花wb.jpg

穂状花序中部。花は約5cm。
花弁が大きくなってやや下垂します。
上の萼は庇(ひさし)のように花弁を覆い、下の萼は花弁を支えているようです。
アカンサス花段中wb.jpg

花弁には紅い脈模様が入り、初めは淡いピンク、次第に白っぽくなります。
唇形花弁ですが、上唇は退化してなく、下唇のみ。
下唇花弁は先が3裂していますが1枚です。
上の萼の下にめしべと雄しべが見えています。
アカンサス雄しべ2wb.jpg

この花では葯から花粉が出ています。
よその花粉を付けた昆虫が入って来て雌しべに花粉を渡し、蜜を求めて潜り込んだあと花粉を付けて出て行く仕組のようです。
アカンサス雌しべ花粉1wb.jpg

暗いので上の萼を反転しようと触れた瞬間、花粉がどっとこぼれました。
昆虫が訪れた時もこうなるのでしょうか。
アカンサス雌しべ花粉2wb.jpg

ヒメハナバチの一種が逆さになりながら花粉を舐めています。
花の構造からはもっと大きなハナバチを期待しているように見えますが..........。
アカンサス昆虫wb.jpg

萼を反転して若い雄しべの構造を見ました。
雄しべは細長い雌しべの左右に2本づつあり、下の雄しべが先熟、上の雄しべは後で熟すようです。
アカンサス雄しべ4本3wb.jpg

確認のため、成熟した雄しべの花を採り、上の葯を外側に固定して並べました。
4つの葯のうち内側2つの葯は花粉放出中、外側の2本の葯はまだこれからのようです。
アカンサス雄しべ4本2wb.jpg

穂状花序を上から撮りました。
3花づつ並んで見えます。
アカンサス花前wb.jpg

真正面から撮ると種明かし。
花が十字対生で並んでいました。上下2段の花が1段3花のように見えたのですね。
アカンサス十字対生wb2.jpg

アカンサス・モリスはギリシャの国花だそうです。
何となく歴史と気品が漂うように感じられます。

今回初めてアカンサス・モリスについて検索しましたが、花の構造については記載が少なく悩みました。誤りがありましたら教えていただけますようお願いします。


コメント(12) 

コメント 12

多摩NTの住人

こんにちは。
アカンサスの詳しいご説明を有り難うございました。
時々、民家の庭先で見掛けます。
色は地味ですが、豪華に見えますね。
by 多摩NTの住人 (2014-06-20 08:05) 

とんちゃん

この花はどっしりと構えていて存在感が大きいです!
孫を保育園まで送っていくとき花はなくとも大きな株が居座っているのをよく見ていました。
孫が言うのには かめさん! まるでウミガメがそこにいるような感じに見えていたのです。
スポットを当てて見ると奥行きのある植物なんですね
葉は図案化されてギリシャの神殿に残っているのですか!
濃い色の部分はガクが変形したものだったのですね
遠目には地味に見えますが近くで細かく見ると複雑で色彩的にも優雅さがあるように思えました。
ギリシャの国花!さもありなん!
by とんちゃん (2014-06-20 10:55) 

夕菅

多摩NTの住人さん コメントありがとうございました。
この花は10余年前からあるのに奥の落葉樹の下に放りっ放しでした。
今年は書いておこうと思いましたが、大きな花で簡単だと思いきや、またまたいろいろ悩まされました。
by 夕菅 (2014-06-20 17:54) 

夕菅

とんちゃん コメントありがとうございました。
こどもの目は面白いですね。
こんもり葉がかたまっているからウミガメ?
あの葉はウミガメのたくましい腕を連想させるかもしれませんね。
そういえば花も紫紅色の甲羅の小さいカメに見えるよう。
アカンサスの葉の図案ではウィリアム・モリスによる装飾模様も有名です。http://ja.wikipedia.org/wiki/アカンサス_(装飾)
by 夕菅 (2014-06-20 18:42) 

花咲かばあさん

くわしく紹介していただきました。見事に大きくて立派なアーカンサスですね。存在感のあるどっしりとした植物のはずなんですが、残念なことにこの花も、うちの庭ではほっそりと花穂も少なく、今年はいまだ一本も立ち上がってきません。年々小さくなっています。どの花も美しく見事な開花の様子を拝見してうらやましく、原因はどこかしら?と。
2000年以上も前にギリシャ建築に描かれた植物が、今こうしてあちこちの庭で花開いているのは感慨深いです。
そうですね、ウイリアム・モリスの本の中でもよく見かけます。

by 花咲かばあさん (2014-06-20 21:16) 

夕菅

花咲かおばさん コメントありがとうございました。
うちでは半日陰に放りっ放しでも毎年花咲くアカンサス・モリス、どうして咲かないのでしょうね。
検索してみても原因がわかりません。
恥ずかしながらウイリアム・モリスの本を読んだことがありません。
詩人・デザイナーなど多彩な業績が残されているのですね。
by 夕菅 (2014-06-20 23:42) 

エフ・エム

私もアカンサスの名はウィリアム・モリスの装飾で初めて知ったのでした。それ以来この植物を是非見たいと思っていましたが、のちに公園や庭園で茎と葉を見ることができて、モリスの装飾を思い浮かべつつ、感銘を受けました。花はまだ目にしたことがありません。写真を拝見すると、葉と茎だけのすがたとはぜんぜん印象が違ってくるように感じました。
by エフ・エム (2014-06-21 10:50) 

夕菅

エフ・エムさん コメントありがとうございました。
やはり、日本ではギリシャ神殿よりウィリアム・モリスの装飾の方がわかりやすいようですね。
エフ・エムさんの旧岩崎邸庭園のアカンサスの画像をもう一度見せて頂きました。これですととんちゃん のお孫さんが「かめさん」と名付けられたのも頷けますね。
花もなかなか良い雰囲気です。どうぞまたごらん下さい。
by 夕菅 (2014-06-21 12:12) 

703

今日、アカンサスモリスの写真をアップして、こちらを訪問。
株分けしたのをもらって、消えそうになりながら生長し、今年やっと定着してくれたかと感じられるまでになりました。
うちでは1本だけ咲いていますが、こちらのアカンサスの見事なこと!
堂々として、壮観です。

花の構造の勉強ができました!
by 703 (2014-06-21 23:14) 

夕菅

703さん コメントありがとうございました。
植えてからもう15年になります。
この間放りっぱなしでもひとりでに増えて毎年咲いてくれます。
サルスベリとロウバイの間で半日陰になってしまいましたが元気です。
葉が虫に食べられないのは虫が嫌いな成分を含んでいるのではないかと疑いたくなるほどです。
by 夕菅 (2014-06-22 00:14) 

リンちゃんママ

花の名前からもどうどうとした雰囲気が伝わりそうな花ですね。今までに見たことが無いような気がするのですが、ケリのように気がつかないでいるだけかもしれません。この近くの公園に生えていますか?なにしろこの年になるまでボーとしていますので意識して見る喜びを感じる今日この頃です。
by リンちゃんママ (2014-06-28 15:57) 

夕菅

リンちゃんママさん コメントありがとうございました。
アカンサス・モリスは花が好きな方はお庭に1株植えられることが多いのですが、近くの公園にあるかどうかは知りません。
それよりもどうぞ、私の方へご一報下さい。セミオープンの庭ですからご遠慮無く。
但しブログに書くときは花が終わりかけですので早めにどうぞ。
今週は仕事場の花瓶にも1本生けていました。
これからは夕方ですとユウスゲも咲いているかもしれません。
by 夕菅 (2014-06-28 17:46) 

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