アイノコセンダングサ [野草]
アイノコセンダングサ
合の子栴檀草
キク科 センダングサ属 の1年草
Bidens pilosa var. intermedia
庭の生垣の南側にある農道の端に毎年たくさんの引っ付き虫の種子をつける草が生えます。
何年か前、種子の形からコセンダングサと覚えました。
この日、モンシロチョウやキチョウなどが飛び交っているのに誘われて近くへ行ってみました。
一般にキク科の花は多数の小花の集合体(頭花)で、小花には中心部の筒状花と周辺にあって花弁のように見える舌状花があります。
しかしコセンダングサには舌状花がなく全てが筒状花です。
花の大きさは約1cm、キクの花の中心部だけのような花です。
しかし、キチョウが停まった花には白い小花が見えました。
上の画像もその目で見直すと右下と左上に白っぽい小花があるようです。
改めて周りの花々を見ると、多くの花には外側に白い小花が5つあります。
ではこの花はコセンダングサではないのでしょうか?
調べてみるとコセンダングサの亜種にコシロノセンダングサBidens pilosa L. var. minor など数種があり、それらには舌状花があるそうです。
さらに調べるとコセンダングサとコシロノセンダングサの中間型と思われるものが「アイノコセンダングサ 」として記載されていました。
アイノコセンダングサは辺縁に白い筒状花が数個あるほかは、コセンダングサと同じ形態だそうです。
とすると、ここに生えているのは「アイノコセンダングサ」でしょうか。
小花は周辺から開花していきます。
最外側は5個の白花。中に雌しべが認められます。
茶色の部分は集約雄蕊と呼ばれ、5本の雄しべが癒合して筒をつくり雌しべを囲んでいます。
周辺の雌しべはすでに伸び出して2裂しています(ブラシのような毛のある部分)。
目立たない黄色の花も白色の小花が加わると少し華やかになります。
筒状花の花冠は5裂していますが、白花も5裂し、2裂した雌しべも見えています。
上の方では未開の葯筒がロケット状に突き出ています。
蕾を見ると総苞片には外側1列の小片と蕾を囲むやや長い半膜様のものとがあるようです。
雌しべはブラシのような毛で葯筒の中の花粉を擦り取りながら花柱が伸び出し、花粉を押し出します。
葯筒の中では2枚が合わさっていた雌しべ上部の内面が柱頭。
花粉を押し出してから2裂して柱頭部を開きますから雄性先熟の仕組みです。
この花では白花の花冠が舌状花かと思われるほど大きいのですが、右の花に見られるように雌しべ雄しべを有し、変形した筒状花と考えられます。
一般に舌状花は雌しべのみの雌花、または雄しべ雌しべとも退化した中性花です。
未開の蕾では短い総苞片が8枚見えます。
外側の総苞片は7〜8枚が多いようです。
草丈1mくらい。
葉は対生で3枚または5枚の羽状複葉、縁には丸い鋸歯があります。
葉腋からなた側枝が伸び出す。
花冠が散ると引っ付き虫になる痩果ができます。
放射状に配列する痩果は花に比べて大きく、直径3cmほどにもなります。
痩果には芒(のぎ)状の冠毛が2〜3本付き、これが棘になります。
さらに冠毛には逆向きの小さなとげが密生しています。
(画面をクリックすると大きく見えます。)
黒色になった痩果の先端に黄色の芒(刺)が2~3個、フォーク状に伸びています。
完熟間際はこのように芒が輝いて花より目立っています。
拡大すると芒に逆向きの小刺が密生しているのが見えます。
これがあるため衣服や動物の毛についた痩果は容易には脱落せず遠くへ運ばれます。
完熟したトゲトゲの痩果が動物が近寄るのを待っています。
カメラを覗きながらつい近寄り過ぎたようです。
ちくちくすると思ったら引っ付き虫がこんなにたくさんついていました。
引っ張って抜いもまだ再利用できそうな丈夫な棘です。
配列に応じて長さまちまち、やや弯曲した小さいフォークは工芸品のように美しい。
花期が長いため水路脇に芽を出した2世がもう花を咲かせ初めました。
コセンダングサだと思って蝶と花とを載せようと思って書き始めましたが、例によって難航しました。
アイノコセンダングサはコセンダングサとコシロノセンダングサの種間雑種と推定されていますが、疑問視される方もあるようです。
さらにコシロノセンダングサなどの変種とコセンダングサとの異同についても疑問があるようですから、これを「アイノコセンダングサ」とするのが正しいかどうか、私にはわかりません。
DNA解析が進めば判明するのでしょうか。
追記:
コセンダングサは北米原産でやはり要注意外来生物です。
かっては畦はきれいに除草され、大豆が育っている所もありました。
大型機械による稲作が進み、除草も農薬に頼り、こうした強い植物がはびこっていくのを淋しく思います。
合の子栴檀草
キク科 センダングサ属 の1年草
Bidens pilosa var. intermedia
庭の生垣の南側にある農道の端に毎年たくさんの引っ付き虫の種子をつける草が生えます。
何年か前、種子の形からコセンダングサと覚えました。
この日、モンシロチョウやキチョウなどが飛び交っているのに誘われて近くへ行ってみました。
一般にキク科の花は多数の小花の集合体(頭花)で、小花には中心部の筒状花と周辺にあって花弁のように見える舌状花があります。
しかしコセンダングサには舌状花がなく全てが筒状花です。
花の大きさは約1cm、キクの花の中心部だけのような花です。
しかし、キチョウが停まった花には白い小花が見えました。
上の画像もその目で見直すと右下と左上に白っぽい小花があるようです。
改めて周りの花々を見ると、多くの花には外側に白い小花が5つあります。
ではこの花はコセンダングサではないのでしょうか?
調べてみるとコセンダングサの亜種にコシロノセンダングサBidens pilosa L. var. minor など数種があり、それらには舌状花があるそうです。
さらに調べるとコセンダングサとコシロノセンダングサの中間型と思われるものが「アイノコセンダングサ 」として記載されていました。
アイノコセンダングサは辺縁に白い筒状花が数個あるほかは、コセンダングサと同じ形態だそうです。
とすると、ここに生えているのは「アイノコセンダングサ」でしょうか。
小花は周辺から開花していきます。
最外側は5個の白花。中に雌しべが認められます。
茶色の部分は集約雄蕊と呼ばれ、5本の雄しべが癒合して筒をつくり雌しべを囲んでいます。
周辺の雌しべはすでに伸び出して2裂しています(ブラシのような毛のある部分)。
目立たない黄色の花も白色の小花が加わると少し華やかになります。
筒状花の花冠は5裂していますが、白花も5裂し、2裂した雌しべも見えています。
上の方では未開の葯筒がロケット状に突き出ています。
蕾を見ると総苞片には外側1列の小片と蕾を囲むやや長い半膜様のものとがあるようです。
雌しべはブラシのような毛で葯筒の中の花粉を擦り取りながら花柱が伸び出し、花粉を押し出します。
葯筒の中では2枚が合わさっていた雌しべ上部の内面が柱頭。
花粉を押し出してから2裂して柱頭部を開きますから雄性先熟の仕組みです。
この花では白花の花冠が舌状花かと思われるほど大きいのですが、右の花に見られるように雌しべ雄しべを有し、変形した筒状花と考えられます。
一般に舌状花は雌しべのみの雌花、または雄しべ雌しべとも退化した中性花です。
未開の蕾では短い総苞片が8枚見えます。
外側の総苞片は7〜8枚が多いようです。
草丈1mくらい。
葉は対生で3枚または5枚の羽状複葉、縁には丸い鋸歯があります。
葉腋からなた側枝が伸び出す。
花冠が散ると引っ付き虫になる痩果ができます。
放射状に配列する痩果は花に比べて大きく、直径3cmほどにもなります。
痩果には芒(のぎ)状の冠毛が2〜3本付き、これが棘になります。
さらに冠毛には逆向きの小さなとげが密生しています。
(画面をクリックすると大きく見えます。)
黒色になった痩果の先端に黄色の芒(刺)が2~3個、フォーク状に伸びています。
完熟間際はこのように芒が輝いて花より目立っています。
拡大すると芒に逆向きの小刺が密生しているのが見えます。
これがあるため衣服や動物の毛についた痩果は容易には脱落せず遠くへ運ばれます。
完熟したトゲトゲの痩果が動物が近寄るのを待っています。
カメラを覗きながらつい近寄り過ぎたようです。
ちくちくすると思ったら引っ付き虫がこんなにたくさんついていました。
引っ張って抜いもまだ再利用できそうな丈夫な棘です。
配列に応じて長さまちまち、やや弯曲した小さいフォークは工芸品のように美しい。
花期が長いため水路脇に芽を出した2世がもう花を咲かせ初めました。
コセンダングサだと思って蝶と花とを載せようと思って書き始めましたが、例によって難航しました。
アイノコセンダングサはコセンダングサとコシロノセンダングサの種間雑種と推定されていますが、疑問視される方もあるようです。
さらにコシロノセンダングサなどの変種とコセンダングサとの異同についても疑問があるようですから、これを「アイノコセンダングサ」とするのが正しいかどうか、私にはわかりません。
DNA解析が進めば判明するのでしょうか。
追記:
コセンダングサは北米原産でやはり要注意外来生物です。
かっては畦はきれいに除草され、大豆が育っている所もありました。
大型機械による稲作が進み、除草も農薬に頼り、こうした強い植物がはびこっていくのを淋しく思います。
2013-11-10 12:09
コメント(16)
ヒッツキ虫はセンダングサというぐらいの知識はあっても、
それ以上は分かりませんでした。
センダングサにもいろいろあるんですねえ!!
植物の世界、というか自然界は本当に奥深い。
雑草と切り捨てているものにも、夕菅さんは目を向けられて、
興味深い記事にしてくださいます。おかげで関心が広がります。
ヒッツキ虫がなぜヒッツキ虫なのかもよく分かりました!
by 703 (2013-11-10 21:22)
703 さん 長々お読みいただいてありがとうございました。
お庭にはセンダングサの類いは生えませんか?
生垣の外がこんなですからうちではセンダングサらしきが生えたことがありますが、花を待たずに抜きました。
私も詳しいことは知らなかったので、写真を撮りながら調べましたが、予想を超えたむつかしい植物でした
by 夕菅 (2013-11-10 22:45)
あら~ アイノコがいたんですね!!!
私はまだアイノコは見たことがないです。
こっちで威勢がいいのはダントツでアメリカセンダングサ
すごく猛威をふるっています。
次はコセンダングサかな~
アイノコの白い花をはっきり見たのは初めて!
とっても感激しました。ちゃんと一人前なんですね。
舌の形の花だとばかり思っていました。
痩果を大きくしてみると逆向きのトゲが生えて!これで一度くっついたら中々とれないはずだということがよく分かりました。
このひっつき虫にはよく悩まされます。1本はフォークみたいなんてその通りですね。
丁寧に調べられてこの記事には感激です!
うちの近くに在来種のこれぞセンダングサ!が一株毎年出てきてくれます。
希望の光はまだ消えずにいるので可愛くなります!
by とんちゃん (2013-11-11 14:38)
とんちゃん コメントありがとうございました。
さすがにアイノコセンダングサをご存知でその目で見ていらしたんですね。
私はアイノコを知らずにコセンダングサと思い込んでいましたが、蝶の写真を撮ったら白花が写っていたのです。
初めて知ったものは興味深くてつい深入りしたらだんだんむつかしくなり、「はい、これまで」です。
総苞はとんちゃんのコスモス2を意識して見ましたが、きれいな2層ではないようでした。
これからは遅まきながら他所でもセンダングサ達を覗き込んでみます。
by 夕菅 (2013-11-11 17:53)
こんにちは。
センダングサの種類もいろいろですね。
アイノコセンダングサはコセンダングサとコシロノセンダングサの雑種と認識していましたが、異論もあるんですか。DNAで決着するでしょうかね。
by 多摩NTの住人 (2013-11-12 08:34)
アイノコセンダングサの名前は初めて聞きました。こちらでもこのような小さくて部分的に生じる舌状花をもつ個体をしばしば見ます。
コシロノセンダングサについては、以前記事にしています。
http://michikusanojikan.at.webry.info/201010/article_3.html
コとコシロノの中間型のものは、両者の間の雑種ではないかと漠然に思っていました。
適当のプローブを使ったRapid amplificatiom of polimorphic DNA(RAPD)のような方法で、コとコシロノの間にポリモルフィズムが検出できれば、アイノコセンダングサが実際にアイノコかどうか知ることができると推測します。
by エフ・エム (2013-11-12 10:43)
多摩NTの住人 さん コメントありがとうございました。
アイノコセンダングサの存在を知り、私もコセンダングサとコシロノセンダングサの交配種かと思いましたが、検索するうちに否定的な意見もあり迷いました。
センダングサ属は複雑な名前が付けられていて素人にはむつかしく、あいまいな記事になりました。
by 夕菅 (2013-11-12 13:00)
エフ・エムさん コメントありがとうございました。
「コシロノセンダングサと来訪者たち」、参考にさせていただいておりました。「コセンダングサ以外の4亜種は、舌状花をもっています」とのことでしたので、この中間種の白花が筒状花であることを確認し、むしろコセンダングサに近いものかと思いました。
「植物分類表」センダングサ属にはアイノコセンダングサは記載されていません。
一応アイノコセンダングサのタイトルはつけましたが、私はこの1叢しか見ていませんのであいまいなまま、1例報告のつもりで書きました。
残念ながらRAPDもポリモルフィズムも全くわかりませんが、専門家の判定をお待ちします。
by 夕菅 (2013-11-12 13:21)
コシロノセンダングサを初めて知った時は、白が黄色に映えてなかなかかわいい花だと思いましたが、アイノコセンダングサというのまであるとなると、悩ましくなってきます。
ひっつき虫の中でもセンダングサは超強力!
逆さの刺のせいですね、なかなか取れなくて難儀します。
細かいところまで本当によく撮られています。
by とんとん (2013-11-13 21:02)
とんとんさんはコシロノセンダングサをご覧になったのですね。
私は見てないのですが、画像を見ると白花が大きく、雌しべが退化した舌状花のようです。
アイノコセンダングサでは白花は小さくても雌しべがあり、5裂した花冠も認められるので筒状花だと思います。
それにしても別名がいろいろあってとても覚えきれません。
そばに近寄らないよう気をつけていたつもりですが、たくさん棘が付いてしまいました。
by 夕菅 (2013-11-13 22:00)
センダングサにもこんなにいろいろ種類があったんですね。アイノコセンダングサ、初めて聞きました。近づいてよく見ると可愛い花、種ができるとやっかいですが、この種をこんなふうに見せていただくと、ほんと工芸品の、フオ-クのようで面白い。逆さにできる種の棘にも遠くまで運ばれるうまいしくみになっている。
細部までよく写真に収められましたね。
仲間で大きな白い舌状花を持っているシロノセンダングサやオオバナノセンダングサは雑草とは呼べないほど美しい花、一度庭に作ったことが
ありましたが、大変なことになってやめましたが、今でも種の形が面白くてときどき部屋で飾ったりしています。種を落とさないように、、、、。
by 花咲かばあさん (2013-11-14 21:40)
センダングサとは、樹木のセンダンの葉に、葉が似ていることから命名されたそうですね。
紹介していただくおかげで、いろいろなことに広がっていくことがうれしいです。
by 花咲かばあさん (2013-11-15 00:19)
花咲かおばさん こんばんは。
ろくろく調べもせずにコセンダングサと思い込んでいたのですが、調べてみるといろいろの名がついていて、難しいことになっていました。
シロノセンダングサやオオバナノセンダングサ、お庭に植えられたんですか。その気持ちよーくわかります。
この庭にも種が飛んできて自生したことがありましたが、やはり土に肥料分があるからか、勢いよく育ち葉を繁らせるので花が咲くまで待てずに抜きました。今思うとちょっと残念です(笑)。
by 夕菅 (2013-11-15 00:35)
花咲かおばさん 同時ですね(笑)。
センダングサの名前、そうのようです。
駐車場の脇に生えたセンダンの写真を撮っておいたら、並べて載せられたのに、これもあまり大きくなるので抜いてしまいました。
これも残念!(笑)。
by 夕菅 (2013-11-15 00:42)
センダングサを犬の散歩中探したのですが見つかりませんでした。田んぼの周りの草はほとんど茶色くかれていて黄色の小花の草をとって見ましたが違っていました。雑草と目もくれなかった草の花の奥深さに意識を変えました。
by リンちゃんママ (2013-11-15 23:11)
リンちゃんママ さん こんばんは。
うちの南側の道路には毎年群生していますが、ご近所にはないですか。
畦にセンダングサが繁るのは田んぼの持ち主が勤勉でない証拠ですから、むしろないことが良いことですが.......。
この辺りにはツクシも出ますし、野草も豊富。
またブログネタに困ったらここに来てみましょう(笑)。
by 夕菅 (2013-11-16 00:11)