ヒメジュウジナガカメムシは何故群れる(2) [昆虫]
ヒメジュウジナガカメムシ(2)
10月2日、花盛りのフウセントウワタにヒメジュウジナガカメムシの群れを発見しました。
4年前このカメムシはトウワタ(アスクレピアス)に到来、このときのことは2011-08-24の記事に書きました。
実はそれ以来、毎年トウワタを植えて再来を待っていたのです。やっと今年はトウワタではなく、フウセントウワタに集ってくれました。
トウワタ・フウセントウワタ・ガガイは皆キョウチクトウ科(←ガガイモ科)でヒメジュウジナガカメムシの食草です。
柔らかい蕾に群がっています。
花から花へ飛び移って元気いっぱい。
副花冠には蜜がありますが、アリと違って蜜を求めているようには見えません。
思い思いの所で食事や散策? 楽しげです。
孤高派もいます。
果実をひとつ採取したところ、すぐに切り口から白い乳液が滴り落ちました。
トウワタ類はミルクウィードと呼ばれ、葉からも茎からも果実からも傷を付ければ白いミルクのような液が出ます。
ヒメジュウジナガカメムシはこのミルクを吸う昆虫です。
葉の中にもミルクがいっぱい、葉先を切るとミルクが漏出します。
但し花と蕾からはミルクは出ません。
固い茎は群れの仲間と協力して穿孔する必要があるかもしれませんが、柔らかい葉や果実は単独でも吸汁できそうです。
このミルクにはカルデノライドという強心配糖体が含まれ、これを食べたカメムシを鳥やカマキリが食べると激しい嘔吐をおこします。
10月21日の朝、前夜気温がさがったからでしょうか、カメムシ達は葉に集まっていました。
暖かい陽射しを受けると日向ぼっこ?
一枚の葉に30匹くらい乗っています。
あっ、オオカマキリ! カメムシの前で動きません。
カメムシ達は気付いているのかどうか、でも逃げる気配もありません。
じっと見ている私に気付いたようです。
険しい目を向けたもののカメムシには手を出さず姿を消しました。
カマキリにとってヒメジュウジナガカメムシのオレンジ色は警戒色なのでしょう。
追 記
ヒメジュウジナガカメムシには臭いはありません。その代わりに派手なオレンジ色が「食べると危険」と報せる警告色として役立っているようです。
10月22日夜、雨の後冷えてきました。
カメムシ達はどうしているのでしょう。心配で見に行きました。
いました、いました。何事もなかったように葉や茎に並んでいます。
もう一組は1枚の葉に落っこちそうなほどたくさん群れていました。
さらに夜の気温が下がってきました。
10月25日朝、カメムシが見当たりません。どこかに越冬場所を見つけたのでしょうか。
枝を撓めてこの果実達の裏側を見ると、3つの果実の蔭にカメムシが潜り込んでいるのが見えました。
防寒対策でしょうか。3組に分かれています。
11月5日夜、まだカメムシは狭い所に群れていますが、総数は減っているようです。
一部はどこかへ移動したのでしょう。一斉に移動するのかと思っていましたが、そうでもなさそうです。
2008年は11月9日には群れていましたが、11月20日には空っぽになっていました。
こうして群生することによって温度・湿度が上がり、寒さや乾燥を防いでいるものと考えられます。
いつの世にもまた何にでも例外はあるものです。
同じ11月5日深夜、寒空に果実の上で「お山の大将僕一人」。
昨年トウワタに群れたヒメジュウジナガカメムシについての記事を書きました。
ヒメジュウジナガカメムシ(1)
http://yuusugenoniwa.blog.so-net.ne.jp/2011-08-24
この時、藤崎憲治著「カメムシはなぜ群れる?」を参考にさせていただきました。
それにはカメムシが群れるのは摂食・防御・繁殖・越冬などのためと解説されています。
前回は主に食生活について観察しましたが、今回は気候と住環境の選択を追ってみました。
今回フウセントウワタに集った群れの観察では、トウワタより住まいが広かったせいか、気温によっての移動がしばしば見られましたが、寒くなると最も保温性のよい場所に固定しました。10月末からこの果実の隙間からほとんど出てきません。
一般には地面の落葉の下や樹の洞などに群れて越冬するようです。
近くにトウワタも植えてありますが、こちらへの移住はなく、フウセントウワタは快適な住まいだったようです。トウワタは集中的に吸汁されて果実ができないもののありましたが、今回の合計数十匹の群れではフウセントウワタには明らかな被害はまだ認められません。
ヒメジュウジナガカメムシは春から夏にかけて食草の芽生えを待って、交尾・産卵するようです。
うちの庭へは、始めの食草を食べ尽くしてから移住して来たのではないかと思っています。
さて今年はここにいつまでいるのでしょうか。
追 記 1(11月 8日)
なかなかさんから2枚目・8枚目の画像に花粉塊が写っているのではとご指摘を受けました。その目で見直すと確かにそのようです。
8枚目の画像をもう少し拡大してみます。
画像の右の方に2片の花粉塊が見えます。
カメムシも花の上を歩き回って脚に花粉塊を付けていたのですね。
ただカメムシは送粉に貢献できているか否かはわかりません。
蜜を吸わなければ花粉塊は柱頭室に運ばれないでしょう。たまたまクリップが脚に絡んで花粉塊がついただけだったら、むしろ受粉を妨げることになります。
それにしても見逃してはいけない所見でした。ご指摘ありがとうございました。
追 記 2(11月12日)
1匹が果実の蔭の群れから離れて花にきていました。
画像を拡大したら口吻を蜜のある隙間に差し込んでいました。吸蜜しているようです。
横顔も撮れました。かわいい眼です(画面をクリックすると大きくなります)。
この直後、姿が見えなくなりました。
カロリーを蓄えて新しい越冬場所へ飛び立ったのでしょうか。
10月2日、花盛りのフウセントウワタにヒメジュウジナガカメムシの群れを発見しました。
4年前このカメムシはトウワタ(アスクレピアス)に到来、このときのことは2011-08-24の記事に書きました。
実はそれ以来、毎年トウワタを植えて再来を待っていたのです。やっと今年はトウワタではなく、フウセントウワタに集ってくれました。
トウワタ・フウセントウワタ・ガガイは皆キョウチクトウ科(←ガガイモ科)でヒメジュウジナガカメムシの食草です。
柔らかい蕾に群がっています。
花から花へ飛び移って元気いっぱい。
副花冠には蜜がありますが、アリと違って蜜を求めているようには見えません。
思い思いの所で食事や散策? 楽しげです。
孤高派もいます。
果実をひとつ採取したところ、すぐに切り口から白い乳液が滴り落ちました。
トウワタ類はミルクウィードと呼ばれ、葉からも茎からも果実からも傷を付ければ白いミルクのような液が出ます。
ヒメジュウジナガカメムシはこのミルクを吸う昆虫です。
葉の中にもミルクがいっぱい、葉先を切るとミルクが漏出します。
但し花と蕾からはミルクは出ません。
固い茎は群れの仲間と協力して穿孔する必要があるかもしれませんが、柔らかい葉や果実は単独でも吸汁できそうです。
このミルクにはカルデノライドという強心配糖体が含まれ、これを食べたカメムシを鳥やカマキリが食べると激しい嘔吐をおこします。
10月21日の朝、前夜気温がさがったからでしょうか、カメムシ達は葉に集まっていました。
暖かい陽射しを受けると日向ぼっこ?
一枚の葉に30匹くらい乗っています。
あっ、オオカマキリ! カメムシの前で動きません。
カメムシ達は気付いているのかどうか、でも逃げる気配もありません。
じっと見ている私に気付いたようです。
険しい目を向けたもののカメムシには手を出さず姿を消しました。
カマキリにとってヒメジュウジナガカメムシのオレンジ色は警戒色なのでしょう。
追 記
ヒメジュウジナガカメムシには臭いはありません。その代わりに派手なオレンジ色が「食べると危険」と報せる警告色として役立っているようです。
10月22日夜、雨の後冷えてきました。
カメムシ達はどうしているのでしょう。心配で見に行きました。
いました、いました。何事もなかったように葉や茎に並んでいます。
もう一組は1枚の葉に落っこちそうなほどたくさん群れていました。
さらに夜の気温が下がってきました。
10月25日朝、カメムシが見当たりません。どこかに越冬場所を見つけたのでしょうか。
枝を撓めてこの果実達の裏側を見ると、3つの果実の蔭にカメムシが潜り込んでいるのが見えました。
防寒対策でしょうか。3組に分かれています。
11月5日夜、まだカメムシは狭い所に群れていますが、総数は減っているようです。
一部はどこかへ移動したのでしょう。一斉に移動するのかと思っていましたが、そうでもなさそうです。
2008年は11月9日には群れていましたが、11月20日には空っぽになっていました。
こうして群生することによって温度・湿度が上がり、寒さや乾燥を防いでいるものと考えられます。
いつの世にもまた何にでも例外はあるものです。
同じ11月5日深夜、寒空に果実の上で「お山の大将僕一人」。
昨年トウワタに群れたヒメジュウジナガカメムシについての記事を書きました。
ヒメジュウジナガカメムシ(1)
http://yuusugenoniwa.blog.so-net.ne.jp/2011-08-24
この時、藤崎憲治著「カメムシはなぜ群れる?」を参考にさせていただきました。
それにはカメムシが群れるのは摂食・防御・繁殖・越冬などのためと解説されています。
前回は主に食生活について観察しましたが、今回は気候と住環境の選択を追ってみました。
今回フウセントウワタに集った群れの観察では、トウワタより住まいが広かったせいか、気温によっての移動がしばしば見られましたが、寒くなると最も保温性のよい場所に固定しました。10月末からこの果実の隙間からほとんど出てきません。
一般には地面の落葉の下や樹の洞などに群れて越冬するようです。
近くにトウワタも植えてありますが、こちらへの移住はなく、フウセントウワタは快適な住まいだったようです。トウワタは集中的に吸汁されて果実ができないもののありましたが、今回の合計数十匹の群れではフウセントウワタには明らかな被害はまだ認められません。
ヒメジュウジナガカメムシは春から夏にかけて食草の芽生えを待って、交尾・産卵するようです。
うちの庭へは、始めの食草を食べ尽くしてから移住して来たのではないかと思っています。
さて今年はここにいつまでいるのでしょうか。
追 記 1(11月 8日)
なかなかさんから2枚目・8枚目の画像に花粉塊が写っているのではとご指摘を受けました。その目で見直すと確かにそのようです。
8枚目の画像をもう少し拡大してみます。
画像の右の方に2片の花粉塊が見えます。
カメムシも花の上を歩き回って脚に花粉塊を付けていたのですね。
ただカメムシは送粉に貢献できているか否かはわかりません。
蜜を吸わなければ花粉塊は柱頭室に運ばれないでしょう。たまたまクリップが脚に絡んで花粉塊がついただけだったら、むしろ受粉を妨げることになります。
それにしても見逃してはいけない所見でした。ご指摘ありがとうございました。
追 記 2(11月12日)
1匹が果実の蔭の群れから離れて花にきていました。
画像を拡大したら口吻を蜜のある隙間に差し込んでいました。吸蜜しているようです。
横顔も撮れました。かわいい眼です(画面をクリックすると大きくなります)。
この直後、姿が見えなくなりました。
カロリーを蓄えて新しい越冬場所へ飛び立ったのでしょうか。
2012-11-06 21:00
コメント(14)
ヒメジュウジナガカメムシを呼び寄せる作戦が成功しましたね。集まって生活するのは警戒色の効果を増幅させる意味もありそうですね。カメムシだから臭いもそれなりに発しているのでしょうね。カマキリの戸惑ったような表情がユーモラスです。
by satton (2012-11-07 19:43)
satton さんコメントありがとうございました。
2008年来、トウワタを植えてもヒメジュウジナガカメムシは来てくれませんでしたから、ほとんどあきらめていました。
でも偶然フウセントウワタの苗を見つけ、どんな花が咲くのか見たくて植えたのです。想定外のおまけでした。
今回のブログには明記しなかったのですが、このカメムシは臭いはないのです。代わりに派手なオレンジ色が警戒色として役立ち、鳥等に捕食されるのを免れているようです。
by 夕菅 (2012-11-07 22:15)
画像が素敵です。これだけ集まると凄い被写体になりますね。通常オレンジ色は果実を彩る美味しそうな色ですが、この虫のオレンジ色はいかにもけばけばしさ、毒を感じさせます。似た色でも感じは正反対、不思議です。
by エフ・エム (2012-11-08 09:11)
エフ・エム さん コメントありがとうございました。
確かに柿や柑橘類ではこの色は完熟の証し、ヒヨドリやカラスが狙う色ですね。
一方このオレンジ色はテントウムシやチョウ(カバマダラなど)にも見られ、昆虫界では警告色として統一されれているかのようです。
カバマダラは食草もヒメジュウジナガカメムシと共通だと知りました。
調べていくといろいろ面白いですね。
by 夕菅 (2012-11-08 16:39)
ヒメジュウジナガカメムシの色はきれいですね。
まさにこの時期にピッタリのハローウィンカラーですね(笑)
これだけフウセントウワタの花に集まっているのですから、花粉塊をつけたものがいるのではと思い探してみました。
2枚目画像の足、日向ぼっこ?の画像の足と触覚あたりに写っているのは花粉塊のような気がしますが・・・。
by なかなか (2012-11-08 19:55)
なかなかさん 素晴らしいコメントありがとうございました。
花粉塊、写っていたのですね!!!
見れども見えず。始めっからカメムシは送粉には役立ってないと思い込んでいました。ですからまるでその目で見ていなかったのです。
ご指摘いただいて見直すと、確かに同じようなものがまだ他にもありました。もう少し拡大した画像を添えて本文に追記させていただきます。
実は夜の写真を撮った時、2夜、蛾を見つけました。でも静かに茎にとまっていて花粉塊を運んだかどうかは不明でした。
蛾はウンモンクチバかオオウンモンクチバではないかと思います。
未だに新しい果実が出来つつあります。
カメムシは既に越冬状態ですから、やはり蛾が主役でしょうか。
by 夕菅 (2012-11-08 22:05)
美しい色と形はカメムシの仲間といっても、おおいに興味がありますね。
カメムシの名前を聞いてぞっとするところですが、この美しい画像を見せられると親しみがわいてきます。
オレンジと黒、ナナイロテントウムシと同じように警告色で天敵から身を守っているんですね。
群れることにもたくさんの意味があることも理解できました。
ガガイモからのミルクが好物ですか。
カマキリの様子も楽しい画像でした。カメムシの警戒色よりも、カメラの大きな一つ目におどろいたんでしょうか。
退治方法を質問している方が多い中、ゆうすげ庭のガガイモを見つけた
このカメムシたちも命拾いをしましたね。
by 花咲かばあさん (2012-11-08 23:43)
花咲かおばさん コメントありがとうございました。
カメムシもいろいろですね。
ヒメジュウジナガカメムシは臭くないしモダンアートのような模様も気に入っています。
美しいアカスジキンカメムシを一度見てみたいのですが、このカメムシも臭いはあまりないようです。
でもせっかく育てた枝豆につく臭いカメムシは私も大嫌いです。
カマキリと対面したときはちょっとドキドキしました。
警告色であきらめたのか、私かカメラがこわかったのか、引っ込んでくれたのでほっとしました。
by 夕菅 (2012-11-09 08:40)
こちらでは夏の植物を片付けていると、地面を這うカメムシをまだ見かけます。数少なく、動きは鈍いですが。
ゴマの実に付いて以来、カメムシを目の敵にしてきたから、私はこのオレンジと黒の派手なのを殺した気がします。
こんな集団ではなかったから、ヒメジュウジナガカメムシではなかったのかもしれません。夕菅さんのお気に入りを殺したのでは申し訳ないですからね(笑)
by 703 (2012-11-09 16:47)
703さん コメントありがとうございました。
大切に育てて来た作物にカメムシがつくともう台無し、臭くて不味くて食べられなくなりますよね。
カメムシを目の敵にするお気持ち、よーくわかりますとも。
ヒメジュウジナガカメムシが1匹だけでいるのも見たことがありますが、もとガガイモ科の植物が好みですからゴマには群生はしていなかったのではと思います。
私は庭に来た数十匹だけで充分ですから大丈夫ですよ(笑)。
by 夕菅 (2012-11-09 21:15)
ヒメジュウジナガカメムシの自分の記事を見返してみたら、ガガイモの茎で見つけていました。
塊になっているとウワッと引いてしまいますが、ひとつで見るととても美しいカメムシさんです。
だてにこの色をしているわけじゃないと、カマキリに食べられないところには感服しました。
摂食・防御・繁殖・越冬のための知恵なのですね。
いつもながら詳しい解説と観察にとても勉強になります。
by とんとん (2012-11-10 07:11)
とんとん さんコメントありがとうございました。
2009年のとんとんさんのヒメジュウジナガカメムシ見てきました。
眉毛状の線と黒丸ポチがありますね〜。
あらためてうちの子達(?)の頭部を見直しましたが、黒丸ポチ付きは見つかりません。不思議ですね〜。
そのうちの子達も寒くなってだんだん数が減ってきています。
飛んで行くのか、歩いていくのか、またどこヘ行くのか興味はあるものの一日中見ていることもできません。
by 夕菅 (2012-11-10 09:00)
10年ほど前から、庭で育てているオキシペタラムブルースターに群れ集まってきます。蕾を枯らす害虫です。どこからやってくるのか小さい虫は見かけません。5月の連休前後に大量に発生するらしく、「どこで?」「どのように」とか思っています。他家では、ブルースターにつきませんか?
by kazuちゃん2002 (2018-04-25 10:38)
kazuちゃん2002 さん コメントありがとうございました。
オキシペタラムブルースターは和名ルリトウワタ。
ガガイモやトウワタと近縁ですから、ヒメジュウジナガカメムシが寄って来ても不思議ではありません。
でもどこから、どのようにしてやってくるのでしょうね。
by 夕菅 (2018-04-25 11:01)