フウセントウワタ [草花(夏秋)]
フウセントウワタ
キョウチクトウ科(←ガガイモ科)の1年草(暖地では多年草)
学 名:Gomphocarpus fruticosus
別 名:フウセンダマノキ
原産地:南アフリカ
草 丈:1〜2m
今春、園芸店の隅でフウセントウワタの苗を見つけ2株購入し庭に植えました。
ヤナギのような細い葉が出てどんどん大きくなりましたがなかなか花は付きません。
7月下旬やっと小さな白い花が咲き始めました。

葉腋から出た細い花茎に数輪がぶら下がるように咲きます(散形花序)。
風にゆらゆらして軽やかで優しい花です。

たくさん花が咲いて細い茎が重そうに撓んでいます。

ふっくらした蕾。
おや、左の花に何か付いています。

アリでした。小さなアリがびっしり付いています。
風に揺られながら夢中で蜜を舐めているようです。
むつかしそうな花の構造。
ネット検索で福原 達人先生(福岡教育大学)の「植物形態学」にフウセントウワタの美しい画像と解説がみつかりました。
http://www.fukuoka-edu.ac.jp/~fukuhara/keitai/fuusentouwata.html
これを予習してから花を観察することにしました。

さて、どこに蜜があるのでしょう?
下向きの花をそっと上に向けて写真を撮りました。
元ガガイモ科の花ですから、やはり、ガガイモに似ています。
肉眼ではガガイモの花のようには目立ちませんが、花弁はうっすらと細かい毛で覆われていました。
その内側にピンク色の袋状の出っ張りが5個あります。
これが「副花冠」です。

副花冠の凹みの中に蜜が貯まり、ここにアリが集ってくるのです。
中央の5角形に見える部分は雄しべと雌しべの集った蕊柱(ずいちゅう)の柱冠です。
柱冠に5個の褐色のしみのようなものが見えます。
これが雄しべの葯だそうです。雌しべは外からは見えません。

たしかに1つの副花冠に1匹づつ、アリが張り付いています。

花の後はほっとする単純さ。
小さな萼片5枚と5つに深く裂けた花冠だけ。花径は約18mm。

正面や裏面から見ると、花弁が5枚あるように見えていましたが、横から見れば一続きの花冠であることがはっきりわかります。
蕊柱の回りを副花冠が取り囲んでいます。
その間にかすかに見える黒っぽい点ひとつ。←
花粉塊のクリップです。この奥に花粉塊があるそうです。
雌しべは蕊柱の中に2裂した状態で入っています。

特有な花粉塊、老眼で見えるかどうか問題ですが試してみることにしました。
まず花を一つ採取。
赤い矢印のところを福原先生は紙片で動かされたようですが、4〜5mmの蕊柱に中の1mmもない隙間の奥のこと、粘着性ありとはいえ、小さな小さな点のような突起は老眼には確認困難です。

やむを得ず針でつついてみました。
黄色いゴミか埃のようなものがついてきたような? 長さ2mm弱です。
紙に付着させてデジカメで接写。
画像を拡大すると何とか花粉塊を確認しました(左)。
クリップの左右に一つづつ花粉塊がぶら下がっています。
さらにもう一度! やや拡大できましたが一方の花粉塊がひねっています(右)。
私のカメラと腕と視力ではもうこれで限界かとあきらめました。

花を訪れる昆虫はあまり見かけませんが、いくつかは受精して実になり始めました。
子房の周りに柔らかい毛のような突起が伸びて来ます。花柄も伸びて、くるりと反転します。

名のごとく風船のようにふくらみました。

開花は6〜7月、果実鑑賞は8〜10月と書いてある資料もありますが、この庭では7月中旬から開花、10月も終わらんとする今なお、下の方では果実を作りながら上では花が咲いています。

大きな果実は直径5cmほど、圧せば凹みます。
棘が生えているように見えますが、柔らかいので触れても痛くありません。

2株で50個ほどの果実が実りました。
この果実付きの枝は水揚げもよく、生花としても販売されています。
果実が褐色になり、次いで2つに割れて綿毛が出る頃がまた楽しみです。

花粉塊によるフウセントウワタの受精はガガイモと同様かと思われます。
これについては、「花*花・flora」なかなかさんのすばらしい解説がありますのでご紹介させていただきます。
「ガガイモの両性花と雄花」
http://www.juno.dti.ne.jp/~skknari/gagaimo.htm
もう一つ、うれしいことがありました。
このフウセントウワタにヒメジュウジナガカメムシの団体が住み着いたのです。
このかわいいカメムシについては既に2011-08-24の記事に書きましたが、フウセントウワタでの記録も次回のブログに載せたいと思います。
http://yuusugenoniwa.blog.so-net.ne.jp/2011-08-24
キョウチクトウ科(←ガガイモ科)の1年草(暖地では多年草)
学 名:Gomphocarpus fruticosus
別 名:フウセンダマノキ
原産地:南アフリカ
草 丈:1〜2m
今春、園芸店の隅でフウセントウワタの苗を見つけ2株購入し庭に植えました。
ヤナギのような細い葉が出てどんどん大きくなりましたがなかなか花は付きません。
7月下旬やっと小さな白い花が咲き始めました。

葉腋から出た細い花茎に数輪がぶら下がるように咲きます(散形花序)。
風にゆらゆらして軽やかで優しい花です。

たくさん花が咲いて細い茎が重そうに撓んでいます。

ふっくらした蕾。
おや、左の花に何か付いています。

アリでした。小さなアリがびっしり付いています。
風に揺られながら夢中で蜜を舐めているようです。
むつかしそうな花の構造。
ネット検索で福原 達人先生(福岡教育大学)の「植物形態学」にフウセントウワタの美しい画像と解説がみつかりました。
http://www.fukuoka-edu.ac.jp/~fukuhara/keitai/fuusentouwata.html
これを予習してから花を観察することにしました。

さて、どこに蜜があるのでしょう?
下向きの花をそっと上に向けて写真を撮りました。
元ガガイモ科の花ですから、やはり、ガガイモに似ています。
肉眼ではガガイモの花のようには目立ちませんが、花弁はうっすらと細かい毛で覆われていました。
その内側にピンク色の袋状の出っ張りが5個あります。
これが「副花冠」です。

副花冠の凹みの中に蜜が貯まり、ここにアリが集ってくるのです。
中央の5角形に見える部分は雄しべと雌しべの集った蕊柱(ずいちゅう)の柱冠です。
柱冠に5個の褐色のしみのようなものが見えます。
これが雄しべの葯だそうです。雌しべは外からは見えません。

たしかに1つの副花冠に1匹づつ、アリが張り付いています。

花の後はほっとする単純さ。
小さな萼片5枚と5つに深く裂けた花冠だけ。花径は約18mm。

正面や裏面から見ると、花弁が5枚あるように見えていましたが、横から見れば一続きの花冠であることがはっきりわかります。
蕊柱の回りを副花冠が取り囲んでいます。
その間にかすかに見える黒っぽい点ひとつ。←
花粉塊のクリップです。この奥に花粉塊があるそうです。
雌しべは蕊柱の中に2裂した状態で入っています。

特有な花粉塊、老眼で見えるかどうか問題ですが試してみることにしました。
まず花を一つ採取。
赤い矢印のところを福原先生は紙片で動かされたようですが、4〜5mmの蕊柱に中の1mmもない隙間の奥のこと、粘着性ありとはいえ、小さな小さな点のような突起は老眼には確認困難です。

やむを得ず針でつついてみました。
黄色いゴミか埃のようなものがついてきたような? 長さ2mm弱です。
紙に付着させてデジカメで接写。
画像を拡大すると何とか花粉塊を確認しました(左)。
クリップの左右に一つづつ花粉塊がぶら下がっています。
さらにもう一度! やや拡大できましたが一方の花粉塊がひねっています(右)。
私のカメラと腕と視力ではもうこれで限界かとあきらめました。


花を訪れる昆虫はあまり見かけませんが、いくつかは受精して実になり始めました。
子房の周りに柔らかい毛のような突起が伸びて来ます。花柄も伸びて、くるりと反転します。

名のごとく風船のようにふくらみました。

開花は6〜7月、果実鑑賞は8〜10月と書いてある資料もありますが、この庭では7月中旬から開花、10月も終わらんとする今なお、下の方では果実を作りながら上では花が咲いています。

大きな果実は直径5cmほど、圧せば凹みます。
棘が生えているように見えますが、柔らかいので触れても痛くありません。

2株で50個ほどの果実が実りました。
この果実付きの枝は水揚げもよく、生花としても販売されています。
果実が褐色になり、次いで2つに割れて綿毛が出る頃がまた楽しみです。

花粉塊によるフウセントウワタの受精はガガイモと同様かと思われます。
これについては、「花*花・flora」なかなかさんのすばらしい解説がありますのでご紹介させていただきます。
「ガガイモの両性花と雄花」
http://www.juno.dti.ne.jp/~skknari/gagaimo.htm
もう一つ、うれしいことがありました。
このフウセントウワタにヒメジュウジナガカメムシの団体が住み着いたのです。
このかわいいカメムシについては既に2011-08-24の記事に書きましたが、フウセントウワタでの記録も次回のブログに載せたいと思います。
http://yuusugenoniwa.blog.so-net.ne.jp/2011-08-24
2012-10-29 21:00
コメント(10)
今までフウセントウワタに魅力を感じたことがなかったのですが(失礼!)、アップしていただいたおかげで、どんな花が咲くか分かりました。
綺麗な花なんですね。
花の形って、“造化の妙”を感じますね。
ヒメジュウジナガカメムシの記事、興味深く読みました。
次回を楽しみにしています!
by 703 (2012-10-30 22:31)
いつものことですが、やはり素晴らしい写真と観察の記事。
実は生花店で見て知っていますが、花は知りませんでした。トウワタとは色がまったく違って、紫がかった赤なのですね。
トウワタとともに、キョウチクトウ科になっているのですね。ガガイモ科とキョウチクトウ科は近い科なのでそれほど驚きでもないのですが。
by エフ・エム (2012-10-31 07:38)
こんにちは。
フウセントウワタの実を初めて見た時は驚きました。
花はずいぶん変わった形をしていますよね。
確かに小さな蟻がビッシリいたことを思い出しました。
いつもながらわかりやすい解説で勉強になりました。
by 多摩NTの住人 (2012-10-31 09:49)
フウセントウワタの花は初めて見ました。花の作りなど興味深く読ませていただきました。「ガガイモの両性花と雄花」も合わせて読んだので、興味が倍化しました。
by satton (2012-10-31 11:46)
703さん コメントありがとうございました。
フウセントウワタは花も葉ももぎとった果実だけを花屋さんに売っていますね。それは私も敬遠でした。
でもこうして育ててみると小さな花はツリバナみたいな感じですし、すぐ小さい風船が出来てふくらんでいくのが面白く、さらにヒメジュウジナガカメムシのおまけまで付いて多いに楽しめました。
お孫さんと一緒に育てるといいかもしれませんね。
by 夕菅 (2012-10-31 14:26)
エフ・エムさん コメントありがとうございました。
私も花は初めてでしたが、派手派手なトウワタとは色は正反対、一見白い小花に見えます。
近くで見ると蕾はクリーム色、花は中央の副花冠が淡い桃紫色を帯びています。
新しいDNA分類ではトウワタ・ガガイモと共にキョウチクトウ科になりました。そういえばフウセントウワタの葉はキョウチクトウによく似ています。
キョウチクトウも綿毛を飛ばすようですが、毒性があるようですから庭には不向きですね。
by 夕菅 (2012-10-31 14:57)
多摩NTの住人 さん コメントありがとうございました。
確かにフウセントウワタの花には雄しべも雌しべも見えませんし、真ん中に変な構造があるし、始めはチンプンカンプン。
今度も雌しべまで見ることはあきらめてしまいました。
先達の素晴らしい画像を見てしまうと、実体顕微鏡がないと無理な気がしました。
アリはたくさんいましたが寒くなったら先に消えてしまいました。
by 夕菅 (2012-10-31 15:15)
satton さん コメントありがとうございました。
フウセントウワタは北海道では無理でしょうか?
「ガガイモの両性花と雄花」には花粉塊がどうして中の雌しべに届くかが見事に解説されていますね。
それにしても能率の悪そうな受粉のしくみ、驚くばかりです。
このフウセントウワタの花は大小が目立たず、おそらくすべて両性花だろうと思います。
by 夕菅 (2012-10-31 15:34)
フウセントウワタ、じっくり花を見るのは初めてです。キョウチクトウに似た葉に垂れ下がって咲く花のバランスがいいです。イツツバアケビの花にも似ているようです。
この花からは想像のつかない実です。はじめて実を見たときは、ちょっとグロテスク、ハリセンボン?にも似て、、、、。
美しい写真とともに興味深く読ませていただきました。
ヒメジュウジハナカメムシはガガイモ科の植物が好きなようですね。
by 花咲かばあさん (2012-11-02 22:48)
花咲かおばさん コメントありがとうございました。
フウセントウワタの花、遠くから見ると確かにアケビにも似ていますが近寄るとトウワタは雄しべ雌しべが見えず、アケビは丸見えですね。
果実はフウセンカズラのようにぶら下がりますが、毛むくじゃらですから可愛くはありません。ハリセンボンはちょっと可愛そうかな(笑)。
そうなんです、ヒメジュウジナガカメムシはガガイモ科が食草のようです。中でもフウセントウワタは大好物のよう。
by 夕菅 (2012-11-02 23:40)