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ツルヤブコウジ [花木(冬)]

ツルヤブコウジ
   サクラソウ科ヤブコウジ属(←ヤブコウジ科)の常緑小低木

軒下の一隅に拡がったジュズサンゴがまだ少しばかり赤い実を残したまま紅葉しています。
その陰に大きな真っ赤な実を発見!
ジュズサンゴや落ち葉を除けると赤い実がここにもここにもと現れました。
ツルコウジ1wb.jpg

2010年の晩秋、アイビーを撤去した軒下に園芸店で購入した苗を植えました。
年末には艶やかな葉と真紅の実が楽しめました。
しかし、この植物のラベルが見当たりません。
ヤブコウジ(Ardisia japonica )の園芸種?
ツルコウジ20101231wb2.jpg

その後は隣に植えたジュズサンゴの陰になって目立たぬ存在になっていました。
今期、久方ぶりに見る葉は6年前とは異なり黄色っぽく一部では紅葉も見られます。
紅い実も房状にはならず、1〜2個づつぶら下がっています。
しかし、消え入りそうなヤブコウジとは異なり、逞ましい印象です。
ツルコウジ2wb.jpg

葉には大きな鋸歯があり、葉の幅が広い。茎は直立せず横に這っています。
ヤブコウジの鋸歯はもっと細かく、葉は細長い。
検索すると近縁種「ツルコウジ(Ardisia pusilla )」が見つかりました。
しかし、山地に自生するというツルコウジの画像を見るともっと華奢な感じです。
一体、これは何者でしょう?
ツルコウジ3wb2.jpg

果実の直径は7〜9mm。ネット検索するとツルコウジは5〜8mmです。
ツルコウジ2015wb2.jpg

5裂した萼が残っています。
ツルコウジ実2萼wb.jpg
さらに検索すると「ツルヤブコウジ」・「中国ツルヤブコウジ」が見つかりました。
ヤブコウジやツルコウジのように在来種ではなく、中国原産。
まさしくこれです!やっと納得できました!

花は2014年6月に撮っていました。
花冠にはそばかすのような褐色の斑点があり、5裂して先端は後ろへ反り返っています。
茎には細毛がびっしり。
茎の細毛はヤブコウジにはなく、ツルコウジにはあります。
ツルコウジ花5wb.jpg

花の裏側。
淡いピンクに染まった5裂の萼が美しい。
ツルコウジ2140615-1wb.jpg

蕾にもそばかすがいっぱい!
ツルコウジ花1wb.jpg

画像を拡大すると中心に雌しべ、その周りを取り囲む尖った葯(雄しべ)が5枚。
属名Ardisia はギリシャ語で「矢または槍の先端」を意味する「Ardis」からつけられたそうです(植物の世界:6-28.朝日新聞社)。
ツルコウジ花4upwb.jpg

長く突き出た雌しべ。これは果実になっても残っています。
そばかすは花弁のみならず萼や花柄にも。茎には長い毛が密生。
ツルコウジ花6wb.jpg

この年はこんなに花が咲いたのに果実を観察しなかったことが悔やまれます。
ツルコウジ花4wb.jpg

ツルコウジの葉は光沢が無く両面に長い軟毛があり、長さ3cmくらいだそうです。
この葉には毛は無く光沢があり、大きい葉は長さ7cmもあります。
ツルコウジ花3wb2.jpg

葉の表面。毛はありませんが点状の突起があって触れるとザラザラします。
ツルコウジ葉表2wb.jpg

裏面にも明らかな毛は認められません。
ツルコウジ葉裏3wb.jpg

直径9mmの大きな実を2つ採ってまずは味見。
紅い外果皮を取除くとみずみずしいピンク色の果肉が現れました。
口に含むと............不味い!急いで口をすすぎました。
果肉を洗い落とすと直径6mm、縦に縞模様のある大きな種子が現れました。
これはマンリョウ(Ardisia crenata) の種子とよく似ています。
ツルコウジ種子wb.jpg

ヤブコウジも植えてあったのですが隣のタイワンホトトギスに負けて消えてしまいました。
写真はこの2007年のピンボケ1枚しか残っていません。
和名は薮に生える「柑子(こうじ...ミカン類)」の意味だそうです。
ヤブコウジ200wb2.jpg

先日園芸店でもヤブコウジが見つからず「斑入りヤブコウジ」を購入してきました。
ヤブコウジは万葉集にも「山橘」と詠まれ親しまれた植物です。
江戸〜明治の頃には斑入りの品種が多く作られ、有名品種はべらぼうな値段で取引されたそうです。
別名「十両」のヤブコウジがセンリョウやマンリョウより高価だったとは愉快ですね。
斑入りヤブコウジ1wb.jpg


        学名       分布           特徴
ヤブコウジ Ardisia japonica 北海道・本州・四国・九州  葉の鋸歯が細かい
  藪柑子          朝鮮半島・台湾・中国    葉も茎も無毛
                        
ツルコウジ Ardisia pusilla  千葉以西の本州・四国・九州から 葉の鋸歯が荒い
  蔓柑子         南西諸島・中国・フィリピン    葉も茎も有毛

ツルヤブコウジ       中国            葉の鋸歯が荒い
   蔓藪柑子        (園芸品種)        葉は無毛・茎は有毛
                        
コメント(14) 

コメント 14

とんちゃん

ステキですね
ひと目で気に入りました。
中国産ってなんでもスケールが大きいような気がしています。
ツルヤブコウジというのですね!
花といい葉といい茎の毛深いところやソバカスなんかもなにをとっても魅力が詰まっているようです!
種子がまた縞模様してすてきですね
雄しべの透ける様子に見とれます
斑入りヤブコウジはまた趣が変わり鑑賞するのにぴったりですね
一口にヤブコウジといっても様々ということをおかげさまで知ることができました。


by とんちゃん (2016-12-04 13:19) 

703

寒さの中で見る赤い実は可愛くて、ほっとしますね。
うちにもヤブコウジがありますが、さほど増えていかないのが、意外でした。
根を伸ばして出てくるのですが、赤い実は少しだけです。
蔓性のヤブコウジは実がたくさん付くようですね。
ホント冬の赤い実は、いいな!
by 703 (2016-12-04 16:25) 

夕菅

とんちゃん  コメントありがとうございました。
園芸店で買ったものは本名がわからず苦労することが屡々あります。
この紅い実は近くで見るとそばかすの残りや小さい傷があるのですが、遠目では本当にきれいな紅に見えました。
それからヤブコウジ属の実はあまり美味しくないから鳥に狙われず、翌年の花が咲くまで紅いまま残ることもあるようです。
調べて見るとまたまた奥深い植物でした。

by 夕菅 (2016-12-04 17:33) 

夕菅

703 さん コメントありがとうございました。
今日は雨で早仕舞いだったのでしょうか?
こちらも4時頃から小雨が降り始めました。
ヤブコウジってあまり増えないようですね。
でもこのツルヤブコウジならよく増えてグランドカバーになるようです。
でもやや日陰に植えないと葉は美しく保たれないですね。

by 夕菅 (2016-12-04 17:39) 

多摩NTの住人

こんにちは。ヤブコウジも色々あるのですね。種子の模様にビックリです。これは実際に見てみたいですね。
by 多摩NTの住人 (2016-12-04 18:46) 

花咲かばあば

ツルヤブコウジは、初めて聞くものでした。ヤブコウジと違い、たくましいようですね。果肉がまた美しいこと、冬枯れの庭に赤い実はいいですね。雪にも似合いますね。万両や千両は、鳥が運んでくれ、庭のあちこちで
育っていますが、ヤブコウジはどうもそうではなさそうですね。
鳥にもおいしくないんですね。
庭のヤブコウジも10年以上になりますが、繁茂もしません。
でも絶えることもなく丈夫な植物ですね。覗き込んでみると一つ二つと
紅い実が確認できるほどです。
雨になりましたが、冬の花が今年は開花が一段と早いように思います。
by 花咲かばあば (2016-12-04 20:16) 

夕菅

多摩NTの住人 さん コメントありがとうございました。
ヤブコウジは1種類しか知りませんでした。
ツルコウジは在来種なのに知る人ぞ知るの存在のようです。
ヤブコウジやマンリョウの種の模様は是非ご覧になってください。

by 夕菅 (2016-12-04 21:30) 

夕菅

花咲かばあばさん コメントありがとうございました。
ヤブコウジでなければツルコウジ?と思いましたが、ツルヤブコウジでした。
ヤブコウジは背も低く、果実も少なく、味も悪いので鳥の仲立ちは期待できず、根で頑張っているのでしょうか?
うちでも消えたと思っていたのに、今日ホトトギスを整理したら生き延びていた子株を見つけました。
明治29〜30年頃新潟では有名品種は数百円(小学校教員初任給8円)になり、県知事が売買禁止令を発したこともあったそうです。




by 夕菅 (2016-12-04 23:07) 

panda

夕菅さん、こんばんは
ツルコウジは長崎の低山には時々見かけます。似てるけど大きいツルヤブコウジのこと知らなかった。きっと大きなツルコウジなんて見逃してしまいそうです。ありがとう!
by panda (2016-12-05 02:28) 

夕菅

pandaさん コメントありがとうございました。
ツルコウジはやはり暖かいところで育ちやすい植物なんですね。
こちらではみたことがありません。
pandaさんのブログを探したら2008.12.24.の記事にありました。
やはりツルヤブコウジより小さく、緑が濃く、毛深いようです。
大変参考になりました。ありがとうございました。
by 夕菅 (2016-12-05 15:43) 

エフ・エム

ツルコウジもヤブツルコウジも知りませんでした。ヤブコウジは自生と思われるものをしばしば見かけます。ヤブツルコウジはグランドカバーとして使えるのですか。ヤブコウジはとてもグランドカバーにはなりませんね。近縁でありながら、かなり印象が違うように感じました。
ネット上を検索していたらオオツルコウジという、ヤブコウジやツルコウジに近縁の植物があることもわかりました。
http://ci.nii.ac.jp/naid/110004313407
(このページのオープンアクセスから論文の全文が読めます。)
ヤブコウジは好きな植物なので、これら近縁種も見てみたいです。
by エフ・エム (2016-12-05 22:08) 

夕菅

エフ・エム さん コメントありがとうございました。
ヤブコウジはポツンポツンと生えるだけですが、ツルコウジやツルヤブコウジは這性ですから地を覆いそうです。
但し私もツルコウジはネット画像で見るのみですし、ツルヤブコウジもうちの1株を見ているだけですが。
オオツルコウジの論文のご紹介、ありがとうございました。
こういうのが植物の専門家の論文なんだと感じ入りつつ読みました。
一応、ツルヤブコウジの毛も顕微鏡で見てみようと思います。
ツルヤブコウジについては中国原産ということしかわかりませんが、ネット上でも販売しているようです。

by 夕菅 (2016-12-05 23:59) 

多摩NTの住人

こんにちは。この記事に2回目で失礼します。ご無沙汰しておりました。やっとブログ復帰です。この冬はヤブコウジを探してみます。
by 多摩NTの住人 (2016-12-15 08:34) 

夕菅

多摩NTの住人 さん 再度のコメントありがとうございました。
私がブログを更新できないうちにホノルルマラソン完走帰国され、ご自身のブログを2つもアップされた後、再度のご訪問!
還暦とは思えない快挙に驚くばかりです。
私も本日中に次を公開できるよう仕上げます。
by 夕菅 (2016-12-15 11:28) 

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