クワクサ [野草]
クワクサ
桑草 クワ科 クワクサ属の一年草
学名: Fatoua villosa
分布:本州・四国・九州、中国
花期:9〜10月
高さ:数cm〜80cm
クワクサはこの庭にはびこる頑固な「雑草」の一種です。
葉がクワの葉に似ているからクワクサだろうとは思っていましたが、今回調べてみてこの草が本当にクワ科だったので驚きました。

クワクサの葉は卵形で薄く、辺縁に鈍い鋸歯があり、まばらに毛が生えています。

裏面は白っぽく葉脈が目立ちます。
葉脈の上にも微毛が生え、触れるとざらっとした感触があります。

9月、葉腋に緑色もしくは紫褐色の球状の集散花序をつけ、細かい白い花が咲きます。

クワクサは雌雄同株で、一つの花序に雄花と雌花が混在して咲きます。
この部分は雄花、薄緑色の4枚の花被片と4本の雄しべが重なって開いています。

こちらの花被片は紫褐色、中から白い葯が覗いています。
花糸が伸びて葯が開く勢いで花粉を飛ばす仕組みです。

開いた雄花、花糸が十文字に展開しています。
じゃんけんでグーからパーになったよう。

雌花はどこでしょう?
花茎の上部の花序には先が尖った蕾のようなものが多く見えました。
これが、雌花でした!
雌花の隙間からは糸のようなものが1本づつ伸びています。
雄花も混在していて1花開花中、右下の白いふくらみは雄花の蕾です。

一つの花序は直径1cm前後、一つの雌花は直径1〜1.5mm。
ピンセットで雌花を一つ取って針の先で花被片を開きました。
4枚の花被片に包まれた子房が見えました。
その上に伸びているのは柱頭でしょうか? 花柱でしょうか?
検索すると柱頭とも花柱とも書かれています。とりあえず柱頭としておきます。

先端部の花序を取って1mm方眼紙の上に置きました。

柱頭を拡大。
ピンボケですが、細かい毛が密生しているのがわかります。

10月になるともこもこした紫褐色の花序が目立ちます。
この花序の中はどうなっているのでしょう。

雌花が多い紫褐色の花序を採るとピーンと白い塊が飛びました。
花被片に覆われたまま、すでに果実(痩果)が熟し、種子が圧出されたのです。
白い矢印の先に今にも落ちそうな種子がのぞいています。

役目を終えた雄花は花被片を閉じて褐色になっています。
ここでも混在していた雌花から種子が飛びました。

大きめの雌花の花被片を開いてみました。
確かに中では種子が形成されつつありました。

さらに熟すと種子の表面に白い模様が現れました。
この種子の勢い良く飛ぶような落ち方には仕掛けがあるようです。
朝日百科植物の世界では「果実内に舟形に肥厚した多汁質の外果皮があり、外果皮が膨らむ際の圧力で、種子を飛ばす」と書いてあります。
種子の下部の部分が「舟形に肥厚した多汁質の外果皮」と思われます。

飛び出した種子を集めて1mm方眼紙に載せました。

厄介な「雑草」クワクサ、さすがに少ないエネルギーで多くの種子を残す仕組みを秘めていました。
昆虫を当てにしない風媒花、そのため雌花にも雄花にも余分な装飾はなく単純な造りです。
庭では5cmほどの小さな株にも果実ができています。
蕾かと思っている頃すでに種子が飛ぶことがわかりましたから、早めの除草が必要です。
(素人の観察記です。誤りがありましたらご教示いただけますようお願いします。)
桑草 クワ科 クワクサ属の一年草
学名: Fatoua villosa
分布:本州・四国・九州、中国
花期:9〜10月
高さ:数cm〜80cm
クワクサはこの庭にはびこる頑固な「雑草」の一種です。
葉がクワの葉に似ているからクワクサだろうとは思っていましたが、今回調べてみてこの草が本当にクワ科だったので驚きました。

クワクサの葉は卵形で薄く、辺縁に鈍い鋸歯があり、まばらに毛が生えています。

裏面は白っぽく葉脈が目立ちます。
葉脈の上にも微毛が生え、触れるとざらっとした感触があります。

9月、葉腋に緑色もしくは紫褐色の球状の集散花序をつけ、細かい白い花が咲きます。

クワクサは雌雄同株で、一つの花序に雄花と雌花が混在して咲きます。
この部分は雄花、薄緑色の4枚の花被片と4本の雄しべが重なって開いています。

こちらの花被片は紫褐色、中から白い葯が覗いています。
花糸が伸びて葯が開く勢いで花粉を飛ばす仕組みです。

開いた雄花、花糸が十文字に展開しています。
じゃんけんでグーからパーになったよう。

雌花はどこでしょう?
花茎の上部の花序には先が尖った蕾のようなものが多く見えました。
これが、雌花でした!
雌花の隙間からは糸のようなものが1本づつ伸びています。
雄花も混在していて1花開花中、右下の白いふくらみは雄花の蕾です。

一つの花序は直径1cm前後、一つの雌花は直径1〜1.5mm。
ピンセットで雌花を一つ取って針の先で花被片を開きました。
4枚の花被片に包まれた子房が見えました。
その上に伸びているのは柱頭でしょうか? 花柱でしょうか?
検索すると柱頭とも花柱とも書かれています。とりあえず柱頭としておきます。

先端部の花序を取って1mm方眼紙の上に置きました。

柱頭を拡大。
ピンボケですが、細かい毛が密生しているのがわかります。

10月になるともこもこした紫褐色の花序が目立ちます。
この花序の中はどうなっているのでしょう。

雌花が多い紫褐色の花序を採るとピーンと白い塊が飛びました。
花被片に覆われたまま、すでに果実(痩果)が熟し、種子が圧出されたのです。
白い矢印の先に今にも落ちそうな種子がのぞいています。

役目を終えた雄花は花被片を閉じて褐色になっています。
ここでも混在していた雌花から種子が飛びました。

大きめの雌花の花被片を開いてみました。
確かに中では種子が形成されつつありました。

さらに熟すと種子の表面に白い模様が現れました。
この種子の勢い良く飛ぶような落ち方には仕掛けがあるようです。
朝日百科植物の世界では「果実内に舟形に肥厚した多汁質の外果皮があり、外果皮が膨らむ際の圧力で、種子を飛ばす」と書いてあります。
種子の下部の部分が「舟形に肥厚した多汁質の外果皮」と思われます。

飛び出した種子を集めて1mm方眼紙に載せました。

厄介な「雑草」クワクサ、さすがに少ないエネルギーで多くの種子を残す仕組みを秘めていました。
昆虫を当てにしない風媒花、そのため雌花にも雄花にも余分な装飾はなく単純な造りです。
庭では5cmほどの小さな株にも果実ができています。
蕾かと思っている頃すでに種子が飛ぶことがわかりましたから、早めの除草が必要です。
(素人の観察記です。誤りがありましたらご教示いただけますようお願いします。)
2015-10-13 21:56
コメント(16)
クワクサってどこにでもいっぱいありますね
初めてクワクサのことを知ってからはここにもあそこにもって!すごく多いと感じたのを思い出します。
雄花はカテンソウのような感じがします。
効率的な造りをしていますね
極小の花や果実をはっきり見せていただいて感心します
せっせ せっせと 子孫を大量生産するのですね
柱頭がこんな風になっているなんて初めて見ました。
なんだか胸がすっきりしています~
by とんちゃん (2015-10-14 08:20)
クワクサの花をブログに載せようと思ったことが何度かあり、撮影をこころみたのですが、いつもなんだかさっぱり分からない写真ばかりでした。
非常に分かりやすい写真と説明で、花の構造がよく分かりました。ありがとうございます。
クワ科というのは、マイナーな感じで、どんな植物がそれに属するかも調べたことがありませんでした。イチジク、ガジュマル、オオイタビなども、図鑑ではクワ科に入っていました。APGではどんな分類がされているか、まだ調べていません。
by エフ・エム (2015-10-14 09:50)
超細かい物を、上手に扱っていますね。
とてもよく分かります。
クワクサは、観察するために絶えないように大事に庭に生やしています。(笑)
花序の部分に何か秘密がありそうな感じがしていましたが・・・
>花糸が伸びて葯が開く勢いで花粉を飛ばす仕組みです。
こんなに面白い仕組みが!
カテンソウがこんな仕組みじゃなかったかしら。
見たことが無いので、うろ覚えですが。
by とんとん (2015-10-14 12:07)
とんちゃん コメントありがとうございました。
庭にも年々ふえるクワクサ、一度ブログにと思いながら、庭の大敵とばかり見つけると抜いていました。
今回やっと記事にしながら増える理由を知ることができました。
そうなんです。雄花はカテンソウにそっくり。雄しべの数が4と5と違うだけですね。でも残念ながら私はまだ見たことがありません。
虫にも風にもあまり頼らず、花粉も種子も自分の力で飛ばしていました。
by 夕菅 (2015-10-14 15:14)
エフ・エムさんコメントありがとうございました。
葉が似ているからか、トレニアの周りのクワクサは花をつけるまで退治されないことが多いので、それを記事にしようと思ったのです。
ところがクワクサの花(雄花でした)には雌しべがない!
そこからクワクサに溺れてやっとここまで辿り着きました。
柱頭と最後から3枚は初めてのネイチャースコープ画像です。
花柱か柱頭か、種子か痩果か、悩ましく停滞しました。
イチジクもクワ科なんですね。難しくて断念したことがあります。
by 夕菅 (2015-10-14 15:36)
とんとん さんコメントありがとうございました。
クワクサは大事にしなくてもどんどん増えますから大丈夫ですよ(笑)。
雌花があまりに小さいので、老眼ではその4枚の花被片をうまく開けず、もうここまでと諦めました。
検索中、カテンソウが出てきてそっくりなのに驚きました。これはイラクサ科、私も見たことがありません。
by 夕菅 (2015-10-14 15:50)
こんにちは。クワクサは時々見ますが、詳しいご説明で理解できました。いつもながら素晴らしい写真と解説です。
by 多摩NTの住人 (2015-10-15 08:10)
多摩NTの住人 さん コメントありがとうございました。
クワクサは素人が取り上げるには難しすぎたようです。
説明できる写真が撮れなくて苦労しました。未だに疑問が残ります。
by 夕菅 (2015-10-15 09:37)
見つけたら引いているのがクワクサというのだと初めて知りました。
蕾だと思っているうちから種を飛ばしているという一文を、
肝に銘じて草引きに励みます(笑)
クワクサが風媒花だというのも知らなかったこと。
知らないことだらけの庭の住人たちです。
by 703 (2015-10-15 23:03)
703 さん コメントありがとうございました。
クワクサはまだ緑色の蕾かと思っている頃から種子をパッパッと飛ばして少しでも遠くに2世を作ろうとしていました。
風媒花に分類されますが、私には風に頼らず自力で散布しているように思われました。
でもこれで「見つけたら引く」のが正解と確信されたことと思います。
by 夕菅 (2015-10-16 08:22)
どこにでもはびこる草ですが、花は目をこらさないと見過ごしてしまいますね。
ゆっくり向き合ったことがありませんでしたが、こうしてくわしく見せていただくと、雄花は可愛い花ですね。
そう、カテンソウにそっくり、九州で一度見たことがあります。
仙台に住んだ時に食したミズにもとてもよく似ています。
こんな風に二世を次々と作られたら大変、見つけたら即退治してます。
by 花咲かばあば (2015-10-16 19:09)
花咲かばあば さん コメントありがとうございました。
私もクワクサについて何も知らないところからスタートしました。
小さい白い花は雄花、雌花はどれ?
花だけ見るとカテンソウ(イラクサ科)にそっくり。
ただしカテンソウは5数性、クワクサは4数性です。
ウワバミソウ(ミズ)って食べられるのですね。これもイラクサ科。
皆さんに教わってまた楽しいことです。
by 夕菅 (2015-10-17 11:35)
夕菅さん、こんばんは
クワクサはイラクサの仲間かと思っていたので、私もクワ科でちょっとびっくりしました。私の庭にもたくさん生えています。特に今年は多くて目についたら抜いています。あんまり手こずらないいい雑草?
いつもながら、夕菅さんの解説は楽しいです。そんな目でクワクサを見たことがなかったから、次ぬくときは「蕾かと思っている頃すでに種子が飛ぶ」と早めの除草をしますね。
昨日はアケビコノハの成虫に出会いました。夕菅さんのところで読んでいたので気がつきましたが、ほんとに木の葉もようで一度目を離したらわかりません。それで、写真に撮ることはできませんでした。また会える日を楽しみに待つことにします。
by panda (2015-10-19 20:12)
pandaさん コメントありがとうございました。
クワクサ豊作なんですね。
うちではトレニアが多いため、葉が似たものが残ってしまいます。
昨日の草取りのとき、果実部分を握ったら顎にピーンピーンと種子が当たるのを感じました。
アケビコノハの成虫が見られて良かったですね。
私も最初の成虫を見ましたが、木の葉の下のオレンジ色はなかなか見せてくれませんでした。
by 夕菅 (2015-10-20 00:54)
とにかく草と思えば取っていた草も拡大された写真を見るとなかなか興味深いものです。自分の目では細かいものは良く見えませんが。今までクサの名前を知りませんでしたが今後は意識して見てみます。
(嬉しい事にキャンディーリリーの芽が出てきました。株のほうは1輪可愛い花が咲きました。)
by りんちゃんママ (2015-10-26 22:36)
りんちゃんママさん コメントありがとうございました。
クワクサは名前が覚えやすいのでもう大丈夫でしょう。
私にとっては何年か前からの宿題がやっと終わりました。
キャンディーリリーの種も蒔かれたのですね。見事発芽!
おまけの花もいじらしい。
私はただ放置でしたが、刺激されて黄花の方を蒔いてみましょう。
by 夕菅 (2015-10-27 08:54)