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セツブンソウ (2) [草花(冬)]

セツブンソウ (2)
 セツブンソウ (1)からの続きです。

キンポウゲ科は「形態に原始性をとどめながらも高度に分化したグループ」といわれます。
セツブンソウにもその傾向がありそうな気配です。
今年咲いた花はたった5つですが、よく見ると花が少しづつ違います。
今回は素人の目で見たままを記録することにしました。

5花を左から順にA花・B花・C花・D花・E花とします。
2015-02-05-14.44.Lwb.jpg

A花の咲き始めです(2月5日10時42分)。
花弁のように見える萼片は5枚、白く透けて輝いています。
元々の花弁は変形して杯状になり、先端が4裂し大小2つづつの蜜腺になっています。
蜜腺は6対、拡大すると大きな目玉の「ケロヨン」みたいで楽しい!
画像検索すると、蜜腺の形は様々で2裂してY字型になっているのもありました。
ここの蜜腺は初めは黄緑色、次第に黄色になりました。
青いハート型の集団は未開の雄しべの葯です。これは重なっていて数え切れません。

セツブンソウ透ける萼片B2015wb.jpg

5花のまとめです。面白いことに同じ組み合わせはありません。
 A 萼片5枚    蜜腺 6対   雌しべ3本
 B   5枚       7対      4本  
 C   4枚       7対      3本  
 D   5枚       8対      4本  
 E   6枚       7対      4本 

上のA花、約4時間後の姿です(2月5日14時46分)。
青い葯は5個開いて白い花粉を出しています。
柔らかいピンク色の雌しべが3本見分けられます。
A2015-02-05-wb.jpg

セツブンソウはやはり気ままな植物のようです。
検索すると萼片4〜10枚、蜜腺5〜10対、雌しべ2〜5本と様々、まだ例外もあります。
雄しべはもちろん多い少ない様々。
けれども萼片は圧倒的に5枚が多い。
B花も萼片5枚ですが、蜜腺と雌しべが一つづつ多くありました。

D花も同じく萼片は5枚ですが、蜜腺が8対、賑やかに見えます。
雌しべは4本。
D2015-02-05wb.jpg

C花の萼片は4枚、蜜腺7対、雌しべ4本。
萼片が1枚少ないだけですが何か雰囲気が違います。
咲いて3日目、蜜腺が黄色になりかけています。
C2015-02-06-wb.jpg

E花は少し変わっていて萼片が6枚。
6枚目の萼片は2裂、1枚は薄い緑色で葉状です。
E2015-02-05-wb.jpg

横から見ると基部がわずかにずれているようです。
E2015-02-11-wb.jpg

次の疑問はセツブンソウは雄性先熟かどうかです。ネット検索時、疑われていることを知りました。
確かに花が開くとすぐ葯が開き始めます。
しかし、葯は一気にではなく少しづつ開いていきます。
開花3日目のE花の雌しべ4本は近くの花粉をつけることなく、突出しています。
この花だけ見ると雄性先熟?と思います。
E2015-02-06-wb.jpg

これは開花2日目のC花です。
葯はまだ4個しか開いていませんが、雌しべに白っぽい変化が見られます。
もう花粉が付いているのでしょうか? 雌しべ未成熟とは言いかねます。
C02-05花粉初2wb.jpg

また開花2日目のD花では4本の雌しべのうち2本が太くなり、黄色っぽい斑が見えます。
ここが柱頭でしょうか?
しかし、他の花では同じような斑を確認できません。
D-1-02-05-wb.jpg

開花3日目のA花、まだ葯は半分以上開いていないのに雌しべに花粉が付いています。
A20150206-12.25wb.jpg

8日目のB花。
雄しべの葯はまだ開ききってはいませんが、花糸が長く伸びて雌しべを取り巻いてしまいました。
まだ蜜も濃黄色につやつやと輝いています。
しかし、この2月の寒い中、訪れる昆虫は見たことがありません。
花粉を風で飛ばすことも、蜜で昆虫をよぶことも諦め、自家受粉せざるを得ないかもしれません。
B2015-02-11-wb2.jpg

A花7日目。未開の葯はあと一つ。
萼片が少し傷んで彎曲し始めています。
Aセツブンソウ02-10-wb.jpg

C花11日目(2015.2.14.)。
雌しべにも花粉が付いています。
萼片が雄しべ・雌しべ・蜜腺すべてをまとめて包み込みます。
やはり自家受粉の体勢でしょう。
C2015-02-14-wb2.jpg

本日2月15日朝の花たちです。
花茎は7cmほどに伸びましたが直立できません。
自生のセツブンソウの塊茎は地下20cmにあるそうですから浅鉢では無理だったのです。
こんな環境でも昨年3株植えた鉢に自然落下で芽生えた子葉が30本ほど育っています。
結実率の良さも自家受粉の結果かもしれません。
2015-02-15wb.jpg

セツブンソウは自生地が限られる上、花の位置が低いので詳細な報告が少ないようです。
今年は鉢植えの花を近くで見られましたのでわずか5花ですが記録しました。
検索資料に時々出てくる「雄性先熟?」については否定的かと思えました。
しかしキンポウゲ科は多様性があるよう、こんなに少ない観察ではただ参考のみです。
ひとり勝手な推察です。誤りがありましたら是非お教えください。

いつか庭の落葉樹の下で百花くらい咲いてくれないかなと夢見ています。
コメント(18) 

コメント 18

703

これはこれはと、丁寧な観察に目を見張りながら、読みました。
 「2週間取り憑かれていました」という言葉の中身がよく分かりましたよ。
うっとりと毎日眺めていた、くらいの取り憑かれ方かと思っていましたが、
やっぱり夕菅さんの好奇心、探究心は並ではありません。

おかげでセツブンソウが勝手気ままに咲くと分かり、次に見る時の楽しみができました。
杓子定規より自由なのが好きです(笑)
by 703 (2015-02-15 22:32) 

リンちゃんママ

可愛い花ですね。時間経過が花の可憐さを伝えているようです。小さな花の様子が綺麗に映されとても興味深くいつも見ています。先日私も写真をと思いチャレンジしましたが手ぶれでボケカメラのせいにして主人の接写用を使って見ましたが残念な結果の写真でした。いつも綺麗な写真に感動して見せていただいております。
by リンちゃんママ (2015-02-15 22:40) 

夕菅

703 さん コメントありがとうございました。
お恥ずかしい次第です。
初めは2年目だからこの庭の花と思って感激して眺めていたのですが、コンデジで接写してみると細部が気になって???
完成された園芸種より一花づつ異なるようなキンポウゲ科の花は素朴で楽しいですね。
「杓子定規より自由なのが好き」同感です!
by 夕菅 (2015-02-15 23:07) 

夕菅

リンちゃんママさん コメントありがとうございました。
こんなに低く咲く花は撮りにくいのですが、今回は珍しく鉢植えですから台の上に持ち上げて撮れました。
撮るときは「息を止めてー、はい」です(笑)。
シモバシラを植えられたのに今年は霜柱があまりできなくて残念ですね。
by 夕菅 (2015-02-15 23:17) 

とんちゃん

待っていました♪
随分個性的だったのですね
ひとつひとつ主張することがあって性格が色々
なんだか現代的な若い女性を思ってしまいました。
人より違うふうでありたいってなにかしらの自分らしさをひとつでも出せるように!
今迄セツブンソウをそのような目で見たことがなかったので目の前が開けたようです!
鉢植えでじっくり見られる強みを十分発揮されて熱のこもったレポートをありがとうございます
雄しべが必死に雌しべを囲んでいるところは一生懸命さをひしひしと感じて愛おしいです~
by とんちゃん (2015-02-16 08:15) 

夕菅

とんちゃん  コメントありがとうございました。
セツブンソウは見るだけでは情緒的になりますが、数えてみるとまた新たな展開がありました。
萼片も雄しべも雌しべも蜜腺もそれぞれ「お好きなだけお取りください」という感じです。
古い花でありながら、確かに、自分らしさを求める若い女性の感覚に通じるところがあるかもしれませんね。
私もつられてつい感じたままに書いてしまいました。

by 夕菅 (2015-02-16 17:45) 

多摩NTの住人

こんにちは。
これは素晴らしい学術レポートですね。とても興味深く拝読致しました。今日からセツブンソウの見方が変わります。有り難うございました。
by 多摩NTの住人 (2015-02-17 10:03) 

夕菅

多摩NTの住人 さん コメントありがとうございました。
たった5輪を大げさに書いてしまいましたが、決して学術レポートではありません。
先輩の多摩NTの住人さんのお庭には8輪咲いているはずですから、また覗いてみてください。
バリエーションが多い花ですからまた異なる結果になるかもしれません。
by 夕菅 (2015-02-17 12:39) 

panda

夕菅さん、おはようございます。
セツブンソウは可愛いですね、育てたくなる夕菅さんの気持ちがよくわかります。私も何年か前に秩父まで見に行ったことがあります。3月だったと思うのですが、夕菅さんのところはピッタリ節分だったのですね。すごい!
私も今年は広島までセツブンソウを見に行こうと思っているのですが、やっぱり3月です。気温で開花時期が決まるのかな?その予習に夕菅さんのセツブンソウをじっくり読ませてもらいました。ありがとう!
上から見るとまるでパンダの顔のような花弁がお気に入りですv(^^*)
by panda (2015-02-18 08:22) 

エフ・エム

セツブンソウの花を群落で眺めていると、どれも同じようですが、一つずつ観察すると皆それぞれ少しずつ異なるのですね。これもまた種保存への何らかの工夫なのでしょうか。こまかく観察されてびっくりです。
蜜腺があるけれど、この季節に訪れる虫がいるのでしょうか。
by エフ・エム (2015-02-18 08:26) 

花咲かばあば

この長い時間、背丈の低い花の観察は、地に屈んだり膝を折っての観察大変だったことでしょう。花それぞれの違いや、経過観察の素晴らしさに驚いています。それぞれ違いがあるんですね。昆虫がほとんど飛んでいない時期は自家受粉する植物が多いのでしょうか。
群生地を訪ねての出会いは、感嘆の声をあげるか、カメラを構えて歩き回ったり、、、。       おかげでゆっくり見せていただきました。
「節分草よき木漏れ日のありにけり
早春賦の詩が聞こえてきそうです。
by 花咲かばあば (2015-02-18 17:28) 

夕菅

pandaさん コメントありがとうございました。
セツブンソウはやはり一目は見たい花でした。
次は何とか地植えで咲かせられないかと思うのは贅沢・欲深。
もうこれで堪能すべきでしょうね。
「上から見るとまるでパンダの顔のような花弁」には気づきませんでした!
広島のセツブンソウ、良い時期に当たるといいですね!
400個以上の花の萼片数を数えられた報告もありました。
pandさんのレポートを楽しみにしています。

by 夕菅 (2015-02-18 18:09) 

夕菅

エフ・エム さんコメントありがとうございました。
セツブンソウの鉢を室内に持ち込んで一花一花覗き込んでみますと意外に個性がありました。
たくさんの雄しべから長期間に亘って次々と花粉を出す。
花弁は蜜腺と化し黄色い蜜を並べて待つ。
それでも昆虫はこないから、もうそっくり包み込んで全部種子にする。
そんな作戦のように思えました。
by 夕菅 (2015-02-18 18:20) 

夕菅

花咲かばあば さん コメントありがとうございました。
自生のセツブンソウの接写写真は腰痛者には撮れません。
これは私有物のありがたさ、風も避けて室内で写しました。
自生地では踏んでしまわないように接近不可でしょうから、こういう写真は無理でしょうね。
でも本当は私も群生地で感嘆の声を上げながら歩き回り、消え入りそうに儚げなセツブンソウを撮りたい!
「節分草よき木漏れ日のありにけり」
はじめ花咲かばあば さんの句かと思いました。群落発見の喜びですね。
by 夕菅 (2015-02-18 18:36) 

花咲かばあば

夕菅さんおはようございます。早速お返事ありがとうございます。
俳句や短歌はむつかしくてとても作れません。毎日、花の絵を描いたらそれに合う短歌や俳句を検索して絵日記にしています。
沢山の句や歌の中から選んでいる時間のなんと楽しいこと。
ちなみに「節分草よき木漏れ日のありにけり」の句は渡辺玄子という方の句でした。作られた方の名前を記さないといけないですね。
今朝は冷え込みましたが、明るい陽の光はもう春も近いですね。
by 花咲かばあば (2015-02-19 09:05) 

夕菅

花咲かばあばさん もう一度ありがとうございました。
花の写真に俳句を添えていただくと俄然情緒豊かになるような気がして嬉しくなります。
この句も控え目ながら、その情景が浮かぶようでいいですね。
私は下手な説明を書くのに精一杯でとても詩歌まで行けません。
花咲かばあば さんの短歌や俳句を添えたパソコン絵画日記を是非ブログにして見せていただけますよう、楽しみにしています。
2年前にいただいたフクジュソウが今日は3花開いていました。
まだ蕾が7つもあるんですよ!

by 夕菅 (2015-02-19 17:41) 

ヒカルゲンジ

今日、京都植物園でセツブンソウの花を見てきました。夕菅さんのブログを見ていたので、蜜腺や雌しべの数は無理ですが、萼片の数をチェックしてみました。別々の場所の3群(1群あたり約50個程度の花)を見たのですが、ほとんど5枚の中にどの群も、4枚と6枚が一つずつ混じっていました。
一人で興奮してみていると、周りからは怪しい人に見られたみたいです。
こんな発見があるとますます植物観察が面白くなります。これからも色々と教えてください。
by ヒカルゲンジ (2015-02-20 18:27) 

夕菅

ヒカルゲンジさん コメントありがとうございました。
京都植物園でセツブンソウの萼片を数えて下さったのですね。
3群合計約150花のうち萼片4枚と6枚がそれぞれ3花づつ、それも1群に1花づつ確認されたとは貴重なご報告です。
植物園でこれだけの花の萼片数を観察するのは大変だったと思います。
本当にありがとうございました。
私の庭のわずか5花の中に萼片4枚と6枚が1花づつあったことも幸運でした。
こちらこそ今後ともよろしくお願いします。
by 夕菅 (2015-02-20 23:46) 

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