サクラタデ [草花(秋)]
サクラタデ
桜蓼
タデ科 イヌタデ属の多年草
学名:Persicaria odorata
花期:9〜11月(当地)
分布:北海道・本州・四国・九州
6年前 六甲高山植物園で見て感激したサクラタデ。
花友さんのお蔭で昨年からうちの庭でもたくさん咲くようになりました。
ところがこの可憐な花をブログに載せようとすると、先ず写真が撮り難い。
ネット検索すればいろいろ疑問が出てきて、またまた初心者は悩みました。
今日はそれでも少々わかったつもりで記事にします。
誤りがありましたらどうぞお教え下さいますようお願いします。
サクラタデの茎は直立します。
草丈が50〜100cmになるので途中で倒れることもありますが、そこからまた垂直に伸びて開花します。

花序は1〜2本に分岐し、花穂が長くなると弯曲することもあります。

開いた花の直径は約8mm。
雌しべの花柱は3裂し、柱頭が3個づつ花被より長く突き出しています。

雄しべは8本、花被より低い位置にあります。
このように雌しべの方が雄しべより長い花を長花柱花といいます。
うちのサクラタデは全て長花柱花ですから、私はサクラタデは両性花だと思っていました。
ところがサクラタデには雄しべが長く雌しべが短い短花柱花もあるのだそうです。
そのため長花柱花を雌花、短花柱花を雄花とし、雌雄異種と記した文献もありました。
花*花・Floraのなかなかさんはこれに疑問をもち、サクラタデは両性花であることを3日連続のブログ 2006年11月14日 〜で明らかにされました。
しかし両性花であっても自花不和合性といって長花柱花あるいは短花柱花同志では結実しにくい性質があるそうです。そのため果実は少ないのですが結実は確認されています。

雄しべ8個が揃っている写真を撮ろうとしましたが、これがまたむつかしい。
肉眼では見えないから接写後に画像確認です。
これは辛うじて雌しべの柱頭3個と雄しべが8本確認で来ますね。

花粉を見たくて花を拡大すると右側の花被片に細かい斑点が見えました。
これは腺点というもののようです。
この花も雄しべは8本、花粉が出ています。

サクラタデは上から見ると5枚の花弁があるように見えますが、裏から見ると5深裂した萼であることがわかります。
萼片の裏面にも腺点があります。
腺点とは蜜、油、粘液などを分泌または貯めておく小さな点の ことだそうですが、まだ詳細はわかってないようです。

うっすらと腺点が透けて見える花被片が美しい。
右側は茎から花が出る部分を囲む苞。
拡大すると細かい点状です。これも腺点でしょうか。

サクラタデの葉は被針形で長さ5〜10cm。互性。
やはり腺点らしい小点が密にあり、辺縁や葉脈に短毛を認めます。

葉の表面は濃い緑色で光沢は無くしっとりしています。
拡大すると葉にも腺点があるようです。

葉の裏面、葉の外縁や葉脈に細かい毛が生えています。

節の外周を短い筒形の托葉が鞘状に囲んでいます。
これは托葉鞘といわれ、褐色の膜質で長い毛があります。

托葉鞘の形はタデ科の植物の鑑別に重要です。

サクラタデについて検索中にシロバナサクラタデという花があることを知りました( 学名:Persicaria japonica )。
さらにサクラタデの白花、シロバナサクラタデのピンクの花もあるそうで鑑別がややこしくなります。
これについては花の日記「シロバナサクラタデの覚書」に詳しい説明がありました。
シロバナサクラタデは花の直径がやや小さく5mm未満。花序の枝分かれが多い。
(サクラタデの花の直径は5mm以上、花序の枝分かれは1〜3本。柱頭の数は3個。)
異花柱花(長花柱花と短花柱花)ですが柱頭の数はふつう2個、ときに3個。
托葉の縁には長い毛があり、表面に伏毛もある。
決めては「節当りの花数が2〜3個ならばサクラタデ、4個以上であればシロバナサクラタデ」と。
でも節当りの花数とは何でしょう?
茎から葉が出るところが節、さらに花や根が出るところも節なのですね。
庭のサクラタデを見ると1節1花に見えます。???

この疑問は時間が解決してくれました。
サクラタデの花は花殻を残さず潔く散り、また節から次の花が現れたのです。
しかし花被は散っても短い花柄が残っているので花数を数えることができます。
下の写真では落花したはずの花がクモの糸でぶら下がり、下に花柄が残っていました。

これで1節2花です。花期の終わるまでに3花になるかもしれません。

花が散った後の花柄を数えると1節当りの花数がやはり2〜3個となりそうです。
新しい花柄は緑色、古い花柄は褐色です(画面をクリックすると大きくなります)。

これで大体わかったような気がします。
うちのサクラタデより細かい花が密集していればシロバナサクラタデを疑えばいいようです。
サクラタデの繁殖は主に匍匐茎によります。
匍匐茎を伸ばして根を出し株を増やしていきます。
下の画像は匍匐茎から出た新しい根毛が見えるように、クリスマスローズの葉を敷いて写しました。

花は咲き初めてもう1か月以上経ちますが、まだ果実を見ていません。
昆虫の訪問は多いのですが、ここにあるのは長花柱花ばかり、やはり結実し難いのでしょう。
文献的にはサクラタデの果実は長さ3~3.5mmの3稜形、黒色で光沢がない痩果。
シロバナサクラタデの果実は柱頭2個では長さ約2.5mmのレンズ状、柱頭3個のときは3稜形、黒食で光沢があるそうです。
シロバナサクラタデについてもなかなかさんのブログの「シロバナサクラタデ 異花柱花」・「シロバナサクラタデ 自家不和合性」で結実は一目瞭然です。
やはり一度、シロバナサクラタデの群落に出会いたくなりました。
桜蓼
タデ科 イヌタデ属の多年草
学名:Persicaria odorata
花期:9〜11月(当地)
分布:北海道・本州・四国・九州
6年前 六甲高山植物園で見て感激したサクラタデ。
花友さんのお蔭で昨年からうちの庭でもたくさん咲くようになりました。
ところがこの可憐な花をブログに載せようとすると、先ず写真が撮り難い。
ネット検索すればいろいろ疑問が出てきて、またまた初心者は悩みました。
今日はそれでも少々わかったつもりで記事にします。
誤りがありましたらどうぞお教え下さいますようお願いします。
サクラタデの茎は直立します。
草丈が50〜100cmになるので途中で倒れることもありますが、そこからまた垂直に伸びて開花します。

花序は1〜2本に分岐し、花穂が長くなると弯曲することもあります。

開いた花の直径は約8mm。
雌しべの花柱は3裂し、柱頭が3個づつ花被より長く突き出しています。

雄しべは8本、花被より低い位置にあります。
このように雌しべの方が雄しべより長い花を長花柱花といいます。
うちのサクラタデは全て長花柱花ですから、私はサクラタデは両性花だと思っていました。
ところがサクラタデには雄しべが長く雌しべが短い短花柱花もあるのだそうです。
そのため長花柱花を雌花、短花柱花を雄花とし、雌雄異種と記した文献もありました。
花*花・Floraのなかなかさんはこれに疑問をもち、サクラタデは両性花であることを3日連続のブログ 2006年11月14日 〜で明らかにされました。
しかし両性花であっても自花不和合性といって長花柱花あるいは短花柱花同志では結実しにくい性質があるそうです。そのため果実は少ないのですが結実は確認されています。

雄しべ8個が揃っている写真を撮ろうとしましたが、これがまたむつかしい。
肉眼では見えないから接写後に画像確認です。
これは辛うじて雌しべの柱頭3個と雄しべが8本確認で来ますね。

花粉を見たくて花を拡大すると右側の花被片に細かい斑点が見えました。
これは腺点というもののようです。
この花も雄しべは8本、花粉が出ています。

サクラタデは上から見ると5枚の花弁があるように見えますが、裏から見ると5深裂した萼であることがわかります。
萼片の裏面にも腺点があります。
腺点とは蜜、油、粘液などを分泌または貯めておく小さな点の ことだそうですが、まだ詳細はわかってないようです。

うっすらと腺点が透けて見える花被片が美しい。
右側は茎から花が出る部分を囲む苞。
拡大すると細かい点状です。これも腺点でしょうか。

サクラタデの葉は被針形で長さ5〜10cm。互性。
やはり腺点らしい小点が密にあり、辺縁や葉脈に短毛を認めます。

葉の表面は濃い緑色で光沢は無くしっとりしています。
拡大すると葉にも腺点があるようです。

葉の裏面、葉の外縁や葉脈に細かい毛が生えています。

節の外周を短い筒形の托葉が鞘状に囲んでいます。
これは托葉鞘といわれ、褐色の膜質で長い毛があります。

托葉鞘の形はタデ科の植物の鑑別に重要です。

サクラタデについて検索中にシロバナサクラタデという花があることを知りました( 学名:Persicaria japonica )。
さらにサクラタデの白花、シロバナサクラタデのピンクの花もあるそうで鑑別がややこしくなります。
これについては花の日記「シロバナサクラタデの覚書」に詳しい説明がありました。
シロバナサクラタデは花の直径がやや小さく5mm未満。花序の枝分かれが多い。
(サクラタデの花の直径は5mm以上、花序の枝分かれは1〜3本。柱頭の数は3個。)
異花柱花(長花柱花と短花柱花)ですが柱頭の数はふつう2個、ときに3個。
托葉の縁には長い毛があり、表面に伏毛もある。
決めては「節当りの花数が2〜3個ならばサクラタデ、4個以上であればシロバナサクラタデ」と。
でも節当りの花数とは何でしょう?
茎から葉が出るところが節、さらに花や根が出るところも節なのですね。
庭のサクラタデを見ると1節1花に見えます。???

この疑問は時間が解決してくれました。
サクラタデの花は花殻を残さず潔く散り、また節から次の花が現れたのです。
しかし花被は散っても短い花柄が残っているので花数を数えることができます。
下の写真では落花したはずの花がクモの糸でぶら下がり、下に花柄が残っていました。

これで1節2花です。花期の終わるまでに3花になるかもしれません。

花が散った後の花柄を数えると1節当りの花数がやはり2〜3個となりそうです。
新しい花柄は緑色、古い花柄は褐色です(画面をクリックすると大きくなります)。

これで大体わかったような気がします。
うちのサクラタデより細かい花が密集していればシロバナサクラタデを疑えばいいようです。
サクラタデの繁殖は主に匍匐茎によります。
匍匐茎を伸ばして根を出し株を増やしていきます。
下の画像は匍匐茎から出た新しい根毛が見えるように、クリスマスローズの葉を敷いて写しました。

花は咲き初めてもう1か月以上経ちますが、まだ果実を見ていません。
昆虫の訪問は多いのですが、ここにあるのは長花柱花ばかり、やはり結実し難いのでしょう。
文献的にはサクラタデの果実は長さ3~3.5mmの3稜形、黒色で光沢がない痩果。
シロバナサクラタデの果実は柱頭2個では長さ約2.5mmのレンズ状、柱頭3個のときは3稜形、黒食で光沢があるそうです。
シロバナサクラタデについてもなかなかさんのブログの「シロバナサクラタデ 異花柱花」・「シロバナサクラタデ 自家不和合性」で結実は一目瞭然です。
やはり一度、シロバナサクラタデの群落に出会いたくなりました。
2014-10-29 12:47
コメント(14)
サクラタデのことは調べれば調べるほど訳が分からなくなってそのうち頭が混乱してどうしようもなくなってきます
夕菅さんは資料を詳しく検討されてすごいです
名前が示すようにとにかく美しいと思います!
ほかのタデの花とは一線を画してきれいさが抜き出ているなと思いながら眺めるのですが・・・
数は少なくて毎年見られるというわけでもないです~
ピンク色も白花も群落をなしていたら素晴らしい光景でしょうね!!!
by とんちゃん (2014-10-29 14:54)
とんちゃん 早速のコメントありがとうございました。
偶然にもとんちゃんの「タデざかり」の記事は昨年の10月29日!
見た事がないようなタデをいくつも見せていただきましたね。
お察しの如くこのところ私はサクラタデの迫力に溺れていました。
疲れてもう果実まで見届ける余裕がなく、「はい、ここまで」です。
「花紀行」にもコメントをお送りできなくてごめんなさい。
by 夕菅 (2014-10-29 18:22)
とても参考になりました。
すごいレポートですね。
当方ではサクラタデはめったに見られないのですが、またどこかで出会いたいと思っています。花が大きくて綺麗ですよね。
by 多摩NTの住人 (2014-10-30 07:58)
サクタタデは雌雄異株と普通は書かれているのですが、両性花で自家不和合成があることを初めてしりました。シロバナサクラタデもそうでしょうか。こちらではサクラタデは田の畦に一度見たきりで、絶滅してしまったようです。シロバナサクラタデは比較的多かったのですが、年々減っています。残念なことが多いです。
by エフ・エム (2014-10-30 09:27)
夕菅さんからいただいて、どんどん面積を広げています。あちこち嫁にもだしました。皆さんから、うれしい開花の便りもいただきます。
風に揺れる様は、本当に美しい。こうした写真を見せていただくと、その美しさはタデ科の中で際立っていますね。雌雄異株と書かれていますが、両性花なんですね。
大事に育て、守っていきたい花です。
そろそろ花期も終わりに近づいて、、、、でも間に合いました。
今朝ゆっくり眺めることが出来ました。
by 花咲かばあば (2014-10-30 09:57)
多摩NTの住人 さん コメントありがとうございました。
やはりこんなに美しい野草は盗掘されてしまうのでしょうか。
この辺りではシロバナサクラタデも見た事がなく、ボントクタデやミゾソバさえ激減しています。
その流れの末、サクタタデは山野草の好きな方のお庭で大事にされているようですが、公園には是非群生させてほしいですね。
by 夕菅 (2014-10-30 10:24)
エフ・エム さん コメントありがとうございました。
まだ図鑑やHPには屢々「サクタタデは雌雄異株」と書かれていますね。
うちの花は雌しべが目立つので両性花と思い込んでいましたが、雄しべが長い短花柱花もあり、共に自家不和合性があることは全く知りませんでした。シロバナサクラタデも同じです。
この頃学名を記載するのですが、シロバナサクラタデはPersicaria japonica と明らかなのに、サクタタデについては様々に記載されていて決められませんでした。
サクタタデやシロバナサクラタデは野の花としてずっと残ってほしいですね!
by 夕菅 (2014-10-30 11:07)
花咲かばあば さん コメントありがとうございました。
今日は仕事が休みですし、やっとサクラタデの呪縛を逃れてほっとしています(笑)。
うちで絶えそうになったサクラタデが花咲かばあばさんのお庭で元気になって、また里帰りさせていただいたこと、とても感謝しています。
但し今、近くの矮性サルスベリからカイガラムシが伝染し、1株処理しましたが、要注意と思っています。
どうぞお庭のサクラタデは残しておいて下さいね。
いつも花だけ見てればいいのに、余分なことをしては苦しんでいます。
困った性分ですね。
by 夕菅 (2014-10-30 11:16)
何て! 何て! 何て!
と、びっくりしながら読んでいきました。
ただ写していた庭のサクラタデに、こんな秘密があるのかと、
感心するばかり。
植物の世界は奥深いと、いつも勉強になります。
サクラタデの淡いピンクがよく撮れていますね!
by 703 (2014-10-30 23:38)
夕菅さん、こんばんは
リンクありがとうございました。詳しく写真にされているのでとてもわかりやすかったです。もしよかったら、私のブログからメールしてください。コメント欄には書けないなんしょ話しましょ v(^^*)
by panda (2014-10-31 01:53)
703さん コメントありがとうございました。
サクラタデは風の通る庭にも屢々登場していますね。
共にサクラタデが好き、めでたしめでたし!
サクラタデもマクロレンズを通すといろいろ秘密が見えてきました。
こんなやさしい花なのにむつかしかった!
それぞれの庭でたくさん殖えるといいですね。
by 夕菅 (2014-10-31 18:03)
panda さん コメントありがとうございました。
花の日記の記事を読ませていただいていろいろわかってきました。
でも「1節2〜3花」が素人にはわからなくて焦りました。
その後の記載は皆さんにはくど過ぎたかなと反省しています。
畏れ多くも後程メールさせていただいます。またいろいろ教えて下さい。
by 夕菅 (2014-10-31 18:16)
庭ではピンクのサクラタデがシロバナサクラタデに押されて消えてしまいました。
里子に出した実家の庭では元気にしているので、また里帰りしてもらうつもりです。
やはり両方あった方が楽しいですから。
我が家のシロバナサクラタデが短花柱花と知って、種があるかと探すのですが、いまだに一個も見つけられません。
こちらのサクラタデでは種は確認されていますか?
はなびらの点は腺点なのですね。知らなければ単にそういう質感の花弁なのかと思ってしまいます。
全身全霊で虫を呼んでいるのですね、けなげです。
by とんとん (2014-11-09 16:17)
とんとんさん コメントありがとうございました。
お庭の美しいシロバナサクラタデを2012年に見せていただきましたね。
ピンクと白と揃うとより良いと思いますが、うちのサクラタデも里帰りさせてもらった苗、またカイガラムシに負けそうで心配です。
(12枚目の托葉鞘の画像の葉腋にも白い病変が写っていました。)
種子はあちこち探したのですが眼が悪いのか見つからず、半ばあきらめています。
腺点は読んでからそれらしきを撮ったもので、初め見たときは気付きませんでした。
by 夕菅 (2014-11-09 20:45)