ヒメフウロ [草花(初夏)]
ヒメフウロ
姫風露
フウロソウ科フウロソウ属の一年草または越年草
学名: Geranium robertianum L.
別名 : シオヤキソウ
昨春、花友 I さんのお庭に繁っていたヒメフウロを分けていただきました。
今年も咲いたので、「日陰に咲く花 2014」に記載するつもりでしたが、調べると次々に疑問が浮かび後回しになりました。
実はヒメフウロは日本では伊吹山、鈴鹿山脈、養老山地および四国の剣山の石灰岩山地にだけ生え、絶滅が懸念される植物だったのです。
ところが最近では同じような花が日本各地の路傍に生えて繁殖しているそうです。そしてそれらは自生のヒメフウロではなく、北半球に分布する ヒメフウロ Herb Robert が帰化したものらしいのです。
近くへ行くとほわーっと微かに独特の匂いがします。塩を焼く匂いに似ているといわれ、「シオヤキソウ」という別名があります。
花の直径は15mm前後。淡いピンクの可憐な5弁花です。
花弁にはやや濃いピンクの帯が2本づつ放線状に流れています。
雄しべは5本?
午前中の花には5個未開の葯があるものが多く見られました。
しかし雄しべは10本でした。
花弁にⅠ本づつ未開の雄しべが並び、中央には葯が開いた雄しべが5本集っています。
雌しべは確認できませんから雄性先熟といえるでしょう。
自生のヒメフウロと園芸種のヒメフウロは形態的に区別できるのでしょうか。
検索してみましたが鑑別点を明記した資料は見つかりません。
しかしwikipediaのヒメフウロの画像では伊吹山のヒメフウロには未開の雄しべ10本の中央に5裂した雌しべがあるように見えました。
追記 「そよ風のなかで」の伊吹山のヒメフウロの画像でも開花直後の画像中央に星形のメシベが見えています。リンクをお願いした際、そよ風さんもこれが自生種と帰化種とを分けるポイントかもしれないとお伝え下さいました。
伊吹山のヒメフウロの雌しべに関しては同じような画像がその他にも3枚見つかりました。
これが自生種と帰化種との違いかどうか、まずはうちの帰化種について雄しべの葯が開く前の花を確認する必要があります。
早起きして何とか10個の葯が未開の開花直後の花が撮れました。
しかし、やはり柱頭は確認できませんでした(5月24日6時44分写)。
同じ花を観察し続けるゆとりはありませんので撮り貯めた画像を順に並べてみます。
この花では3本の雄しべから花粉が出ていました(5月23日7時22分)。
午前中の観察ではこのように5本開いた花がよく見られます。
この中央の葯は未開でしょうか(14時40分)。
同じような画像がwikipediaのヒメフウロの画像にもあります。
昆虫も訪れています。
ヒメフンバエでしょうか? それともキアシフンバエ?
3本未開ですが昆虫が荒らしたのか、花粉は殆ど飛び散っています。
後1本。
葯が開くとその勢いで雄しべは中央に直立します。
雄しべ10本勢揃い。
花粉が落ちると花糸の間から雌しべが現れました。
雌しべの先端は5裂してくるりと卷いています。
雌しべが現れる頃、花弁が脱落し易いように萼が開きます。
花弁が落ちる頃には5裂した雌しべの柱頭が星印のように見えます。
花弁が落ち、花粉を付けた雌しべが君臨。
萼は特に毛深くて長い毛が生えています。
萼は再び閉じて子房を守ります。
果実は成長に伴って左のように長く伸びます(約2cm)。
5個の種子が熟した果実。
萼が開いてほぼ完熟です。
左は萼が開いて種子が飛んだ後。
朝日百科「世界の植物」3-165 にはヒメフウロについて、「蒴果は、成熟後に花柱嘴の裂片が1つづつはずれて、糸でぶら下がるという変わり者である」と書いてあります。
そのような状態を見たいと思い、翌日見に行きました。
ところが前夜の強風にあおられて脱落したのか、もう種子はありませんでした。
また脱落して行方不明にならないように熟した果実を2個採取しました。
翌日室内でその果実を見ると、種子がありません。
しかしよく見ると1果にⅠ個づつ、種子が細い糸でぶら下がっていました。
採取後、手で握ってきたつもりでしたが落としてしまったのでしょうか。
撮った画像の中に、ピンぼけながら種子が1個果実の先端についているらしい姿が写っているものが見つかりました。
ゲンノショウコの果実のような神輿像を想像しましたが、再確認しても種子がぶら下がった果実は見つかりません。
葉は対生し深く3裂していますが5裂することもあるようです。
葉と茎も細かいせん毛に覆われ、葉の端が赤みを帯びたり、紅葉することもあります。
これは本日訪れた花友1さん宅の日向の庭の1株です。
美しい紅葉に驚きました。
但しここでも糸でぶら下がった種子は見つかりませんでした。
自生種のヒメフウロと帰化種のヒメフウロの形態的違いはないのでしょうか。
これを確認したくて画像検索した結果、開花直後の花の中央に自生種では星形の雌しべが見え、帰化種では見えないように思えました。
さらに自生種の開花直後の花の雌しべの状態を自分で確認できるといいのですが、私には無理なようです。
またはじめ蒴果のぶら下がりは自生種にのみあるのかと思いましたが、ネット上では画像を確認できず、計らずもこの庭の果実2果に1個づつそれらしき種子が見つかりました。
まだ未成熟の果実がありますから続いて観察することにします。
追記1:ヒメフウロ・ヒメフウロソウの名前でErodium属の園芸種も流通しています。
ただしこの園芸種は葉が円く鑑別容易です。
しかし紛らわしいため、この庭のヒメフウロは帰化種と記載しました。
(このところパソコントラブルのためネットに接続できず更新が遅れました。)
追記2:ヒメフウロの果実について2014.6.8.の記事にしました。
http://yuusugenoniwa.blog.so-net.ne.jp/2014-06-08
姫風露
フウロソウ科フウロソウ属の一年草または越年草
学名: Geranium robertianum L.
別名 : シオヤキソウ
昨春、花友 I さんのお庭に繁っていたヒメフウロを分けていただきました。
今年も咲いたので、「日陰に咲く花 2014」に記載するつもりでしたが、調べると次々に疑問が浮かび後回しになりました。
実はヒメフウロは日本では伊吹山、鈴鹿山脈、養老山地および四国の剣山の石灰岩山地にだけ生え、絶滅が懸念される植物だったのです。
ところが最近では同じような花が日本各地の路傍に生えて繁殖しているそうです。そしてそれらは自生のヒメフウロではなく、北半球に分布する ヒメフウロ Herb Robert が帰化したものらしいのです。
近くへ行くとほわーっと微かに独特の匂いがします。塩を焼く匂いに似ているといわれ、「シオヤキソウ」という別名があります。
花の直径は15mm前後。淡いピンクの可憐な5弁花です。
花弁にはやや濃いピンクの帯が2本づつ放線状に流れています。
雄しべは5本?
午前中の花には5個未開の葯があるものが多く見られました。
しかし雄しべは10本でした。
花弁にⅠ本づつ未開の雄しべが並び、中央には葯が開いた雄しべが5本集っています。
雌しべは確認できませんから雄性先熟といえるでしょう。
自生のヒメフウロと園芸種のヒメフウロは形態的に区別できるのでしょうか。
検索してみましたが鑑別点を明記した資料は見つかりません。
しかしwikipediaのヒメフウロの画像では伊吹山のヒメフウロには未開の雄しべ10本の中央に5裂した雌しべがあるように見えました。
追記 「そよ風のなかで」の伊吹山のヒメフウロの画像でも開花直後の画像中央に星形のメシベが見えています。リンクをお願いした際、そよ風さんもこれが自生種と帰化種とを分けるポイントかもしれないとお伝え下さいました。
伊吹山のヒメフウロの雌しべに関しては同じような画像がその他にも3枚見つかりました。
これが自生種と帰化種との違いかどうか、まずはうちの帰化種について雄しべの葯が開く前の花を確認する必要があります。
早起きして何とか10個の葯が未開の開花直後の花が撮れました。
しかし、やはり柱頭は確認できませんでした(5月24日6時44分写)。
同じ花を観察し続けるゆとりはありませんので撮り貯めた画像を順に並べてみます。
この花では3本の雄しべから花粉が出ていました(5月23日7時22分)。
午前中の観察ではこのように5本開いた花がよく見られます。
この中央の葯は未開でしょうか(14時40分)。
同じような画像がwikipediaのヒメフウロの画像にもあります。
昆虫も訪れています。
ヒメフンバエでしょうか? それともキアシフンバエ?
3本未開ですが昆虫が荒らしたのか、花粉は殆ど飛び散っています。
後1本。
葯が開くとその勢いで雄しべは中央に直立します。
雄しべ10本勢揃い。
花粉が落ちると花糸の間から雌しべが現れました。
雌しべの先端は5裂してくるりと卷いています。
雌しべが現れる頃、花弁が脱落し易いように萼が開きます。
花弁が落ちる頃には5裂した雌しべの柱頭が星印のように見えます。
花弁が落ち、花粉を付けた雌しべが君臨。
萼は特に毛深くて長い毛が生えています。
萼は再び閉じて子房を守ります。
果実は成長に伴って左のように長く伸びます(約2cm)。
5個の種子が熟した果実。
萼が開いてほぼ完熟です。
左は萼が開いて種子が飛んだ後。
朝日百科「世界の植物」3-165 にはヒメフウロについて、「蒴果は、成熟後に花柱嘴の裂片が1つづつはずれて、糸でぶら下がるという変わり者である」と書いてあります。
そのような状態を見たいと思い、翌日見に行きました。
ところが前夜の強風にあおられて脱落したのか、もう種子はありませんでした。
また脱落して行方不明にならないように熟した果実を2個採取しました。
翌日室内でその果実を見ると、種子がありません。
しかしよく見ると1果にⅠ個づつ、種子が細い糸でぶら下がっていました。
採取後、手で握ってきたつもりでしたが落としてしまったのでしょうか。
撮った画像の中に、ピンぼけながら種子が1個果実の先端についているらしい姿が写っているものが見つかりました。
ゲンノショウコの果実のような神輿像を想像しましたが、再確認しても種子がぶら下がった果実は見つかりません。
葉は対生し深く3裂していますが5裂することもあるようです。
葉と茎も細かいせん毛に覆われ、葉の端が赤みを帯びたり、紅葉することもあります。
これは本日訪れた花友1さん宅の日向の庭の1株です。
美しい紅葉に驚きました。
但しここでも糸でぶら下がった種子は見つかりませんでした。
自生種のヒメフウロと帰化種のヒメフウロの形態的違いはないのでしょうか。
これを確認したくて画像検索した結果、開花直後の花の中央に自生種では星形の雌しべが見え、帰化種では見えないように思えました。
さらに自生種の開花直後の花の雌しべの状態を自分で確認できるといいのですが、私には無理なようです。
またはじめ蒴果のぶら下がりは自生種にのみあるのかと思いましたが、ネット上では画像を確認できず、計らずもこの庭の果実2果に1個づつそれらしき種子が見つかりました。
まだ未成熟の果実がありますから続いて観察することにします。
追記1:ヒメフウロ・ヒメフウロソウの名前でErodium属の園芸種も流通しています。
ただしこの園芸種は葉が円く鑑別容易です。
しかし紛らわしいため、この庭のヒメフウロは帰化種と記載しました。
(このところパソコントラブルのためネットに接続できず更新が遅れました。)
追記2:ヒメフウロの果実について2014.6.8.の記事にしました。
http://yuusugenoniwa.blog.so-net.ne.jp/2014-06-08
2014-05-25 23:42
コメント(14)
ヒメフウロですね!
高山植物!って思っていたのですが帰化植物園にもありました。
多分園芸種のヒメフウロなのだと思っていますが・・・
蒴果は糸でぶら下がる?面白いですね~
丁度その瞬間に立ち会えることができればもしかして・・・ということになるかもしれないですね。
雄しべも雌しべもきれいですね
ほかのフウロソウの仲間も大好き! この美しさには心奪われます!
まだまだ咲いてきそうですからそのうちスクープゲットできるかもしれない!!!
by とんちゃん (2014-05-26 15:15)
ふーーーむ!
単純にヒメフウロと覚えたその花が、
こんなに複雑な、未解明の部分を秘めているとは!
またしても夕菅さんに植物の世界の奥深さを垣間見させてもらいました。
今後の探究を楽しみに待っています。
うちのヒメフウロはどんなか、せめて老眼鏡を持って見に行きましょう(笑)
by 703 (2014-05-26 17:12)
とんちゃん コメントありがとうございました。
私は逆に路傍の帰化植物と思っていましたのに貴重な高山植物と知って驚きました。
DNAの違いはあるのでしょうが、形態のどこかに相違点がないかと検索を試みました。
もう少し果実が熟すのを待つべきですが、皆さんにも探していただけるかと思って慌ててアップしました。
花壇ではもっと大きい園芸種の青いフウロソウが優雅に咲いています。
by 夕菅 (2014-05-26 17:43)
703さん コメントありがとうございました。
今日は淡路も雨でしょうね。こちらはお昼位から降り始めました。
可愛い花で終わればよかったのに、何故?と思い始めると深みに嵌るという困った性分のようです。
でもここでもうお手上げ。あとは皆さんお願いしま〜す。
老眼鏡が要らない方でも虫メガネが要りそうですね。
by 夕菅 (2014-05-26 18:22)
こんにちは。
園芸種ではよく見る花ですね。
在来種との違いなど考えてもいませんでした。
とても勉強になりました。
当方の野山で見られるのは、アメリカフウロしかありませんね。
by 多摩NTの住人 (2014-05-27 08:12)
多摩NTの住人 コメントありがとうございました。
昨夜そよかぜさんにメールでお尋ねし少々追記しました。
どうも伊吹山の自生種には開花直後に雌しべが見えるようです。
この庭の帰化種は雄性先熟ですが繁殖力旺盛なようですから、もう少し観察してみます。
by 夕菅 (2014-05-27 08:25)
わが家のヒメフウロは数年前、どこからか勝手に庭に入り込んできたものでした。その後毎年、やはり勝手に種子を散し、勝手に広がっています。世話のやけない草ですが、もう少し遠慮してもらいたいところです。しかし、夕菅さんのような観察はしたことがありませんでした。すばらしいです。
興味のあるのは、在来種がなぜ山の石灰岩地に限定して生えるのかです。誰か比較研究してくれるといいのですが。
by エフ・エム (2014-05-27 19:34)
帰化種があるのですか!
詳しく観察して、区別できる点がわかると面白いですね。
私は、白花シオヤキソウをいただいてとても気に入っていますが、
こんなに丈夫で増えやすいのに絶滅危惧?と不思議に思っていました。帰化種かもしれません。
二年前、カナダでたまたま見た中にシオヤキソウっぽいものがあって、あれっと思いました。
http://blog.goo.ne.jp/sunroom2007/e/cea6477b7e0ad0e92193c560efea1785
ネットで見るHerb Robertみたいですね。
by ミセスサニー (2014-05-27 21:09)
エフ・エム さん コメントありがとうございました。
検索で出てきましたから、「小さな庭に ー 春から初夏へ(2)
(2007)」と「帰ってきたヒメフウロ2008/05/」も拝読しました。
検索中、開花直後の雌しべと雄しべが自生種と帰化種とで異なるように思えましたが、違いを指摘する文献は見つかりませんでした。
自生種が山の石灰岩地に限定して生えるのも本当に不思議ですね。
by 夕菅 (2014-05-27 21:35)
帰化種のヒメフウロでしたか。植物の奥深さ、不思議さをまた見せていただきました。16年前、仙台から引っ越して来るときに、近所の庭で咲いていたものを一株いただいてきたものです。
今、あちこちの花友達の庭に。うちの庭から勝手に隣の庭にまで浸食、少々やっかいに思うほどの旺盛さです。
シオヤキソウの別名、匂いはいいとはいえないですね。
拡大鏡を持ってゆっくり観察して楽しみました。
by 花咲かばあさん (2014-05-27 21:55)
ミセスサニー さん コメントありがとうございました。
白花もあるのですね。知りませんでした!
さらに清楚でかわいいこと!
白花もうちの庭の帰化種と同じ咲き方のようです。
でもいわゆる園芸種の円い葉の白花も「白花ヒメフウロ」として販売されているようですから要注意ですね。
by 夕菅 (2014-05-27 22:33)
花咲かおばさん コメントありがとうございました。
この花は仙台から来たのですか。
この辺りではまだ見たことがなかったから、北海道からのものかもしれませんね。
北海道ではブルーリスト B です。
「北海度外来種データベース」には次のようにありました。
原産地 ヨーロッパなど
導入年代 戦後
初報告 原(1992)札幌の植物
全国分布 北海道、本州(千葉県、神奈川県、山口県)
by 夕菅 (2014-05-28 00:10)
可愛い花なので、庭に植えていたのですが、いつの間にか消えてしまいました。
実生苗のはずですが、それが園芸品だったのか在来だったのか判然としません。
もし在来なら惜しいことをしました。
空き地に綺麗に群生しているところを見ますが、それは外来のものなのでしょう。
雄蕊が10本あったことなどいろいろな様子に全く気付きませんでした。お恥ずかしい。
よ~く観察するといろいろなことが分かってきますね。
今後の参考にさせていただきます。
一度送信したのですが消えていたので、もう一度書き込みました。
確かめて良かった。^^
by とんとん (2014-05-28 21:35)
とんとんさん コメントありがとうございました。
昨年2株いただいて2カ所に植えたのですが、1カ所は消滅、日陰の方は数株になりました。
資料では「一年草または越年草」とありましたが、この辺りではブルーリストに載るほど強い繁殖とも思えません。
ヒメフウロに取り憑かれている間に、他の初夏の花々の晴れ姿を取り損ねてしまいました(笑)。
by 夕菅 (2014-05-28 23:49)