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シデコブシ [花木(春)]

シデコブシ
  四手辛夷、四手拳、幣辛夷。
  モクレン科モクレン属の落葉小高木。
 別名:ヒメコブシ
 学名:Magnolia stellata  (M. tomentosa )

シデコブシはこの庭に植えて30年以上になりますが、あまり大きくなりません。
花はいつも蕾のうちからヒヨドリに食べられてしまい、無傷の花を見ることは稀でした。
今年は比較的ヒヨドリが少なく、久しぶりに花を撮ることが出来ました。

シデコブシは日本固有の樹木で東海3県の丘陵の湿地にのみ自生し、平成24〜25年の環境省レッドリストでは準絶滅危惧(NT)に分類されています。
一方、栽培された苗木が販売されているため各地の庭や公園に植えられています。
2014.3.29.
シデコブシ0329wb.jpg

シデコブシのシデとは四手。
四手は神事で玉串やしめ縄に垂らす木綿もしくは紙のことです。
この頃は和紙に切れ目を入れてひらひらと垂らしますね。
白い花弁が四手を連想させたのでしょう。
シデコブシ-19wb2.jpg

晴れた空に輝く満開のシデコブシ。
シデコブシ11-3wb2.jpg

さかのぼって花の経過を見てみます。
3月中旬、枝に冬芽が膨らんできています。
下の大きいのは花芽、上の小さいのが葉芽です。
シデコブシ蕾100311wb.jpg

4月1日、いよいよ開花です。
軟毛が密生した托葉の間から花弁が弾けるように伸び出します。
シデコブシの花は白から淡いピンクさらに淡紅色まで様々ですが、この庭のは淡紅色です。

シデコブシ蕾15wb.jpg

淡いピンクの花弁が開き出しました。
シデコブシ背9wb.jpg

花弁は10〜20枚くらい。
小さい萼片もあるそうですが、確認はむつかしいようです。
シデコブシ11-2wb.jpg

咲き初めはことに美しい。
「四手辛夷」、良い名前をつけてもらったものと思います。
シデコブシ070322wb2.jpg

シデコブシはモクレンと同じく雌性先熟の両性花です。
これは雌性期。
真ん中の雌蕊のピンク色の柱頭が横に突き出し、まわりを未熟な葯が囲んでいます。
( 残念ながらピンぼけですが、画面をクリックすると少し大きくなります。)
シデコブシ070327wb2.jpg

移行期(雌性期→雄性期)。
雌しべの柱頭はもとの位置に戻って芯に張り付くようになります。
まわりのへら形の葯が大きくなって膨らんでいます。
シデコブシ0327蕊wb.jpg

雄性期。
へら状の葯が横に突き出し始めました。
まもなく葯の両側の隙間から花粉が出るのです。
シデコブシ070329wb.jpg

後姿。冬芽の外側にあった鱗片葉がまだ付いています。
シデコブシ背8wb2.jpg

やっぱりヒヨドリが来て花弁を食べてしまいました。
シデコブシ鳥-23wb.jpg

下の方の緑色のを付けた所が食べられた花です。
後の太い樹は同じ頃植えられた赤花のヤマボウシ。
シデコブシ14wb.jpg

花の色は咲き進むにつれて淡く白っぽくなります。
シデコブシ終wb.jpg

これも鳥についばまれた花。太い幹から直接出た小枝に一花。
周りには花芽ではなく葉芽がニョキニョキ出ています。
4月3日。
シデコブシ芽-22wb.jpg

カメラの角度が違いますが同じ幹の画像です。
花は花弁が散って幼い果実になり、葉芽は赤っぽい若葉になっていました。
4月20日。
シデコブシ若葉wb.jpg

華奢な花とは対照的に大きな毛虫かと思うほど器量の悪い果実です。
この庭ではまだ赤い実をつけた拳のような果実が出来たことはありません。
雌性優先ですから受精しにくいいのでしょうか。
シデコブシ花後wb.jpg

牧野富太郎博士は花が淡紅色で全体に小型のものをシデコブシの変種として、ベニコブシ(紅辛夷)Magnolia stellata var. keiskei と命名されました。
この定義によればこの株はベニコブシということになります。
一般には白から淡紅色の花まで全てをシデコブシとし、販売される苗木を「ヒメコブシ」とすることが多いようです。
同じ樹に咲く花でもピンクの濃淡は様々ですし、樹形の大小を決めるのもむつかしく、やはりすべてをシデコブシと纏めた方がわかりやすそうです。


コメント(18) 

コメント 18

703

空の水色に、ピンクが映えていますね。
うちにもピンクのシデコブシがあって、好きなのですが、
植えた場所が家と家との隙間。
北の日陰なので、上に上に伸びて大きくなります。
屋根を越すと下は完全日陰。そうなったら太い幹をノコギリで挽きます。
2回そうしましたが、また少し大きくなりました。3年目の来春は咲くかな?

by 703 (2014-04-24 20:20) 

エフ・エム

白花のシデコブシは近所のコブシの街路樹に交じっていますが、シデコブシとは気付かれない様子です。ピンクのシデコブシは白花とはまた雰囲気が異なりますね。これならうら若き乙女みたいで、目を惹き付けると思います。
ところで、以前、日本の絶滅危惧種についてBBCニュースを読んで記事にしたことがありましたが、そのニュースに、2007年にM. stellataがVUからNTに降格したと書いてあったのを思い出しました。危惧レベルの昇格が多い中で、これはいい方のニュースでした。
by エフ・エム (2014-04-24 21:14) 

夕菅

703さん コメントありがとうございました。
うちのもだんだん上に伸びて花が咲くので、花の撮影が難しくなります。
それにしても703さんのところのシデコブシはなんかかわいそうですね。
検索して2012.3.30の花をもう一度見せて頂きました。
うちのより花の形がいいようです。来年は咲きますように!

来年は花が見られるといいですね。
by 夕菅 (2014-04-24 23:07) 

夕菅

エフ・エムさんコメントありがとうございました。
コブシと白花のシデコブシとはとてもよく似ていますね。
その目でみないと気付かないかもしれません。
レッドリストに関してはシデコブシは初版(1991)レッドリストでは絶滅危惧Ⅱ類(VU)に指定。
その後見直しの結果、第2次2006-2007年発表のレッドリストからは準絶滅危惧(NT)に指定されています。
最新の第4次レッドリスト(2012)でも同じですから、無謀な開発が見直されたのかもしれませんね。
by 夕菅 (2014-04-25 00:10) 

とんちゃん

シデコブシってヒヨドリに好まれているのですね~
つぼみのうちから楽しみに狙っているのかしら・・・
優しいピンク色できれいですね
自然界で雌しべの役割 次には雄しべの役割 せっせと励んで次につなげるわけですね~
果実になろうとしているときからごっつくてユーモラスです!
まだあの奇妙な果実ができたことがないのですか!
太い幹から直接枝が出ているなんて~まだこういうのは見たことないです。
気づいていないだけかもしれないので注意して見てみたいです!
by とんちゃん (2014-04-25 14:26) 

夕菅


とんちゃん コメントありがとうございました。
春の花木を書いた時シデコブシも入れようかと思ったのですが、画像が多くなり過ぎるのであとにしました。
ところがこのところ多忙で疲れて夜は眠い、その上いざとなると良い写真がない、もう花はないから撮り直しできない、焦りました(笑)。
ハクモクレンは果実ができるのですが、シデコブシではまだ見ていません。今年こそはと待ってみます。
太い幹から小枝が出るのはウメの老木でよく見ます。数えればこのシデコブシも小柄でも老木かもしれません。

by 夕菅 (2014-04-25 15:59) 

多摩NTの住人

シデコブシは何ヶ所かで見たことがありましたが、東海3県の自生種だったのですね。
またひとつ勉強させていただきました。
by 多摩NTの住人 (2014-04-27 16:53) 

夕菅

多摩NTの住人 さん コメントありがとうございました。
岐阜県の東濃・中濃地域、愛知県尾張・三河・渥美地域、三重県北勢地域にはシデコブシのほかにも東海丘陵要素と呼ばれるヒトツバタゴやハナノキが自生しています。
30年前の庭造りの時この3種を植えるとよかったのですが、当時は全く知識がなく後の祭りです。
by 夕菅 (2014-04-27 18:10) 

福島の草花

我が家のシデコブシも終わってしまい、最後の写真のように、まさに毛虫のような果実が沢山できています。
そして同じようにヒヨドリの襲撃を受けまして、毎朝花びらが地面の上に・・・(泣)
梱包用の紐を張り巡らしたり、CDをぶら下げたり、それでもダメでした。
何とか、ヒヨドリを防ぐいい方法が無いものかと・・・

何時も写真が素敵ですね!!
by 福島の草花 (2014-04-28 21:19) 

夕菅

福島の草花さん コメントありがとうございました。
こちらのシデコブシは3月下旬に咲き始め4月上旬には終わってしまいましたが、記事にするのが遅れました。
福島の草花さんのお庭でもヒヨドリに泣かされていらっしゃるのですね。
私も昨年は糸を張ろうかと思いましたが、こじんまりとはいっても高い所は3m弱、作業がたいへんであきらめました。
かってヒヨドリと知恵比べをしましたが、体力共々負けました(笑)。
http://yuusugenoniwa.blog.so-net.ne.jp/2013-03-06

by 夕菅 (2014-04-28 23:49) 

福島の草花

ヒヨドリの写真、スゴイですね~!!!

昔 東京でマンション住まいのとき、ベランダに何時もメジロが二羽遊びに来てくれ、
部屋から至近距離で、何枚も写真を撮ったのを思い出しました。
こちらには、一度も姿を現しません。 郡山には沢山居るのに・・・

さてクラブの件、こちらでご紹介。
「山野草を楽しむ」 http://homepage3.nifty.com/gozu/ から
「山野草談話室」に入ります。 北海道から、四国方面の方まで、ずいぶん昔から続いているようです。

覗いて見られると良いかもですね。 新潟の方が主宰されています。
しかし、夕菅さんもスゴイですね!! 学校の先生に教わるような・・・
私のように、単に好きなだけとは大違い。 反省してます。(笑)

by 福島の草花 (2014-04-29 09:34) 

夕菅

福島の草花 さん またご覧いただいてありがとうございました。
このヒヨドリはほんとうに頭のいい体操選手でしたよ(笑)。
そして「山野草を楽しむ」HP、ご紹介ありがとうございました。
談話室もあって会話がはずんでいるようですね。
これからもお訪ねさせていただきます。
ただし、私も花を楽しみ、少しネット検索して、備忘録としてブログに書いているだけの素人です。間違いもたくさんありますのでどうぞ教えて下さいね。

by 夕菅 (2014-04-29 17:51) 

花咲かばあさん

青空にシデコブシが美しいですね。大木になると花の様子を見るのがむつかしいですが、じっくり見せていただきました。
暮れに剪定された固い蕾の枝をいただきました。開花は無理だろうとは思いましたが、花瓶に挿しておいたところ、部屋では2月初めに、外の甕では3月末にすべての蕾が開花しました。
水揚げのよい元気な花木ですね。

我が家の近くの山に自生のシデコブシを何本も見ることができます。
今年も楽しみました。その近くには毎年コバイケイソウもショウジョウバカマも咲いて、春の訪れを楽しみます。
そんな中今年初めて、オオイワカガミの群生地を教えていただきました。白色,薄いピンク、少し赤の強いピンクと光輝く葉と優しげな花を堪能しました。
うれしい春でした。

by 花咲かばあさん (2014-04-30 19:26) 

夕菅

花咲かおばさん コメントありがとうございました。
蕾がついたシデコブシを枝毎切るなんて、うちの樹では勿体なくてできません。よほど育ちが良い木なのでしょう。
でも水揚げよく室内でゆっくり花を楽しめたとは幸いでしたね。
お近くで自生のシデコブシやオオイワカガミの群生を見られたとはまた素晴らしい!ヒトツバタゴやハナノキもあるかもしれませんね。

by 夕菅 (2014-04-30 22:38) 

リンちゃんママ

シデコブシ私にははじめて知った綺麗な花です。自生のものは絶滅危惧とか。そんな珍しい木が花を咲かせお庭にあるなんて良いですね。小鳥たちもいっぱいお花見に来てお腹も膨らませていくのですね。時系列で蕾から花が咲いてとてもわかりやすい写真に感動です。果実がもう少し可愛らしいと花とイメージが合うのにと思います。
by リンちゃんママ (2014-04-30 23:31) 

花咲かばあさん

早速、コメントありがとうございました。はい、近くにヒトツバダコ(ナンジャモンジャ)の自生があります。もう何年も訪ねてはいませんが
その株もとにカザグルマを見つけてびっくりしました。
ヒトツバダコはこの地では街路樹になっています。開花ももうすぐですね。ハナノキの自生は見たことはありませんが、公園に植えられています。花木も次々に開花していますね。元気をもらっているようです。
by 花咲かばあさん (2014-05-01 00:07) 

夕菅

リンちゃんママさん コメントありがとうございました。
この庭をつくったのは30年ほど前,その頃は仕事に追われ植物の勉強もできず庭師さん任せでした。
その後14年前に造り直して以後試行錯誤をくり返しています。
今年はハナミズキがきれいでしたがこの雨で終わりでしょう。
シデコブシの果実もイメージと合いませんが、ハクモクレンの果実を初めて見たときにもぎょっとしましたよ(笑)。
by 夕菅 (2014-05-01 00:33) 

夕菅

花咲かおばさん 追加コメントありがとうございました。
やっぱりヒトツバダコもあるのですね。カザグルマまで!!!
今は中央自動車道で繋がっている恵那の方の植物相と似ていますからかっては一帯として連続だったかもしれません(?)。
貴重な植物たち、大切に保存したいですね。
by 夕菅 (2014-05-01 11:49) 

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