ギンパイソウ [草花(初夏)]
ギンパイソウ
銀盃草(銀杯草)
ナス科アマモドキ属の多年草
学名:Nierembergia repens
原産地:アルゼンチン、チリ。日本へは明治時代の末期に渡来。
5月下旬、庭隅が突如明るくなりました。
ギンパイソウです!
放りっぱなしなのに今年もまた咲いてくれました。
ギンパイソウ、銀の盃とは美しい名前を賜ったものです。
こんなに群生した年もありました。
大抵はレンガの隙間に並んで出てきます。
カップ状の花冠の中央に黄色いスポットがあるだけの至ってシンプルな花です。
花の大きさは約2〜3cm.。
草丈5〜10cmくらい。
葉は柔らかく、へら状。花は葉よりも一段上に上を向いて開きます。
ロート状の花冠は5裂し、それぞれに3条のしわが底面まで流れています。
底面の黄色のスポットの中央に蕊柱が突出。
柱頭の下に5本の雄しべが花柱を取り囲んで合着しています。
清潔感あふれる花に見えますが、この花の最大の欠点は花がらが見苦しいこと。
花は3日ほど咲いた後、萎びて倒れこのまま枯れるのです。
雨が降れば花がらはさらにみすぼらしくなります。
この花は花柄の頂上に咲いているものと思っていたのですが、花柄なら花冠が散っても萎れないはずです。一体どういうことでしょう?
花の根元をかき分けて見ました。
何と、花柄かと思った管は地面すれすれの所にある萼(?)に接続していました!
花柄ではなくて花冠から続く花の一部である花筒だったのです。
花筒は5cmほどもあって細い管状でした。
花冠が枯れる時は筒部まで枯れたわけがわかりました。
萼は先の方が5裂した筒型です。
開くとこれまたシンプル、子房の部分は黄緑色を帯びていますが、膨らみは認められません。
萼の下に花柄はほとんどなく、萼も葉と同じく茎から直接出ているように見えます。
茎は立ち上がらず走出枝を出して地表を這い、分枝して広がり、さらに根を出して殖えていくようです。学名の repens は「匐行性の」と言う意味です。
少し膨らんだ萼がありました。
その一つを採って開いてみました。若い萼より毛が目立ちます。
花筒の残りを外すと膨らんだ子房が現れました。果実が育っていたのです。
上から見ると果実らしい物は見当たらないので、ギンパイソウは種子をつくらず、根茎のみで殖えていく植物かと誤解するところでした。
「ギンパイソウ」をネット検索しても詳細な情報がありません。
しかし確かに蒴果をつくるとは記載されていました。
もうひとつ、「雄しべは5個、うち1個は仮雄しべ」との情報があります。
「仮雄しべ」はどこにあるのでしょうか。
花冠の一部を除いて雌しべ・雄しべが合着した蕊柱を見てみました。
柱頭の下に花粉を出している葯が5つありました。
柱頭はくびれて2つに分かれているようです。
この花では前に小さな葯がひとつ、後の葯はまだ開いていません。
この花にもやや低い位置に小さい葯がひとつ、その上に大きめの葯が4つありました。
よく見るとどの花の雄しべも同じように上段に大きい葯が4つ、下段に小さい葯が1つという配列のようです。ということはこの小さい葯が仮雄しべでしょうか?
5つの葯を採って並べました。真ん中が小さい葯です。
小さい葯が花粉を出していなければ、これをすぐに仮雄しべと言えるでしょう。
でも肉眼ではこの小さな葯も花粉を出しているように見えます。
顕微鏡で確認しようと、まづは大きい葯の花粉を見ました。
驚いたことにギンパイソウの花粉は以前見たトレニアの花粉とは大違いで、数が少なく、大きさも形も不揃いでした。
種子が出来難いのは花粉にも問題があるかもしれません。
しかし仮雄しべかと思った小さめの葯にもやはり同じような花粉を認めました。
仮雄しべには例外があって、ツユクサの仮雄しべは少数ながら花粉を出しているそうです。
しかしその花粉からは花粉管は出ない、ということは雄性機能はないと言うことです。
追記:
このツユクサの仮雄しべについては“花*花・flora”に詳細な報告があります。
ところが更に「ツユクサの庭」さんはツユクサの中には、X型仮雄しべにも稔性
があり交配して種子ができるものがあることを確認されました。
ギンパイソウに仮雄しべの記載があるということはすでにそれを研究した方がいらっしゃるということでしょうが、この小さな雄しべが仮雄しべかどうか、私はもうこれ以上調べることができません。
Nierembergiaには他にも園芸種がありますが、種子が出来難い品種もあるそうです。
またうちの庭のシモバシラでは雄しべが退化していることがわかり一昨年ブログに書きました。
ギンパイソウについてもそのような例外株かもしれないことも考慮すべきですね。
間違いなどありましたらどうぞお教え下さいますよう、お願いします。
銀盃草(銀杯草)
ナス科アマモドキ属の多年草
学名:Nierembergia repens
原産地:アルゼンチン、チリ。日本へは明治時代の末期に渡来。
5月下旬、庭隅が突如明るくなりました。
ギンパイソウです!
放りっぱなしなのに今年もまた咲いてくれました。
ギンパイソウ、銀の盃とは美しい名前を賜ったものです。
こんなに群生した年もありました。
大抵はレンガの隙間に並んで出てきます。
カップ状の花冠の中央に黄色いスポットがあるだけの至ってシンプルな花です。
花の大きさは約2〜3cm.。
草丈5〜10cmくらい。
葉は柔らかく、へら状。花は葉よりも一段上に上を向いて開きます。
ロート状の花冠は5裂し、それぞれに3条のしわが底面まで流れています。
底面の黄色のスポットの中央に蕊柱が突出。
柱頭の下に5本の雄しべが花柱を取り囲んで合着しています。
清潔感あふれる花に見えますが、この花の最大の欠点は花がらが見苦しいこと。
花は3日ほど咲いた後、萎びて倒れこのまま枯れるのです。
雨が降れば花がらはさらにみすぼらしくなります。
この花は花柄の頂上に咲いているものと思っていたのですが、花柄なら花冠が散っても萎れないはずです。一体どういうことでしょう?
花の根元をかき分けて見ました。
何と、花柄かと思った管は地面すれすれの所にある萼(?)に接続していました!
花柄ではなくて花冠から続く花の一部である花筒だったのです。
花筒は5cmほどもあって細い管状でした。
花冠が枯れる時は筒部まで枯れたわけがわかりました。
萼は先の方が5裂した筒型です。
開くとこれまたシンプル、子房の部分は黄緑色を帯びていますが、膨らみは認められません。
萼の下に花柄はほとんどなく、萼も葉と同じく茎から直接出ているように見えます。
茎は立ち上がらず走出枝を出して地表を這い、分枝して広がり、さらに根を出して殖えていくようです。学名の repens は「匐行性の」と言う意味です。
少し膨らんだ萼がありました。
その一つを採って開いてみました。若い萼より毛が目立ちます。
花筒の残りを外すと膨らんだ子房が現れました。果実が育っていたのです。
上から見ると果実らしい物は見当たらないので、ギンパイソウは種子をつくらず、根茎のみで殖えていく植物かと誤解するところでした。
「ギンパイソウ」をネット検索しても詳細な情報がありません。
しかし確かに蒴果をつくるとは記載されていました。
もうひとつ、「雄しべは5個、うち1個は仮雄しべ」との情報があります。
「仮雄しべ」はどこにあるのでしょうか。
花冠の一部を除いて雌しべ・雄しべが合着した蕊柱を見てみました。
柱頭の下に花粉を出している葯が5つありました。
柱頭はくびれて2つに分かれているようです。
この花では前に小さな葯がひとつ、後の葯はまだ開いていません。
この花にもやや低い位置に小さい葯がひとつ、その上に大きめの葯が4つありました。
よく見るとどの花の雄しべも同じように上段に大きい葯が4つ、下段に小さい葯が1つという配列のようです。ということはこの小さい葯が仮雄しべでしょうか?
5つの葯を採って並べました。真ん中が小さい葯です。
小さい葯が花粉を出していなければ、これをすぐに仮雄しべと言えるでしょう。
でも肉眼ではこの小さな葯も花粉を出しているように見えます。
顕微鏡で確認しようと、まづは大きい葯の花粉を見ました。
驚いたことにギンパイソウの花粉は以前見たトレニアの花粉とは大違いで、数が少なく、大きさも形も不揃いでした。
種子が出来難いのは花粉にも問題があるかもしれません。
しかし仮雄しべかと思った小さめの葯にもやはり同じような花粉を認めました。
仮雄しべには例外があって、ツユクサの仮雄しべは少数ながら花粉を出しているそうです。
しかしその花粉からは花粉管は出ない、ということは雄性機能はないと言うことです。
追記:
このツユクサの仮雄しべについては“花*花・flora”に詳細な報告があります。
ところが更に「ツユクサの庭」さんはツユクサの中には、X型仮雄しべにも稔性
があり交配して種子ができるものがあることを確認されました。
ギンパイソウに仮雄しべの記載があるということはすでにそれを研究した方がいらっしゃるということでしょうが、この小さな雄しべが仮雄しべかどうか、私はもうこれ以上調べることができません。
Nierembergiaには他にも園芸種がありますが、種子が出来難い品種もあるそうです。
またうちの庭のシモバシラでは雄しべが退化していることがわかり一昨年ブログに書きました。
ギンパイソウについてもそのような例外株かもしれないことも考慮すべきですね。
間違いなどありましたらどうぞお教え下さいますよう、お願いします。
2013-06-22 22:29
コメント(14)
たいへん興味深く拝読しました。一見普通の花に見えますが、ナス科としては特殊な形態ですね。これを見て思い出したのは、ナス科タバコ属のNicotiana longifloraの花でした。でもこんな詳しい観察はしていなかったので、雄しべ、雌しべの様子は分かりません。
ナスで地下茎で増えるというのも珍しいですね。
by エフ・エム (2013-06-23 08:33)
エフ・エム さん コメントありがとうございました。
もう10数年も見ているギンパイソウ、レンガの隙間が好きな清楚な花とのみ思っていました。
いざブログに書こうとすると次々と疑問が湧いてむつかしい花だとわかり、私の限界を超えました。
Nicotiana longifloraの花の画像を見せていただきました。これも確かにlongですね。
ギンパイソウは本当は銀の盃ではなくて、長ーい管がついた漏斗でした!
by 夕菅 (2013-06-23 09:55)
興味深く拝読しました!(^_-)
探究心がこんな発見につながるのですね。
すごーい!と驚きを一緒に味わいました。
by ミセスサニー (2013-06-23 21:28)
レンガの隙間に咲いているのがいい感じです。
葉の割に花が大きくて、群れて咲くから華やかで、
しばらく歩けなくなりますね!
実はNaさんからもらって植えたのですが、
植えた場所が悪かったようで、花が咲きませんでした。
日当たりが好きなのですよね、きっと。
何気ない花かと思っていましたが、変わっているんですね。
上から目線では本当のところが見えないと分かりました。
夕菅さんの探究心に感謝です。
by 703 (2013-06-23 23:18)
こんにちは。
これは初めて聞く名前ですが、花はどこかで見たような気がします。いつもながらの詳しいご説明で、とても勉強になりました。
by 多摩NTの住人 (2013-06-24 08:02)
ミセスサニー さん コメントありがとうございました。
ブログに書こうとするとにわか勉強。
そうするといろいろ知らなかったことが出てきていつも追われます。
ギンパイソウは簡単そうと思ったら、いえいえ、むつかしいことになりました。
ミセスサニー さんのノバラ学、深過ぎてコメントもできませんが、いつも感心しています。
by 夕菅 (2013-06-24 09:00)
703さん コメントありがとうございました。
ギンパイソウ、確かに強そうで気難しいところがありますね。
私も以前一度絶やしたことがあります。
今回の2枚目の写真は畑の隅に突然群落が現れたのですが、翌年は出てきませんでした。
いつも上からしか見ていなかったので、長いつきあいながら何も知らずに過ごしてきました。
レンガの隙間に順に生えてくれるといいなと期待しています。
by 夕菅 (2013-06-24 09:00)
ギンバイソウ!まだ見たことがないです。
地面すれすれにちょっとだけ伸びて花をいっぱい咲かせますね!
レンガのすき間から並んでなかよくみんな咲いているところがとってもすてき!
あらら・・・しおれている花にはいきさつがあったのですね!
見る限りではどうして根元から枯れるの?と思います。
夕菅さんの調べで納得できました。
雄しべの葯の大きさは確かに大きさにひとつ違いがあることも分かります。
花粉は出ているように見えますが機能はないのかもしれない。
華やかな一面にはからくりが隠されているようで興味深いです。
いつもながらの探究心を発揮されて読みごたえがあって感動しています!
by とんちゃん (2013-06-24 09:17)
多摩NTの住人 さん コメントありがとうございました。
チリアヤメと同じく南米から来た植物ですが、帰化植物写真図鑑を見ても載っていません。庭から逸脱しにくいのでしょうね。
チリアヤメと同じく長い花柄かと思ったら大違いでした。
販売もされてますから、きっとまたどこかでごらんになることがあるでしょう。
by 夕菅 (2013-06-24 12:39)
とんちゃん コメントありがとうございました。
下手な説明ですのに、しっかり理解していただいて恐縮です。
雨間に見に行くと枯れ花が汚くて、写真を撮る前に清掃しなければなりませんが、花はとてもかわいく笑顔が並んでいるようです。
うちに咲いている花は摘んだり開いたり出来るので、ついこんなところまで踏み込んでしまいました。
by 夕菅 (2013-06-24 18:08)
名前をつける人のセンスで花も徳をしますね。耐寒性があって丈夫そうなのでこちらにもありそうですが、見たことがありません。名前がわからずに見過ごしているかもしれません。
by satton (2013-06-25 10:47)
satton さん 同感です。
でもギンパイソウはアジサイ科のギンバイソウ(銀梅草)と紛らわしいため、ギンサカズキと言う別名もあります。
パソコン文字のパとバは特に読みづらいですね。
こんなに花筒が長いとギンパイも銀盃より銀杯のほうが合いそうです。
−6℃くらいは大丈夫ですから夏の北海道でも咲けるように思えますが南米産は無理なのでしょうか。
by 夕菅 (2013-06-25 16:57)
清楚でありながら咲き揃うととても華やかなギンパイソウ。
ホントに綺麗なお花です。
何でも見られる『夕菅の庭』ですね!♪
>花柄ではなくて花冠から続く花の一部である花筒だったのです
凄いことを教えていただきました。
まさかまさか、咲いた姿を見て、そう言うこととは誰が想像できるでしょうか!
雌蕊にぴったりとへばりついた雄蕊は、アザミの姿を思い起こさせました。
蕊が開かないから花の中がすっきりとしているのですね。
by とんとん (2013-06-27 06:57)
とんとん さん コメントありがとうございました。
予備知識なく、地面近くに萼のようなものを見つけた時はガクーンとしました。でも探したら若い実が見つかって納得。こんな経験は初めてです。
ギンパイソウは南米生まれの花ですが、和風の庭にも合いそうです。
でも、花期の後半になると花がらが目立って見苦しく、写真を撮る時はそれらを除けないといけないのでたいへんです。
by 夕菅 (2013-06-27 17:34)