ジャーマンアイリス [草花(春)]
ジャーマンアイリス
アヤメ科の多年草
学名:Iris germanica
別名:ドイツアヤメ、ビアテット(ひげ)・アイリス、レインボーリリー
ジャーマンアイリス はドイツ原産のアヤメかと思えそうな名前ですがそうではありません。
本当は地中海沿岸~中近東原産のイリス・ゲルマニカと、いくつかの原種アイリスとの人工交配によって作られた園芸品種の総称なのです。
19世紀初めヨーロッパで生まれたジャーマンアイリス は20世紀にはアメリカで大人気となってさらに品種改良が進み、草丈・花の大きさも様々、花の色も白,黄,青,赤,紫,オレンジ、ピンク,茶,青などの他、2色になるものなど多種多様の品種が生まれました。
うちのジャーマンアイリスは 淡いピンク色、直径15cmほどになる大きな花です。
厚めの葉は巾4〜5cmでやや白っぽい青緑色、花とよく調和します。
水平に開く大きな花弁が外花被片、その間に内花被片が立ち上がっています。
真正面から見ると外花被片は3枚。
花の構造は複雑そうです。
外花被片の真上に1対の葯のような影。
では雌しべはどこにあるのでしょう?
一花採って解体することにしました。
真上からわかるのは大きな3枚の外花被片。
アヤメ科の特徴は3数性。ジャーマンアイリスもそのようです。
外側に大きな外花被片が3枚。
その間に立ち上がっていたのがやや小さい内花被片3枚。
外花被片の基部中央に密生するブラシのような「ひげ」があります。
これはジャーマンアイリスの特徴です。
ひげの両側にも同色の淡い模様が認められます。
アヤメ科の雌しべの構造は複雑です。
これはジャーマンアイリスの花被片合計6枚をとったあとの姿です。
花を真上から見た時中央にもう1枚づつ花弁があるように見えました(3枚上の写真)。
これは花柱枝といわれ、子房の先にある花柱が3つに分かれたものです。
花柱枝の前面に張り付くように立ち上がっているのは雄しべ。
雄しべも計3本。それぞれにⅠ対2本づつの葯があります。
柱頭は花柱枝の先端部の後面にあります。
柱頭の上に広がるひらひらの花弁のような部分は付属体。柱頭や雄しべを保護しています。
柱頭を確認するために付属体を後に曲げました。
柱頭は薄くて柔らかい膜のよう、下部は花柱枝に癒合しています。
でもこの膜のような部分が本当に柱頭の機能をもっているのでしょうか。
花粉を保持できるかどうか試してみます。
花粉が出ている葯を採って此の部分に当てながら軽くこすってみました。
確かに容易に花粉が付着しました。やはりこの帯状の部分が柱頭ですね。
昆虫は黄色い「ひげ」に惹かれてひげの上に降り、蜜を求めてトンネルに潜り込みます。
そのとき昆虫の背で柱頭がめくれて付いていた花粉が付着、さらに進めば雄しべに触れて次の花に花粉を運ぶという仕組みなのでしょう。ひげは蜜標の役目を持っています。
アイリスも自らの花粉を避けるという原則を守っているようです。
昆虫のうち、適合し易いのはマルハナバチなどのハチ類。でもなかなか現れません。
品種改良に利用される人工授粉をしてみましょう。
雌しべの付属体をやさしく後に曲げて柱頭部が見えるように開きます。
他の花から採っておいた葯でなでると帯状に花粉が付きました。
普通は根茎で殖やすジャーマンアイリス、本当に種子ができるのでしょうか。
前日に咲いた花でも花粉は付きます。
ジャーマンアイリスの花は咲いて3日目には萎んで、右のようにみすぼらしくなります。
園芸の原則は次の花を美しく咲かせるためにも「花殻は摘み取るべし」です。
わたしもそれに倣い、今まで結実させたことはなかったのです。
花が萎むとすぐ隣に新しい花が開花します。みっともない花殻は採って捨てていました。
4日前初めて人工授粉した花の苞を押し下げて子房を覗いてみました。
おお、すでに萎れた花の子房が膨らんでいます。左は蕾です。
今年は初めてジャーマンアイリスの種子が見られそうです。
日本では江戸時代からハナショウブが愛好されてきましたが栽培には湿地を要します。
これに対してジャーマンアイリスは乾いた土地に育つため花壇や公園で普通に育てられます。
ジャーマンアイリスの花の構造を調べるうちに深入りしてしまいました。
花が大きいのでアヤメ科の特徴を知るにはよかったと思います。
しかし、素人の覚束ない備忘録です。誤りがありましたらどうぞお教えいただけますようお願いします。
アヤメ科の多年草
学名:Iris germanica
別名:ドイツアヤメ、ビアテット(ひげ)・アイリス、レインボーリリー
ジャーマンアイリス はドイツ原産のアヤメかと思えそうな名前ですがそうではありません。
本当は地中海沿岸~中近東原産のイリス・ゲルマニカと、いくつかの原種アイリスとの人工交配によって作られた園芸品種の総称なのです。
19世紀初めヨーロッパで生まれたジャーマンアイリス は20世紀にはアメリカで大人気となってさらに品種改良が進み、草丈・花の大きさも様々、花の色も白,黄,青,赤,紫,オレンジ、ピンク,茶,青などの他、2色になるものなど多種多様の品種が生まれました。
うちのジャーマンアイリスは 淡いピンク色、直径15cmほどになる大きな花です。
厚めの葉は巾4〜5cmでやや白っぽい青緑色、花とよく調和します。
水平に開く大きな花弁が外花被片、その間に内花被片が立ち上がっています。
真正面から見ると外花被片は3枚。
花の構造は複雑そうです。
外花被片の真上に1対の葯のような影。
では雌しべはどこにあるのでしょう?
一花採って解体することにしました。
真上からわかるのは大きな3枚の外花被片。
アヤメ科の特徴は3数性。ジャーマンアイリスもそのようです。
外側に大きな外花被片が3枚。
その間に立ち上がっていたのがやや小さい内花被片3枚。
外花被片の基部中央に密生するブラシのような「ひげ」があります。
これはジャーマンアイリスの特徴です。
ひげの両側にも同色の淡い模様が認められます。
アヤメ科の雌しべの構造は複雑です。
これはジャーマンアイリスの花被片合計6枚をとったあとの姿です。
花を真上から見た時中央にもう1枚づつ花弁があるように見えました(3枚上の写真)。
これは花柱枝といわれ、子房の先にある花柱が3つに分かれたものです。
花柱枝の前面に張り付くように立ち上がっているのは雄しべ。
雄しべも計3本。それぞれにⅠ対2本づつの葯があります。
柱頭は花柱枝の先端部の後面にあります。
柱頭の上に広がるひらひらの花弁のような部分は付属体。柱頭や雄しべを保護しています。
柱頭を確認するために付属体を後に曲げました。
柱頭は薄くて柔らかい膜のよう、下部は花柱枝に癒合しています。
でもこの膜のような部分が本当に柱頭の機能をもっているのでしょうか。
花粉を保持できるかどうか試してみます。
花粉が出ている葯を採って此の部分に当てながら軽くこすってみました。
確かに容易に花粉が付着しました。やはりこの帯状の部分が柱頭ですね。
昆虫は黄色い「ひげ」に惹かれてひげの上に降り、蜜を求めてトンネルに潜り込みます。
そのとき昆虫の背で柱頭がめくれて付いていた花粉が付着、さらに進めば雄しべに触れて次の花に花粉を運ぶという仕組みなのでしょう。ひげは蜜標の役目を持っています。
アイリスも自らの花粉を避けるという原則を守っているようです。
昆虫のうち、適合し易いのはマルハナバチなどのハチ類。でもなかなか現れません。
品種改良に利用される人工授粉をしてみましょう。
雌しべの付属体をやさしく後に曲げて柱頭部が見えるように開きます。
他の花から採っておいた葯でなでると帯状に花粉が付きました。
普通は根茎で殖やすジャーマンアイリス、本当に種子ができるのでしょうか。
前日に咲いた花でも花粉は付きます。
ジャーマンアイリスの花は咲いて3日目には萎んで、右のようにみすぼらしくなります。
園芸の原則は次の花を美しく咲かせるためにも「花殻は摘み取るべし」です。
わたしもそれに倣い、今まで結実させたことはなかったのです。
花が萎むとすぐ隣に新しい花が開花します。みっともない花殻は採って捨てていました。
4日前初めて人工授粉した花の苞を押し下げて子房を覗いてみました。
おお、すでに萎れた花の子房が膨らんでいます。左は蕾です。
今年は初めてジャーマンアイリスの種子が見られそうです。
日本では江戸時代からハナショウブが愛好されてきましたが栽培には湿地を要します。
これに対してジャーマンアイリスは乾いた土地に育つため花壇や公園で普通に育てられます。
ジャーマンアイリスの花の構造を調べるうちに深入りしてしまいました。
花が大きいのでアヤメ科の特徴を知るにはよかったと思います。
しかし、素人の覚束ない備忘録です。誤りがありましたらどうぞお教えいただけますようお願いします。
2013-05-20 22:10
コメント(19)
ジャーマンアイリスはさほど好きではなかったのですが、庭を作るとなると、常緑で、場を取ってくれて、花も比較的長期間楽しめて、存在感のあるのが重宝になってきました。勝手なもんです!
ピンクのジャーマンアイリス、いいですねえ!
by 703 (2013-05-20 22:47)
<追加>
重宝しているうちに好きになりました。
何と勝手な!(笑)
by 703 (2013-05-20 23:09)
703さん 早速のコメントありがとうございました。
本当にジャーマンアイリスはいろんな色がありますね。
私も激しい色は受け入れられませんが、この色はまだ大丈夫です。
淡路では常緑ですか? こちらでは冬は殆どの葉が枯れます。
今年はこんなことで花殻を摘んでいないのでやはり落ち着きません(笑)。
by 夕菅 (2013-05-20 23:43)
ドイツから来た花と思っていましたがそうではなかったのですね。別名、オランダアヤメともいうようですがこれまた妙です。「アイリス」というと
ゴッホの描いたブル-の絵がうかびます。色数がたくさんあるようですね。
ピンク一色でまとめられたのがいいですね。大人のピンク色でしょうか。舞踏会のドレスかな。後ろのクロタネソウが開花するとよりいっそう素敵な景色になりそうですね。花の構造もくわしく教わりました。
うちの庭も一年中で一番にぎやかです。エゴノキで白い絨毯が出来ました。除虫菊、レ-スフラワ-バイカウツギなど白い花の中に真紅のポピ-が広がっています。いただいたセアノサスも沢山蕾を付けました。
いつのまにか庭に出ています。
by 花咲かばあさん (2013-05-21 00:26)
美しい色のジャーマンアイリスですね!
ほのかな花色なので主張が強くなくてうまくお庭に溶け込んでいるように見えました。
ジャーマンというとどうしてもドイツが故郷なのかと思ってしまいます。
花のつくりを見ているとシャガにも共通するようでふに落ちました。
柱頭ともいえないような形 うすくて横に広がる形
でも花粉はしっかり受け止めていることも納得です。
ジャーマンアイリスに特有のブラシのような髭の集まりがとってもきれいで気に入りました。
この髭のお陰で中央にアクセントとなって花色がもっと引き立つように思えました。
今後はジャーマンアイリスを見る目が変ってきそうです。
均整のとれた花弁のふりふりがたまらないです!
by とんちゃん (2013-05-21 08:54)
私は花屋さんで撮らせてもらっていることが多く、花のつくりなど調べられないので、こうして見ると興味深いです。ジャーマンアイリスも随分と品種改良が進んでいるようですが、子孫を残すための機能はしっかり維持しているのですね。
by satton (2013-05-21 10:08)
花咲かおばさん コメントありがとうございました。
そうでしたね! ゴッホの名画「アイリス」!
検索して画面に拡大してみました。
花壇に伸びやかに咲くたくさんの青いアイリスの花。
その中に白いアイリスが1輪。
アイリスの青〜紺色の花には黄色いひげもあるようです。
白っぽい葉の重なり具合もとてもよく描けています。
描かれたのが1889年ですからジャーマンアイリスかもしれませんね。
花咲かおばさん のお庭も今が一番賑やかなよう。
この季節は時計の針を止めておきたいほどですね。
by 夕菅 (2013-05-21 17:40)
とんちゃん コメントありがとうございました。
シャガの花はむつかしそうで今年も見逃しましょうと思った、そのすぐ後にジャーマンアイリスの雄しべが目に焼き付いてしまいました(笑)。
やっぱりこれが苦労の始まり。
アヤメ科は初めてですから用語から調べねばなりません。
さらにこんな頼りないべらべらが柱頭?と不安になります。
昨日は膨らんだ子房を確認してやっとほっとして結びにしました。
シャガの花も同じようですから来年比較してみて下さいね。
年と共に色も抑え気味になる花壇ですが、このジャーマンアイリスはまだ楽しみにしている花です。
by 夕菅 (2013-05-21 18:23)
satton さん コメントありがとうございました。
花の構造を花に触れずに理解するのは困難ですね。
私も自分の庭の花とはいえ、せっかくきれいに咲いたのを手折る時はやはりためらいます。
このジャーマンアイリスは柱頭を見ようと指で曲げたらボキッと子房の上で折れてしまいました。花屋さんや公園ではとても無理ですね。
園芸店では根茎を販売していますし、このような園芸品種は種子が出来にくいのではと思っていましたが今回容易に結実したのには驚きました。
by 夕菅 (2013-05-21 18:39)
早速ヤマシャクヤクにお尋ねくださりありがとうございました!
2010.4.17のお庭で咲いたヤマシャクヤク拝見しました
私も育てた事がありますのでお気持ちが凄くリアルに判りましたヨ!
夕菅さんのお庭は素晴らしいお庭ですネ!
ジャーマンアイリスのサーモンピンクの花色が優雅ですネ
詳しいお花の構造が良く判りましたヨ
近年大型で見栄えがするからでしょうか公園等でも良く栽培されているのを見かけますネ
私は花は大好きですがもっぱら見て楽しむ方でいかに観察不足であるか夕菅さんのblogをお訪ねしてを思い知らされます
by ran1005 (2013-05-22 10:50)
ran1005 さん コメントありがとうございました。
ジャーマンアイリスは一度植えるとだんだん大株になって毎年大きな花が華やかに咲くので公園向きでしょうね。
この花はひだが影をつくってピンク色も柔らかいので気に入っています。サーモンピンクと表現したらよかったのですね。
でもこの花をこんなに奥まで見たのは今回初めてです。
ブログに載せるならと拡大するうちに疑問が湧いてきてつい深入りしてしまいました(笑)。
by 夕菅 (2013-05-22 15:40)
いやあ、本当に素晴らしいブログです。
またまた勉強になりました。
写真と解説がとてもわかりやすいです。
有り難うございました。
by 多摩NTの住人 (2013-05-23 08:49)
多摩NTの住人 さん コメントありがとうございました。
毎年今年はジャーマンアイリスをと思いつつも、外から見ても構造がわからないまま花の季節を終えてきました。
今年は雄しべの影に誘われてやっとここまでたどりつきました。
間違いがあったらお教え下さいますようお願いします。
by 夕菅 (2013-05-23 20:06)
きれいな画像と分かりやすい説明でジャーマンアイリスの花の構造を理解することができました。ことに柱頭がこのようなかたちとは思いもよりませんでした。花にはちゃんとした基本構造を保持した上での多様なバリエーションがあることがよく分かります。
果実や種子がどのようなものか、期待しております。種子から花が咲くまでどのくらいかかるか、それも興味があります。
by エフ・エム (2013-05-24 10:26)
エフ・エムさん コメントありがとうございました。
雌しべはどこ?と見回しても分からないはず、アヤメ科の柱頭は特殊でした。
検索しても解説少なく理解しきれないため、このような確認をすることになりました。実体顕微鏡で見れるといいのですが.........。
園芸品種には種子をつくらないのかと思いましたが順調に子房が膨らんでいます。
こんなコメントをいただくと続編がいるのでしょうか?
ユウスゲは人工授粉で得た種子が花を咲かせるに至りましたので試してみますが、種子からの栽培は自信がありません。
by 夕菅 (2013-05-24 12:53)
はじめまして。「のらのら」というこども向けの農業雑誌を編集している者です。いつも楽しく拝見させていただいております。
夕菅さんが以前に撮影されたオクラの写真について、お願いしたいことがあるのですが、以下のメールアドレスにご連絡いただけないでしょうか?不躾なお願いで申し訳ありません。どうぞよろしくお願いします。
nakamura-a@mail.ruralnet.or.jp
by 「のらのら」編集部 (2013-05-24 14:25)
「のらのら」編集部 の方へ
素人の拙いブログをご覧いただいて恐縮です。
お子さん向けの農業雑誌があるとは知りませんでした。
下手な写真ですが何かのお役に立てれば幸いです。
by 夕菅 (2013-05-24 23:23)
ジャーマンアイリスが結実するとは?
今まで容赦なく切っていたためか、
丁寧な受粉作業が必要なのか、
確認したくなってきました。
by ミセスサニー (2013-05-27 21:38)
ミセスサニー さんもジャーマンアイリスは切り捨てていらしたのですね。
こういう成り行きで今年は初めて人工授粉しましたところ、やはりそこのみ果実が育っています。
手技は至ってかんたんです。柱頭を確認して切り取った雄しべの花粉を付けるだけです。一応、その花ではなく他花の雄しべにしましたが。
新種もこうしてつくられるようですからどうぞお試し下さい。
by 夕菅 (2013-05-28 00:41)