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シラユキゲシ [草花(春)]

シラユキゲシ
  白雪芥子
  ケシ科シラユキゲシ属の多年生草本
  学 名 Eomecon chionantha Hance 
  英 名 snow poppy
  原 産 中国東部 

4月から5月にかけてシラユキゲシが咲き始めます。
名のごとくやわらかく清楚な純白の花です。
シラユキゲシ花粉初wb.jpg

建物の北側の軒下、日陰で雨も当たり難い場所ですがたちまち繁茂しました。
20~40cmの帯紫色の花茎の先に数個の蕾ができて1花づつ咲き出します。
シラユキゲシ全wb.jpg

ジュズダマの実のような形の蕾を包んでいるのは2枚の萼です。
シラユキゲシ花序1wb.jpg

蕾が開くと萼片は落ちます。この画像ではまだ1枚が残っています。
多数の黄色い若い雄しべと1本の雌しべ。
シラユキゲシ蕾wb2.jpg

花は4弁で直径3〜4cm。
葯が開いて花粉が出始めます。 
シラユキゲシ1wb.jpg

花粉がいっぱい。
シラユキゲシ花粉多wb.jpg

ふくよかに花弁が全開したころには雄しべは退化していきます。
右の蕾は萼が1枚落ちてこれから開花するところです。
シラユキゲシ5wb.jpg

後ろから見るとシュウメイギクやイチリンソウのよう。
シラユキゲシ後wb.jpg

2枚目の萼が落ちずに付いたままの花もありました。
シラユキゲシ後萼wb.jpg

美しいハナアブが訪れました。
ホソヒラタアブの雄でしょうか((画面は全てクリックすると大きくなります)。
白雪ゲシ・ヒラタアブwb.jpg

今までできるだけきれいな花弁の花を選んで写真を撮ってきましたが、実はシラユキゲシは花弁が傷み易く、しみが出易いのが特徴です。
また花は1日花ではなく徐々に散っていきますから、その間傷んだ花弁の汚れが目立ちます。
この花では雄しべが退化して雌しべの柱頭が2裂しているのが見えています。

シラユキゲシ末期3wb.jpg

しみの出た花の花柄を鋏で切りました。
すると、おやおや、切り口に橙色の液がにじみ出てきました。
シラユキゲシ赤汁1wb.jpg

太い茎では赤い汁が滴り落ちました。
シラユキゲシの中国名は「血水草」。この現象を表わす命名でしょう。
この液色には驚きましたが、毒性はなく根は生薬「黄水芋」として消炎・解毒に、干した草は「黄水草」として皮膚病に利用されるそうです。
シラユキゲシ赤汁2wb.jpg

たまたま1本の花茎に蕾・例外の5弁花、花弁1枚散り残った花・若い実が揃いました。
シラユキゲシ蕾実wb.jpg

長い葉柄をつけた葉が地面を覆うほどに繁っています。
葉は心臓型で緑の濃淡が美しい。
葉の巾は5〜20cmとする文献もありますが、うちのは5〜12cmくらいです。
シラユキゲシ葉1wb.jpg

繁殖は横に這う地下茎と種子により極めて旺盛。適地ではたちまち周りの植物に覆い被さります。
うちの庭でもこのような状態では、前からあった花達を絶やさないために前の方は抜かざるを得ません。
しかし、10年ほど前に植えた南の花壇のシラユキゲシは一旦殖えた後次第に減少し、今年は消滅を心配するほどです。
シラユキゲシ侵略3wb.jpg

シラユキゲシは山野草として愛される清楚な魅力と、見掛けによらぬ旺盛な繁殖力とを併せ持つ悩ましい植物です。
すでに逸脱して林床一面に咲き誇るシラユキゲシの名所(?)も存在し、この花が付近の生態系を乱す可能性を想定し、園内からは撤去し始めた植物園もあるようです。
しかし花が育ち難い日陰の乾燥地を緑で覆い、やさしい花を咲かせる稀少な植物ですから、園芸用としては理解した上で管理しつつ栽培したいと思っています。

コメント(16) 

コメント 16

多摩NTの住人

こんにちは。
シラユキゲシは初めて知りました。
白と黄色の対比がとても鮮やかですね。
清楚な見た目ですが、強いんですね。
by 多摩NTの住人 (2013-05-11 18:22) 

夕菅

多摩NTの住人 さん コメントありがとうございました。
シラユキゲシ初めてでしたか! 
まだ多摩地方では野生化していないのでしょうね。
私も最近までこの花が問題視されているとは知りませんでした。
一方では山野草として植木鉢で大切に育てている方もあるようです。
by 夕菅 (2013-05-11 21:46) 

703

シラユキゲシも旺盛な繁殖力が問題なのですか?!
強いとは思いますが、まだそこまでの実感はありません。
夕菅さんの所と同じように、南の庭に植えるとさほど美しく咲きません。
北向きの日陰の庭が一番綺麗です。
でもお宅ほどびっしりになってないのは、年数が違うのでしょうか?うちは植えて8,9年にはなります。
地下茎で増えているとばかり思っていました。種もですか!
好きな花なのですが・・・・
by 703 (2013-05-11 23:10) 

夕菅

703さん コメントありがとうございました。
703さんのブログでも日陰の小庭にタツナミソウやアマドコロとと一緒にシラユキゲシがたくさん咲いていましたね。
うちの日陰の庭は2010年の春つくったものです。シラユキゲシは南の庭から持ってきたのか、移植したクリスマスローズに付いてきたのかも覚えてないのですが、とにかく3年でこんなに繁りました。
私も好きですが、ほどほどにご遠慮いただこうと思っています(笑)。
by 夕菅 (2013-05-11 23:43) 

とんちゃん

シラユキゲシですね!きれいに写っています!
白い花粉がいっぱい出ているのですね。
この状態のときって見たことないです。
後ろから見ると本当にシュウメイギクとかイチリンソウのように見えます。
知らないときはキンポウゲの仲間なのかと思っていました。
花弁5枚の花ってふくよかに見えますね。
切り口から橙色の液体がしみ出てくるなんて新発見!
いかにも毒を持っているような感じ でもシラユキゲシには薬効があるとのこと
果実はそれほど大きくふくらまないように感じました。
ある植物園では増えすぎてほかの植生に影響を及ぼしそうなので引き抜いたそうです。
ほどほどにそこで咲かせてくれたらいいと思います。
半日陰を飾ってくれる花 和の雰囲気も感じられる花なので多少邪魔にされても咲いてほしいです。
by とんちゃん (2013-05-12 08:22) 

ebisu-mama

この可憐な花。シラユキゲシというのですね。 
この4月、実家で見つけました。母に聞いたところ、数年前どなたかに頂いたらしく、知らないうちに増えたようです。
黄色のラッパスイセンが競い合って咲きそろう陽だまりの横、植込みの木の北側日陰にひょろひょろ背を伸ばして可憐な花を咲かせていました。春の明るさは似合わないけれど、私達もここにいます・・と話かけられた感じでしたよ。
やはり、傷みやすい花弁なのですね。その時も雨に打たれたのか シミが多く、切り花にはしなかったのですが、切っていたら驚いたでしょうね。赤い汁・・・中国名、血水草ですか。来年の春も切り花にはせず、眺めて過ごそうと思います。(タンポポの白い汁も子供のころからなじんでいるとはいえ、まだ抵抗があります 笑)
by ebisu-mama (2013-05-12 08:51) 

エフ・エム

ケシ科の植物にしては、葉が変わったかたちですね。私はまだ見たことがありませんが、初めて見たらケシ科とは見えないのではないかと思います。地下茎で増えるケシもあるのですね。このことも知りませんでした。
切り口から赤い汁を出すのも珍しいですね。赤い物質の本体を知りたいところです。
by エフ・エム (2013-05-12 13:49) 

夕菅

とんちゃん が大町自然観察園のシラユキゲシをアップされたのを見て、まだ書いてなかったことに気付いて急遽まとめました。
実家からもらって、初めて咲いたに時はなんとかわいい花と思いました。
うちでは南庭のは一旦殖えた後減少、日陰の方は目下増殖中ですので生態系を乱す心配までは思い至りませんでした。
他にも花壇に殖え過ぎて抜く植物はたくさんあります。
私もやっぱりうちの庭ではまだほどほどに咲き続けてほしいと思っていますよ。
by 夕菅 (2013-05-12 15:12) 

夕菅

ebisu-mamaさんのご実家でも咲いていたのですね。
そういえば私もこの花を切り花にしたことはありません。
1本の花茎にまだいくつか蕾があるので、切ると次が咲けないような気がしたからです。
もう花も終わり、早速1本試してみましたが水揚げが悪そうです。
確かにタンポポは白い汁がでますね。やはり別名のひとつに「乳草(チチグサ)」がありました。でもタンポポはサラダや天ぷらなどにして食べられるそうですよ。

by 夕菅 (2013-05-12 16:28) 

夕菅

エフ・エム さん コメントありがとうございました。
ほんとうに私もこれがケシ科でいいのかしらと植物分類表で確認しました。
ケシ科は1クサノオウ属、2キケマン属、3コマクサ属、4シラユキゲシ属・・・・・11ケシ属・・・でした。
シラユキゲシどころかコマクサもケシ科とは驚きました。
シラユキゲシの切り口から滲み出すあのオレンジ色の妖しい液の成分は何でしょうね。分析した方はまだなさそうです。
手に付くと洗ってもなかなかとれません。
さすがにちょっと味見する気にはなれません(笑)。

by 夕菅 (2013-05-12 17:13) 

とんとん

我が家にもあるシラユキゲシですが、最後から4枚目の赤い液体の写真は衝撃です!
血水草と言う中国名、恐ろしい響きですね~。(笑)
遠くにまで無節操に顔を出すので、小さな鉢で置いてありますが毎年奇麗に咲いてくれます。
生態系を乱す恐れを感じるのも分かります。
減っていくこともあるのは不思議ですね。

夕菅さんに倣って、一度茎を切って血の色を確かめてみたいと思います。

by とんとん (2013-05-13 09:26) 

夕菅

とんとん さん コメントありがとうございました。
とんとん のお庭でも咲いているのですね。
最初に茎を切った時には本当に驚きました。
こんな純白の花を咲かせる植物から、毒々しい赤い液が滴り落ちるなんて思いもしませんものね。
但し毒性はないらしく手に付いてもかぶれることはないようです。
手や衣類につくと落ち難いのでご注意ください。
それにしても血水草ではかわいそうです。
by 夕菅 (2013-05-13 12:58) 

satton

シラユキゲシは耐寒性があるようなので、こちらにもありそうですが、初めて見ました。ケシから赤い液が出てくると強力な阿片?と思ってしまいますが、生薬の材料になるのですね。
by satton (2013-05-15 17:08) 

夕菅

satton さん コメントありがとうございました。
北海道ではシラユキゲシをごらんになったことがないのですね。
この辺りでは耐寒性ありで-6℃くらいでは大丈夫です。
エゾエンゴサクのような可憐なケシ科の花が咲く地ですからよさそうな気がしますが、それらと競合するといけないから持ち込まない方がいいのかもしれませんね。
あの赤い液には確かに妖しさを感じますね。

by 夕菅 (2013-05-15 21:40) 

トンボ

こんばんは。
貴兄のブログ、画像もきれいで本当に参考になります。
おかげさまで、長年不明だった庭のシラユキゲシの名前を知ることができました。
ときどき、お邪魔させていただきます。まずは御礼まで。
by トンボ (2017-07-17 21:53) 

夕菅

トンボ さん コメントありがとうございました。
昨日までつくばへ行っていました。返信が遅くなってごめんなさい。
シラユキゲシの名前がわかってよかったですね。
私も花の名前がわからない時、まずはパソコン検索です。
わかると胸のつかえが取れたようにすーっとしますね。
でもこの頃は一度覚えても忘れたり、思い出せなかったり。
また自分のブログを備忘録にしています(笑)。
by 夕菅 (2017-07-18 11:25) 

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