ソシンロウバイ 2013 [花木(冬)]
ソシンロウバイー2013年
ロウバイ科ロウバイ属ロウバイ(蝋梅)の園芸品種
落葉低木
ソシンロウバイについては既に2009年1月31日に記載しましたが、改めて読み直してみると物足りなく、2013年版を追加することにしました。
年末から咲き出したソシンロウバイの古木は1〜2月頃満開になります。
(どの画面もクリックすると大きくなります。)
花は直径2cmほどでカップ状、慎ましく下向きに咲きます。
花が開くと芳しい香りを漂わせ、見なくても開花したことが分かるほどです。
咲き始めたばかりの花とふくらんだ蕾。
見上げた花の雌しべ・雄しべの違いに気付いたのが2009年でした。
左側の花達は雄しべが放射線状に広がっています。
しかし右側の花達は中心に雄しべが集っているようです。
拡大すると左の花では広がった雄しべの中央に雌しべらしい突起があります。
調べるとロウバイには雌性先熟といって、雌しべが先に熟して自家受粉を避ける仕組みがあることがわかりました。
開花した時、雄しべは花床に放射線状に広がっています。
雄しべの数は6〜8本。
もっと若い雄しべはどうなっているのでしょう。
まもなく開きそうな大きな蕾の中を見ることにしました。
花を覗くと雄しべは既に花床に広がっていて、上の画像と同じでした。
もっと小さい蕾を見ましょう。
中を見るためにはまだ閉じている蕾の花弁を指で開く必要があります。
でも小さな花弁は思いのほか容易に反転できて、自然に開花した花のようになりました。
(この花もソシンロウバイですが古木ではなく、花弁が円く黄色が濃い園芸種です。)
中央に真っ白い幼い雄しべと、もう既に花柱が伸び初めた雌しべが見えました。
先熟する雌しべはすでに蕾の中で花柱を伸ばし始めていたのです。
雄しべはやや内側に彎曲し、外側には葯が1対づつついています。
また左側の内花被片についている小さな水滴は蜜だと思われます。
(画面をクリックしてみてください。)
さらにもう少し大きめの蕾を開いてみました。
未熟な雄しべはやや長くなり花床に広がりつつあります。
中央には雌しべの柱頭が立ち上がっています。
この雌しべは変化しないのでしょうか。
雌しべの変化を見るために雌性期の花を探していくつもの花を覗きました。
雄性期に比べて雌性期は短く数日といわれていますが、暖かいと短かめのように思えます。2月も半ばの今では圧倒的に雄性期の花が多くなっています。
雄しべの長さは3mmほど、雌しべはさらに小さく肉眼ではほとんど見えません。
雌しべは数本が集って初めは一束に固まっていますが、成熟するにつれてそれぞれに伸び出すようです。
やっとそれらしき画像が得られました。
雌しべがほぐれて広がっています。受粉可能な状態かと思われます。
しかし葯からはまだ花粉は出ていません。
さらにこの花では雌しべがそれぞれ触手を伸ばしているかのように見えます。
昆虫が他家から花粉を花粉を運んでくれるのを待つ成熟した雌しべの状態です。
花柱は細く長く伸びますが、柱頭との区切りはないようです。
もう1枚追加します。雌しべの柱頭がさらに広がっています。
次いで雄しべが雌しべを囲むように中央に集ります。
雌しべは退化して雄性期に入ります。
雄しべの葯は大きく膨らみ、雌しべを包むように軽く弯曲しています。
よく見ると花粉もわずかに出始めているようです。
次いで雄性最盛期、雄しべは花粉に包まれました。
和室に1枝活けたソシンロウバイの花が色褪せてきました。
枯れた花殻を取り除くと、何と中から小さな緑色の実が現れました。
庭の古木では花殻摘みはしたこともなく、こんな小さな実は見たことがありません。
頭には雌しべの柱頭が残っているようです。
花の向きを変えて見ると、この花の(子房)雄しべの下部も緑色を帯びて膨らんでいました。
冬は昆虫が少なく稀にハエの仲間を見るくらいですが、(果実)偽果が意外に多く出来ます。。
(2013.2.17.)
追記:この実は真の果実ではなく「偽果」というそうです。
エフ・エムさんから教えていただきあちこち訂正しました。
初夏には鬱蒼と葉が茂り、(果実)偽果は赤みを帯びてきます(2006.5.26.)。
枯れた実は花が咲く頃になっても自然落下せず、取り除くこともあります。
それでも高い枝にはまだ枯れた実が残っていました。
逆光のソシンロウバイ。
雄しべ・雌しべと疲れたあとは、逆光でぼんやり見る花にほっとしました。
ロウバイ科ロウバイ属ロウバイ(蝋梅)の園芸品種
落葉低木
ソシンロウバイについては既に2009年1月31日に記載しましたが、改めて読み直してみると物足りなく、2013年版を追加することにしました。
年末から咲き出したソシンロウバイの古木は1〜2月頃満開になります。
(どの画面もクリックすると大きくなります。)
花は直径2cmほどでカップ状、慎ましく下向きに咲きます。
花が開くと芳しい香りを漂わせ、見なくても開花したことが分かるほどです。
咲き始めたばかりの花とふくらんだ蕾。
見上げた花の雌しべ・雄しべの違いに気付いたのが2009年でした。
左側の花達は雄しべが放射線状に広がっています。
しかし右側の花達は中心に雄しべが集っているようです。
拡大すると左の花では広がった雄しべの中央に雌しべらしい突起があります。
調べるとロウバイには雌性先熟といって、雌しべが先に熟して自家受粉を避ける仕組みがあることがわかりました。
開花した時、雄しべは花床に放射線状に広がっています。
雄しべの数は6〜8本。
もっと若い雄しべはどうなっているのでしょう。
まもなく開きそうな大きな蕾の中を見ることにしました。
花を覗くと雄しべは既に花床に広がっていて、上の画像と同じでした。
もっと小さい蕾を見ましょう。
中を見るためにはまだ閉じている蕾の花弁を指で開く必要があります。
でも小さな花弁は思いのほか容易に反転できて、自然に開花した花のようになりました。
(この花もソシンロウバイですが古木ではなく、花弁が円く黄色が濃い園芸種です。)
中央に真っ白い幼い雄しべと、もう既に花柱が伸び初めた雌しべが見えました。
先熟する雌しべはすでに蕾の中で花柱を伸ばし始めていたのです。
雄しべはやや内側に彎曲し、外側には葯が1対づつついています。
また左側の内花被片についている小さな水滴は蜜だと思われます。
(画面をクリックしてみてください。)
さらにもう少し大きめの蕾を開いてみました。
未熟な雄しべはやや長くなり花床に広がりつつあります。
中央には雌しべの柱頭が立ち上がっています。
この雌しべは変化しないのでしょうか。
雌しべの変化を見るために雌性期の花を探していくつもの花を覗きました。
雄性期に比べて雌性期は短く数日といわれていますが、暖かいと短かめのように思えます。2月も半ばの今では圧倒的に雄性期の花が多くなっています。
雄しべの長さは3mmほど、雌しべはさらに小さく肉眼ではほとんど見えません。
雌しべは数本が集って初めは一束に固まっていますが、成熟するにつれてそれぞれに伸び出すようです。
やっとそれらしき画像が得られました。
雌しべがほぐれて広がっています。受粉可能な状態かと思われます。
しかし葯からはまだ花粉は出ていません。
さらにこの花では雌しべがそれぞれ触手を伸ばしているかのように見えます。
昆虫が他家から花粉を花粉を運んでくれるのを待つ成熟した雌しべの状態です。
花柱は細く長く伸びますが、柱頭との区切りはないようです。
もう1枚追加します。雌しべの柱頭がさらに広がっています。
次いで雄しべが雌しべを囲むように中央に集ります。
雌しべは退化して雄性期に入ります。
雄しべの葯は大きく膨らみ、雌しべを包むように軽く弯曲しています。
よく見ると花粉もわずかに出始めているようです。
次いで雄性最盛期、雄しべは花粉に包まれました。
和室に1枝活けたソシンロウバイの花が色褪せてきました。
枯れた花殻を取り除くと、何と中から小さな緑色の実が現れました。
庭の古木では花殻摘みはしたこともなく、こんな小さな実は見たことがありません。
頭には雌しべの柱頭が残っているようです。
花の向きを変えて見ると、この花の(
冬は昆虫が少なく稀にハエの仲間を見るくらいですが、(
(2013.2.17.)
追記:この実は真の果実ではなく「偽果」というそうです。
エフ・エムさんから教えていただきあちこち訂正しました。
初夏には鬱蒼と葉が茂り、(
枯れた実は花が咲く頃になっても自然落下せず、取り除くこともあります。
それでも高い枝にはまだ枯れた実が残っていました。
逆光のソシンロウバイ。
雄しべ・雌しべと疲れたあとは、逆光でぼんやり見る花にほっとしました。
2013-02-16 22:48
コメント(10)
ロウバイの花が雌性先熟とは知りませんでした。非常に分かりやすい画像で、勉強になりました。虫がほとんど活動していない時期なのに、たくさんの果実がつくのは、やはりメジロが花粉媒介の主な担い手なのでしょうか。
果実のように見えるものは、花床が生長してつくる偽果なのだそうですね。鑑賞だけでなく、植物学的にもおもしろい植物ですね。
by エフ・エム (2013-02-17 08:56)
おはようございます!
夕菅さん、素晴らしいソシンロウバイの一生になっています!
完全永久保存版 完璧に調べつくされて解説が分かりやすく画像もきれいで勉強するのにありがたいです!
知りたかったつぼみを開いてみた状態も記されて助かりました。。
まだ開かないうちは雄しべはもっと下に張り付いたようになっているのかと想像していたのです。
早い段階からたっぷりの蜜をたくわえていることも分かりました。
雌しべの状態がはっきり分かりますね!
何度も行ったり来たりしたお陰♪
ちゃんと応えてくれたようです。
枯れた花がらの後にはもう可愛い緑の果実があったんですね。
花弁を落とす前にすでに子房がふくらんで可愛らしいです。
私は今まで雌しべも花粉を出すものとばかり思っていました。
両方の花粉同士がくっつくのだととんだ勘違いを平気でしていました。
夕菅さんは植物学的根拠に熟知されていらっしゃるので安心して学ぶことができます。
ほかにも面白い花の造りがあったら紹介してくださるとうれしいです。
大作!お疲れ様でした。まとめ上げた後のロウバイの花が一層輝きを増しているように見えます。
by とんちゃん (2013-02-17 10:39)
エフ・エム さん お教えいただきましてありがとうございました。
果実ではなく、偽果だったのですね。
実は3年前、毎日見せていただく方のブログで偽果と知り、コメントまで送りましたのにすっかり忘れていました。大ボケ、困ったものです。お蔭様であちこち訂正させていただきました。
雌性先熟の花は風媒花に多く、ロウバイは例外らしいですね。
またロウバイはガクと花弁が明確に分化しないことなど古い形質をもつ植物だとか、学べばまだまだ奥が深そうです。
花粉を媒介する昆虫や鳥が少ないのに結実率がいいのは、閉じた雄しべの隙間から入った花粉で自花受粉するのではとも疑いたくなります。
by 夕菅 (2013-02-17 12:31)
とんちゃん 早速見ていただいてありがとうございました。
このブログを書き直すことが出来たのは全てとんちゃんのお蔭です。
2009年の記事はまだ植物用語がわからなくてしどろもどろで書いたもので、雌しべの写真も載っていません。
そんなのを参考にしていただくのは申し訳なく、あらためてロウバイを訪れました。
雌しべを追ううち、やはり蕾を見たくなりました。同じ経過でしたね。
しかし老眼でオート専門・三脚無しの身にはこれがまた難問で、最後は花を採って来て室内で撮影。うちの花は許可なく採れるので楽ですが、それでも白とびやピンぼけ続きで庭を往復。
最後にやっと雌しべがうっすら開いたのが撮れたのでロウバイ呪縛(?)から逃れました(笑)。
暖かい応援、ありがとうございました。
by 夕菅 (2013-02-17 12:58)
こんにちは。
わかりやすい写真と、丁寧なご説明を有り難うございました。
よく理解でしました。
ソシンロウバイは魅力的な花ですね。
by 多摩NTの住人 (2013-02-17 16:45)
多摩NTの住人 さん コメントありがとうございました。
ソシンロウバイはロウバイの園芸品種ですが、その中にも濃い黄色、薄い黄色、丸弁、尖弁、さらには満月ロウバイやそれらの掛け合わせなどいろいろな品種があるようです。
花は経過と形態がはっきりしてますからわかりやすいと思います。
殺風景な冬の庭に彩りと香りを添えてくれるありがたい花です。
by 夕菅 (2013-02-17 21:43)
またまた感嘆するしかない夕菅さんの探究心!
おかげで植物の世界の奥深さを垣間見させていただいています。
ソシンロウバイがこれだけ大きな木になると、辺りは馥郁とした香りが漂って、幸せな気分になることでしょうね。
by 703 (2013-02-18 22:05)
703 さん 今回は老眼を嘆きつつ、ちょっとがんばりました(笑)。
お庭にはまだソシンロウバイやロウバイはなかったでしょうか?
そうです。本当に「馥郁たる香り」とはこの香りのことかしらといつも思います。きつすぎず、暖かく包むような香りです。
色や形も微妙に違ういろんな園芸品種がありますが、うちでは古木の方がやや早く咲き、色が濃く丸弁の若木は1〜2周遅れるのがちょうど良い組み合わせになりました。
by 夕菅 (2013-02-19 00:22)
雌性先塾で雄蕊が開いて閉じるという興味深い蝋梅の蕊たちです。
雄蕊が花粉を出し終わった後と実を確認するまでの間の変化をまだ追うことができていません。
中を覗き込むのが本当に疲れます。
透明な花の輝きに癒されますね。
by とんとん (2013-02-20 15:20)
とんとん さん
雄しべの開閉は4年前に知りましたが、雌しべの開閉は今年初めて追いました。雌しべはさらに小さく見難いのでたいへんでした。
庭の花を見上げても長く雌性期が続いていて幼い実は見つかりません。
でも花瓶に活けた花では小さな実が出来ていてびっくり。
花の後は日参しないのでその間の変化は未詳ですね。
by 夕菅 (2013-02-20 23:23)