ヒメジュウジナガカメムシはなぜ群れる?(1) [昆虫]
2008年10月25日、苗を買って植えたトウワタの花に、今まで見たこともない虫が群れているのを見つけました。
まだ花も虫もよくわからず、ブログ開始もためらっていた頃のことです。
派手なトウワタ(ガガイモ科)にも負けず、華やかな色合いの昆虫。
何という虫?
パソコン上の昆虫図鑑と照合、ヒメジュウジナガカメムシらしいとわかりました。
(写真は全て画面をクリックすると大きくなります。)
ヒメジュウジナガカメムシ
カメムシ目 ナガカメムシ科
体長 約8mm。
橙色の地に黒の斑紋でX十字、斬新なデザインのカメムシです。
この色は身を守るための警告色といわれています。
幼虫の食草はガガイモ。
側面にも黒の斑紋が並んでいます。
近縁種にジュウジナガカメムシがあります。
同じく橙色と黒のX十字模様ですが体長約10mmとやや大きく、腹部下部の黒斑が点状(ヒメジュウジナガカメムは帯状)のようです。
たまたま何とか腹部が見える画像がありました。
下部は帯状の黒斑と見えますから、これはヒメジュウジナガカメムでよいと思われます。
葉にもたくさんのカメムシが群れています。
カメムシといえば臭気ですが、この種の武器は色らしく、臭いはしないようです。
近くの茎や葉にはアブラムシがこれもびっしり群れているところがありました。
ひょっとしてヒメジュウジナガカメムはアブラムシを食べるのでしょうか。
またはアリのように共生しているのでしょうか。
どうもアブラムシとヒメジュウジナガカメムは無縁のようです。
最も密集するのは花の直下の茎でした。
11月20日、カメムシやアブラムシが付かずに育ったトウワタにはガガイモ科らしい大きな果実が数本出来ていました。
トウワタ(アスクレピアス)はこのように赤と黄色の2色の花を咲かせますが、橙色のみの花が咲くヤナギトウワタとしばしば混同されているようです。
カメムシがついていた株では果実は1つもが実っていません。
養分を吸い取られてしまったのでしょう。
さて、ヒメジュウジナガカメムは何のために群れているのでしょう。
・・・・・・・・・わかりません。記事にはできず宿題になりました。
今年あらためて検索するうちにぴったりの文献を見つけました。
書名もずばり「カメムシはなぜ群れる?」 藤崎憲治(2009), 京都大学学術出版会。
副題は「離合集散の生態学」。
この本を参考にすると、これは食べるための群れと考えられました。
カメムシは吸汁する時、唾液を注入するそうです。唾液に含まれている消化酵素が大量に入れば 硬い茎を化学的に変化させ、口吻が入り易くなります。1匹では出来ないことが群れてこそ可能になるというわけです。
群れることは天敵からの防御にもなります。1匹が捕まっても残りは逃げられるからです。
またヒメジュウジナガカメムシが群れれば赤い警告色はより強調されるでしょう。
トウワタにはカルデノライトという毒物質があり、その汁を吸ったカメムシにも蓄積されます。これを食べた鳥は消化器症状を起こすため次からは食べなくなるそうです。
カメムシはこれらの他にも、脱皮、繁殖(ハレム)、越冬などの時に群れることが観察され、詳しく述べられています。
「カメムシはなぜ群れる?」ここから覗いた昆虫の生態は奥が深く興味深い世界でした。
追記
2012.11.6. ヒメジュウジナガカメムシは何故群れる(2)を追加しました。
http://yuusugenoniwa.blog.so-net.ne.jp/2012-11-06
フウセントウワタに群れたヒメジュウジナガカメムシの記録です。
まだ花も虫もよくわからず、ブログ開始もためらっていた頃のことです。
派手なトウワタ(ガガイモ科)にも負けず、華やかな色合いの昆虫。
何という虫?
パソコン上の昆虫図鑑と照合、ヒメジュウジナガカメムシらしいとわかりました。
(写真は全て画面をクリックすると大きくなります。)
ヒメジュウジナガカメムシ
カメムシ目 ナガカメムシ科
体長 約8mm。
橙色の地に黒の斑紋でX十字、斬新なデザインのカメムシです。
この色は身を守るための警告色といわれています。
幼虫の食草はガガイモ。
側面にも黒の斑紋が並んでいます。
近縁種にジュウジナガカメムシがあります。
同じく橙色と黒のX十字模様ですが体長約10mmとやや大きく、腹部下部の黒斑が点状(ヒメジュウジナガカメムは帯状)のようです。
たまたま何とか腹部が見える画像がありました。
下部は帯状の黒斑と見えますから、これはヒメジュウジナガカメムでよいと思われます。
葉にもたくさんのカメムシが群れています。
カメムシといえば臭気ですが、この種の武器は色らしく、臭いはしないようです。
近くの茎や葉にはアブラムシがこれもびっしり群れているところがありました。
ひょっとしてヒメジュウジナガカメムはアブラムシを食べるのでしょうか。
またはアリのように共生しているのでしょうか。
どうもアブラムシとヒメジュウジナガカメムは無縁のようです。
最も密集するのは花の直下の茎でした。
11月20日、カメムシやアブラムシが付かずに育ったトウワタにはガガイモ科らしい大きな果実が数本出来ていました。
トウワタ(アスクレピアス)はこのように赤と黄色の2色の花を咲かせますが、橙色のみの花が咲くヤナギトウワタとしばしば混同されているようです。
カメムシがついていた株では果実は1つもが実っていません。
養分を吸い取られてしまったのでしょう。
さて、ヒメジュウジナガカメムは何のために群れているのでしょう。
・・・・・・・・・わかりません。記事にはできず宿題になりました。
今年あらためて検索するうちにぴったりの文献を見つけました。
書名もずばり「カメムシはなぜ群れる?」 藤崎憲治(2009), 京都大学学術出版会。
副題は「離合集散の生態学」。
この本を参考にすると、これは食べるための群れと考えられました。
カメムシは吸汁する時、唾液を注入するそうです。唾液に含まれている消化酵素が大量に入れば 硬い茎を化学的に変化させ、口吻が入り易くなります。1匹では出来ないことが群れてこそ可能になるというわけです。
群れることは天敵からの防御にもなります。1匹が捕まっても残りは逃げられるからです。
またヒメジュウジナガカメムシが群れれば赤い警告色はより強調されるでしょう。
トウワタにはカルデノライトという毒物質があり、その汁を吸ったカメムシにも蓄積されます。これを食べた鳥は消化器症状を起こすため次からは食べなくなるそうです。
カメムシはこれらの他にも、脱皮、繁殖(ハレム)、越冬などの時に群れることが観察され、詳しく述べられています。
「カメムシはなぜ群れる?」ここから覗いた昆虫の生態は奥が深く興味深い世界でした。
追記
2012.11.6. ヒメジュウジナガカメムシは何故群れる(2)を追加しました。
http://yuusugenoniwa.blog.so-net.ne.jp/2012-11-06
フウセントウワタに群れたヒメジュウジナガカメムシの記録です。
2011-08-24 23:30
コメント(12)
なんと豪華絢爛なヒメジュウジナガカメムシなのでしょう~。
てんこ盛りですね。
初めて見つけたときは交尾しているところでしたけど、奇麗なオレンジ色と黒の模様に目を見張りました。
アブラムシを食べそうですが、植物の汁を吸うなど草食系なのでしょうか。
とても知的な記事ですね。
野草観察会で見つけて、顔だけに注目した幼稚な記事を書いていました。
よろしかったら、2009.8.10にアップした面白い顔を見てやってください。
by とんとん (2011-08-25 22:15)
たいへんおもしろく拝読しました。トウワタは有毒植物で、昆虫もほとんど近寄らない植物だそうですが、北米のオオカバマダラとの関係が著名ですね。トウワタの葉を食べたオオカバマダラの幼虫が成虫になってもトウワタの毒を保有する個体があることで、オオカバマダラの集団が鳥に捕食されないという話ですが、このことはこの派手なヒメジュウジナガカメムシにも当てはまるような気がします。推測だけですが。
藤崎さんは知人ですが、こんな本を書いているとは、不覚にも知りませんでした。本屋で見つけたら買ってみます。
by エフ・エム (2011-08-26 10:09)
とんとんさんの2009.8.10.のヒメジュウジナガカメムシのお顔、拝見してきましたよ。
「眉毛状の線と黒丸ポチ」、たしかにありますね。
私が撮った写真にもヒメジュウジナガカメムシとジュウジナガカメムシを検索した中にも見つかりませんでした。???
ヒメジュウジナガカメムシはガガイモが大好きな草食系です。
アブラムシも同じく群れていましたが、お互いには知らんぷり。
長い間、冬眠させたった写真をやっとアップできました。
by 夕菅 (2011-08-26 12:39)
ヒメジュウジナガカメムシ、初めて見ました。綺麗な花に負けない華やかな色ですね。鳥に見つかりやすいと思いますが、いわゆる警告色なのかな。群れることで有利に生きるメリットがあるようで興味深いです。
by satton (2011-08-26 15:22)
エフ・エム さん コメントありがとうございました。
藤崎先生をご存知だったのですね。
オオカバマダラとトウワタとの関係、教えていただいてありがとうございました。さっそくオオカバマダラを検索したら凄まじいほどの群れの画像がでてきました。
「カメムシはなぜ群れる?」にも毒物質を有する赤いナガカメムシの一種をシジュウカラやカマキリに捕食させる実験が紹介されています。やはり警告色は有効だったようです。
by 夕菅 (2011-08-26 18:11)
satton さん
ヒメジュウジナガカメムシはガガイモが食草ですから、ガガイモが見つかったらその辺りを探してみて下さい。時々見つかります。
ガガイモは果実がはじけると綿毛を付けた種子が飛んできれいですよ。
(これは昨年アップしたガガイモです。)
http://yuusugenoniwa.blog.so-net.ne.jp/2010-11-21
by 夕菅 (2011-08-26 18:26)
はじめまして。Ohrwurmこと河野勝行と申します。
藤崎先生のところでカメムシの生態の研究で学位をいただきました。
私も2008年にヒメジュウジナガカメムシの集団に出会い、そのときの記録を昆虫同好会の雑誌に報文として発表しました。
http://cse.naro.affrc.go.jp/kohno/home/pdf_files/Kakocho_62_241_1-6.pdf
私はガガイモで大集団を発見しましたが、トウワタもガガイモに近縁な植物ですから、トウワタでも繁殖が可能ではないかと思われます。ぜひとも観察を続けていただきたいと思います。
当方では、今年の夏以降にもガガイモで大発生がありました。断片的ではありますが、当方のブログに記録を残しています。
http://ohrwurm.cocolog-nifty.com/blog/2011/09/201199-5ee4.html
このページの他にも数ページあります。
by Ohrwurm (2011-11-06 21:22)
Ohrwurm さん 思いがけないコメントありがとうございました。
カメムシの研究者の方からコメントをいただけるとは誠に光栄です。
さっそく佳香蝶の論文拝読しました(画面では老眼が悲鳴をあげましたのでプリントしたら6枚出てきました)。
私の最も知りたかった「このカメムシ達はどこから来て、どこへ去って行ったか」について熱心な観察で綴られていて一気に読めました。
まさに「さまよえるカメムシ」なんですね。
その後、私もまたトウワタを植えて再来をお待ちしているのですが、忽然と現れ忽然と消えた彼らは訪れてくれず、ただアブラムシの住処になっています。
翌年近くのガガイモには少数の成虫をみつけましたがそれきりです。
ブログも訪問し、過去と現在(?)のお写真もみせていただきましたよ。
私も無農薬で野菜や果物を少々育てています。
http://yuusugenoniwa.blog.so-net.ne.jp/2010-07-29-1
ブログにはまたお訪ねさせていただきます。
by 夕菅 (2011-11-07 00:17)
夕菅さん こんばんわ~~
ヒメジュウジナガカメムシとアスクレピアスのお知らせアリガトウです。
京都府立植物園で初めて出合ってその名前がアスクレピアスだったんでこちらの名前に馴染んでます。
そのお花が夕菅さんちのお庭で咲いているのですねスゴイなぁ・・・
散歩道で結構ガガイモに出合うのですが、ガガイモに居るヒメジュウジナガカメムシには出合ってませんのよ。
ヒメジュウジナガカメムシの写真が一枚だけありました
http://blog.goo.ne.jp/mn1944/e/8d492d868d384814f1fd082b40bca85e
ガガイモでもないし・・・
ただ群れていて「あっキレイ!」って撮っただけのわんちゃん
「なぜ群れるの?」の夕菅さんってスゴイです。
by わんちゃん (2011-11-24 23:04)
わんちゃんのヒメジュウジナガカメムシの写真見せていただきました。
やはり群れていますねー。
葉は確かにガガイモ科ではありません。
私は何日か群れを見に通いましたが、臭いを感じたことはありませんでした。刺激を与えたことはありませんでしたが、他の文献にもあまり臭わないように書かれていました。
by 夕菅 (2011-11-25 00:21)
私が趣味でやっている果樹園でもこのカメムシは良く見られました
といっても、果樹を食害するのではなく、その周りにあるアサガオ等の蔓植物やイネ科植物やそのまわりにある設備や鋼管類に集まっていましたね
何れもが集団行動で、バラバラに行動していると言う事が珍しい感じでした
・・・果樹園の多様な木や木の実を食害するのはガの幼虫や大型の成虫、スズメバチ類やカミキリムシ類、それに網に引っ掛かっては首ツリーになる鳥類でしたね
この虫の害と言う感じは野菜やイチゴ類を見ても無い感じでした
by ほいぽい (2016-03-20 14:29)
ほいぽいさん コメントありがとうございました。
果樹園にはガガイモが自生していませんでしょうか?
うちでヒメジュウジナガカメムシを見たのは、ガガイモ・トウワタ・フウセントウワタと全てガガイモ科の植物の上でした。
作物に大きな被害を与えるカメムシが多い中、このカメムシは果樹や野菜に対する害虫ではないようですね。
見て美しく、臭いもなく、作物に害を与えないということで私はこのカメムシが好きです。
by 夕菅 (2016-03-20 22:32)