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シモバシラの霜柱(2) [草花(冬)]

シモバシラの霜柱を近くで見てみます。

霜柱110108-3wb.jpg

茎の周りに絹糸を卷いたよう。

霜柱110111wb.jpg

フレアースカート?

霜柱090126-3wb.jpg

ガラス工芸?

110202-4wb.jpg

枯れたシモバシラにどうして霜柱ができるのでしょう? 
とても不思議です。
初めに今関 英雅先生(*1)のご説明を引用させていただきます。
「シモバシラによる霜柱の形成は純粋に物理的な現象です。地中からの水の通路や茎の状態変化については諸説あるようですが、枯死した茎の維管束と髄、皮層との間にできた空隙内を水が毛管現象で上昇し、地上部で氷結するもののようです。
最初の氷結がおきると氷結時の力で茎の皮層、表皮の部分が割れ、その後、地中からあがってきた水が毛管現象で割れ目に滲入してくればその部分から花弁状に氷片ができるようです。」

さらに前川先生の本(*2)を読みつつ考えてみます。
シモバシラは多年草ですから、根は冬も活動し、春の芽出しに備えています。
先ず、霜柱が出来るためには外気温が氷点下、地下は凍らない温度が必要です。
シモバシラ(1)で示した庭の最低気温は -2〜-5℃ でした。
これには「枯れてもろくなった道管は中の水の柱が凍ると体積が増えてひびが入り、ここからまた水が滲みだし、あとから押してくる水でせり出すように霜柱ができる」などと書かれていました。

確かに、剥がれた皮が裂けて霜柱のまわりにぶら下がっています。

霜柱090126-2wb.jpg

もう少し、詳しい説明はないのでしょうか。
検索して犀川政稔先生の観察と実験に基づいた2つの文献を見つけました(*3・*4)。
次のように説明されています。
1)シモバシラの茎は冬期、木部(道管のある部分)の髄(真ん中の白い部分)に接するところが変質して褐色になる。
2)霜柱をつくる水は冬期二次的に木部にできた数本の通路(最大の太さ0.5mm)を通って上がっていく。
3)霜柱ができると茎の皮層は表皮や師部(師管のあるところ)と共に剥がれる。
4)霜柱は年に1度ならず何度でもできる。
5)霜柱は木部の割れた部分や髄と接する部分には生じない。
6)水は凍る直前に放射方向に移動するのではなく、水の通路が木部の表面近くを通った時滲み出て凍る。

それにしてもこのような美しい形になるとは、未だに神秘的に思えます。
この写真では茎の断端が露出したまま、周りに花びらのような霜柱が形成されています。
高さわずか2cm。右は隣の茎の裂けた皮と露出した木部です(2月2日写)。

110202-5wb.jpg

これも3日後に同じ茎にできた花のような霜柱です(2月5日写)。
これらの断端をを見ると木部と髄の間には隙間がありますが凍ってはいません。高さ2cmでも水は上にあふれず、木部の周囲に滲み出たことを示しています。

20110205花wb.jpg

陽が当たると氷の花は透明になりながら解けていきます。

110203-2wb.jpg

株元に花弁のような小さな氷片が落ちていました。そっと拾ってロウバイの落ち葉に乗せて写真を撮ろうとすると見る見る透けていきました。

シモバシラ花弁wb.jpg

霜柱はシモバシラにだけではなくその他のシソ科の植物にも出来ることがあります。
その1例を次の記事に載せましょう。

参考文献
*1)今関 英雅: 日本植物生理学会 みんなのひろば 2010-01-08
*2)前川文夫:1995.植物入門.改訂新装版,八坂書房. Pp. 74-76.
*3)犀川政稔:東京学芸大学紀要 自然科学系 58:151-161(2006)
*4)犀川政稔: 東京学芸大学紀要 自然科学系 59:55-59(2007)

追記) 2011. 2. 6. 夜
  記事の一部を加筆、変更いたしました。



コメント(8) 

コメント 8

エフ・エム

シモバシラの霜柱がとてもよく撮れていて、まずそれに感嘆しました。
霜柱の美しさが鮮明に表現されていると思います。
それにしても、思いがけないいろいろなすがたになるのですね。
枯れた茎は、立っている場著、太さ、かたち、ひびの入り方など、みな違うので、
できる霜柱も千差万別なのでしょうか。短く切られた茎の霜柱は全く氷の花ですね。自然のものだからこそこういうものができる。
霜柱ができる理由もおもしろくうかがいました。
by エフ・エム (2011-02-06 14:13) 

夕菅

エフ・エムさん コメントありがとうございました。
シモバシラの写真はもっともっと美しく撮られている方々があってとても及びません。
本当に形も様々、毎朝、今日はどうなってるのかなと楽しみにして撮るのですが、仕事が終わってから画像を確かめると不出来でがっかりの繰り返しでした。
高尾山が名所のようですが寒い中、早朝登るのはたいへんでしょうね。うちは庭で見られるだけでも幸せです。
読み返すとわかりにくい説明の様で気になり、少々加筆しました。
お許し下さい。
by 夕菅 (2011-02-07 01:27) 

花咲かばあさん

雪の結晶の写真も驚きでしたが、シモバシラの霜柱にまたまた感動です。
自然の織り成す芸術の写真に魅入っています。
糸車のようだったり、短く切られた茎は花かかざぐるまのようですね。
本当、ガラス工芸のようにも。
うちの庭のシモバシラは株が小さくてここまで立派な絵姿は見られません。
霜柱はこんなふうにできていくんですね。

シソ科の植物、セ-ジの根元を見てみましたが確認できません。
ピンクパンサ-も見てみましたがやはり見られませんでした。

春よこい 早くこいと歌うのはもう少しやめましょう。
きびしい寒さの朝にこんなに沢山の素晴らしいプレゼントをいただけるんですから。
by 花咲かばあさん (2011-02-07 20:31) 

夕菅

花咲かおばさん 
シモバシラ、お読みいただいてありがとうございました。
写真はむつかしのですが、写真にして拡大すると人の目で見た時より美しいことがあります。
花咲かおばさんとこの小さな霜柱も多分同じだと思いますよ。
ここ二日、急に温かくなって霜柱が出来なくなりました。
ほんとう!霜柱がもう見られないと思うと淋しいですね。

オルトシフォン(ピンクパンサ-)の霜柱はシモバシラより出来にくく、量も少ないようです。
山歩きの時、カシワバハグマがあったら是非ごらん下さい。
シソ科でもないのに美しい霜柱ができるようですよ。
by 夕菅 (2011-02-07 21:26) 

わんちゃん

夕菅さん こんばんわ~~

キレイですね、シモバシラの花(?)
「あと、時間が経ったらどうなるのかなぁ?」って興味津々
融けてしまうのですね、残念だわ・・・

どうしてこんなのが出来るのかな?
も、なんとなく解りかけてきたかな?のわんちゃんです。

夕菅さんの粘り強い探究心には脱帽です。
by わんちゃん (2011-02-07 22:17) 

とんとん

この美しい造形を見ると、不思議としか言いようがありません。
説明を読んでもどうしてこの形になるのか理解ができないところが、情けないです。

夕菅さんは、子供のころ理科が大好きだったのではありませんか?^^
私は大の苦手でした。(^^ゞ

こちらのブログをリンクさせていただきました。
by とんとん (2011-02-07 23:19) 

夕菅

わんちゃん
よかった!なんとなく解りかけてきましたか。
ところが、書いてる本人がまだ理解しきれず、自分の言葉で説明できなくて、偉い先生方の説明を並べさせていただいてしまいました。

消えるときは早いんですよ。
あ、日が射してきてきれい!って撮ろうとしたら、そういう時に限って電池切れ、急いでスペアを取りにいって戻るともう崩れかけ。なんてこともありました。
by 夕菅 (2011-02-07 23:56) 

夕菅

とんとん さん。
ご気分がすぐれない時、こんなややこしい説明文を読んでいただいてすみません。
とんとんさんだったらもっときれいな写真と詩的な言葉で簡潔に感動を表わされることと思います。
私は理科の中では生物は好きでしたが物理はダメでしたねー。
霜柱も物理的な現象と言われただけでもうたじたじ(笑)。

こんなブログをリンクしていただいてすみません。
私はまだお願いする勇気がなくて未設定です。ごめんなさい。
先日、とんとんさんのところからまきさんとこのお庭の見事な霜柱の写真を見せていただきました。霜柱もカメラ技術もすばらしくって、私のが恥ずかしくなりました。
それから、とんとんさんのところの昨年のラブラブメジロも。かわいくってかわいくって未だに忘れられません。


by 夕菅 (2011-02-08 00:26) 

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